上 下
69 / 137
第二章

69ー追跡

しおりを挟む
「モモ!!」

 私は慌てて部屋に入って行きました。

「ルル! 侍女達を助けて! 毒をもられているわ!」
「お兄様! ディアナを!!」
「分かった!」

 ジュード兄様がディアナを呼びに戻って行きます。

「ルル、アンチドーテをお願い!」
「モモ、分かったわ! アンチドーテ」

 倒れている侍女達に解毒魔法を掛けていきます。侍女達の身体が光りだし、直ぐに光が消えて行きます。

「取り敢えずこれで命は助かるわ。ルル、解毒薬はあるの?」
「ディアナが持ってる筈よ。まだ皆に持たせる前だったのよ!」
「ルル、仕方ないわ。飲ませた後にヒールよ」
「モモ、分かったわ」
「モモ、どうしてこうなったのか分かるか?」
「レオン様、ルビが念話で助けを求めてきたのよ」
「ルビが?」
「ええ、アーデス様。侯爵様が毒に倒れられてから、ルビはジュノー様のお心を癒すと言ってそばに付いていたのよ」
「そうだったのか」
「ルビの念話だと、ジュノー様が連れて来た侍女が犯人だそうよ。アーデス様が、護衛を兼ねて付けていたこの邸の侍女達に毒を盛った。そして外部から、ならず者を招き入れてジュノー様を連れ去ったらしいわ。まだ毒が薄くて助かったわ。でもラビも一緒に攫われたの。珍しいカーバンクルだから売るつもりの様ね」
「内部に敵がいたのか!?」
「ルル様!」

 ディアナが慌てて入ってきました。良かった、早く解毒薬を!

「ディアナ! 倒れている侍女達に解毒薬をお願い!」
「はいッ!」
「ディアナ、手伝おう!」
「兄様、お願い!」

 ユリウスとディアナが手分けして順に解毒薬を飲ませていきます。

「ルル様、ルビちゃんは!?」

 解毒薬を侍女に飲ませながら、ユリウスが聞いてきます。

「ジュノー様と一緒に連れ去られたからそばにいる筈よ」
「大丈夫です、ルル様。ルビちゃんは所在の分かる魔道具をつけています!」
「そうだわ!」

 そうだったわ。魔道具をつけていたんだわ!

「ルル、分かるか?」
「お父様、待って下さい」
「ルル様、落ち着いて」
「ユリウス、魔力は分かるけど……」
「ルル、ピアの魔道具から感じる魔力とマップを重ねるのよ。サーチよ!」

 モモ、急に難しい事言わないで。魔力とマップを重ねる……サーチ!

「分かった! 見つけたわ! お父様追いかけます! ユリウス、解毒薬を飲ませたらヒールをお願い!」
「分かりました! こっちは任せて下さい!」
「ルル、一緒に行くわ!」
「待て! ルル! モモ! ジュードとセイバーを連れて行け!」
「公爵、俺も行きます! ケイ!」
「はッ!」
「レオン、頼んだ!」

 皆で、1階に急ぎます。早く追いかけないと!

「ルル、犯人達はどこに向かっているんだ?」
「ジュード兄様、まだ移動していますが、この方角だと多分街道横の森です」
「俺が発見した小屋かも知れないな!」
「はい!」

 ジュード兄様と1階に降りると、リルとノトスが待機してました。

「ノトス馬を用意しろ! セイバーを集めろ!」
「はいッ!!」

 全員ダッシュです! 私はロングのワンピースです。あー! 走りにくいッ!!

「ルル、慌てるな! 大丈夫だ!!」
「レオン様。ロング丈のスカートだから走り難くてイライラするのよ!」
「え、そこ!?」
「だって走り難い! 馬にも乗り難いのよ! ミスったわ!」
「ハハ! 流石ルルだ!」
「ルル! 乗れるか!?」
「ジュード兄様! 乗ります!!」

 馬に横乗りして街道を目指します。それにしても道が暗い! ただでさえ乗り難いのに!

「ライト!」

 前方、真ん中、後方に纏めて灯りを出します。

「ルル! 落ち着け! 森に入る前にスピードを落とさないと危ないぞ!」
「はい! 兄様!」
「位置は分かるか!?」
「ジュード兄様、止まった様です。やはりジュード兄様の発見した小屋らしいです」

 領地を出た所でルビに念話を試します。まだ距離があるからなぁ。大丈夫かなぁ。

『ルビ、ルビ! 聞こえる!?』
『ルルなのー!?』

 良かった、ルビは元気そうだわ。

『そうよ、ルビ大丈夫? 今そっちに向かってるわ!』
『分かったの!』
『ルビ、そっちの状況を教えて! ルビとジュノー様は大丈夫なの?』
『ルル、ジュノー様は縛られて気を失ってるの。ルビは平気。ジュノー様のそばにいるの』
『見張りは何人いるの?』
『そばに二人。外に何人いるか分からないの』
『ルビ、私よ! モモよ! ルビと初めて会った時みたいにルビとジュノー様だけに結界を張れる?』
『モモ、できるのー』
『じゃあ、合図したらお願い!』
『モモ、分かったの!』
『ルビが側にいてくれて良かったわ。もう少し頑張ってね』
『分かったの! 頑張るの!』

 ルビったら、小さいのになんて頼りになるのかしら。

「ジュード兄様、側に見張りが二人いるそうです。外にも数人! こっちの合図でルビが結界を張ってくれます! 一気に踏み込みます!」
「よし、分かった! もう直ぐ森だ!」

 私達は、暗闇の中を森へ急ぎます。大丈夫、落ち着かないと! 気だけが焦ります。

「ルル、森に入る。危険だぞ、スピードを落とすんだ!」
「はい、ジュード兄様!」

 スピードは落としましたが、一直線に小屋に向かいます。目的の小屋はもう直ぐ!

「ルル、自害できない様に拘束できる?」
「モモ、やってみるわ」

 小屋が見えてきました。外に見張りが1、2、3……4人います。

『ルビ、今から突入するからね、結界を張って!』
『ルル、分かったのー!』

 行くわよ! 怒ってるんだからね!

「ジュード兄様、拘束します! 突っ込んで下さい!」
「おうっ!」
「いきます! アースバインド!!」

 ――なんだッ!?
 ――追手だー!
 ――クソッ‼︎
 ――身動きできないぞ!!

 外の見張りを全員拘束しました。ジュード兄様とセイバーは中へ突入します!

 ――うわっ! 何だ!?
 ――追手だ!

 中には侍女ともう一人見張りがいました。ジュード兄様達が気絶させ、自害を防ぎます。

「ルル、気絶させたが拘束しておいてくれ」
「はい、ジュード兄様! アースバインド!」
「ルル! モモー!」
「「ルビ!」」

 ルビが飛んできました。

「ルビ、無事で良かった! ジュノー様は?」
「ルル、大丈夫だ。保護した」
「ジュード兄様」

 声の方を振り返ると、気を失っているジュノー様を大事そうにお姫様抱っこしているジュード兄様がいました。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,000pt お気に入り:3,392

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:769

婚約者を追いかけるのはやめました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:5,424

離縁するので構いません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,399pt お気に入り:1,426

おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:539pt お気に入り:2,924

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:704pt お気に入り:541

【本編完結済】色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:4,191

処理中です...