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第二章

50ーバロール

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 採掘から戻ってきて夜です。もうベッドに入ってます。モモはベッドの横にモモ用の大きいクッションを用意してもらって寝そべっています。ルビは私の横に丸くなって寝てます。ピアも同じ様に横にいます。が、大の字になってお腹に両手を当てて寝ています。

 ピーヒュル……ピーヒュルヒュル……
 これ、ピアの寝息です。本当にまだ赤ちゃんなのね。今迄一人で寂しかったでしょうに。まだ絶対に側を離れようとしない。不安なんでしょう。けど、日々を過ごしていくうちに少しは安心してくれるといいなぁ。

『モモ、もう寝た?』
『ルル、どうしたの?』
『ピア、今まで一人で心細かったでしょうね』
『……』
『なんかね、前世の私と重なっちゃって』
『ルル、何か思い出したの?』
『なんにも。なんにも思い出してないんだけど、寂しかった気持ちは忘れていないわ』
『ルル……』
『あ、でも大丈夫よ。今はモモも家族もみんなもいるもの』
『そうよ、モモ。今の家族も婚約者も、ちゃんと選ばれた人達なのよ』
『え…? 神さまに、て事?』
『そうね、もう話してもいい頃かしら』
『モモ、なぁに?』

 モモが話してくれました。
 私が地球に産まれた前世は、本当に事故の様なものだったそう。でもそれは神にとっては放っておけない事だった。自分の世界に産まれる筈の子が、辛い悲しい思いをしてるのに手助けできない事は辛い。
 だから神は何度も何度も地球の神に抗議して下さった。それでも、どうにも出来なかった。1度産まれてしまったものは、どうにもできないと、地球の神は救いの手を差し伸べて下さらなかった。そして私は地球の環境に適応できず、一人ぼっちで死んでしまった。
 神は本当に悔やんでおられたそう。自分がもっと目を光らせていれば回避できた事故かも知れないと。
 数百年に一度、間違えて別の世界に生まれ落ちてしまう事は防ぎ様がない事らしい。その度に神は心を痛めていると。

『そうなのね』
『ルルの母方の先祖にもね、ルルと同じ様な魂の人がいるの』
『お母様の!?』
『そうよ。ルルと同じ様なスキルを持つ人が何代かに一人生まれると、言っていたでしょう。その人達がそうよ。ルルの母方の家系と、帝国の皇家が受皿になっているのよ。両家共、スキルの力に驕る事なく保護し大切に心を掛けて愛情を込めて育てる。その気持ちを神は評価して信頼しているのね。たまたまルルはこの国に嫁いだ人から生まれたけど、それでもお母上が選んだ方はお母上の意志を尊重し理解した。そして大切に守り育てた。そんなティシュトリア家と帝国皇家との縁は、ある意味必然だったのかも知れないわね。ルルの婚約者もまさか転生者だとは思わなかったけど』
『モモちゃん、なんか凄い事を聞いた気がするわ』
『ふふふ。ルルはそんな事気にしないで、自由に生きればいいのよ。それだけよ。それだけで神は喜ばれるわ』
『そっか。モモ、これからもそばにいてね』
『勿論よ。私の大切なルルだもの』
『モモ、有難う』


 さて、朝です。朝ご飯食べてます。

「ピー! ピーヒュル!」
「ピアまだ飲むのか? トーストサンドも沢山食べただろ」

 ピア専属のお世話係、レオン様です。スープを飲ませトーストサンドを食べさせ魔素水をあげてます。まるで子育てね。

「ピー!」
「モモ、こんなに魔素水飲ませて大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。今迄、魔素水だけで生きてきたんだから。今のピアは人の食事より、魔素水の方が栄養になってるわ」
「そうなのか。もっと沢山魔素水を持って来たら良かったな」
「え?レオン様、足らないですか?」
「いや、そんな事はないんだが。思っていたより早く魔素水の補充に行く事になりそうだ」
「ピー?」
「ピア、大丈夫よ」
「ピピー! んぐっんぐっ、プハーッ! ピュー……」
「ハハ! ピア、スゲーお腹になってるぞ!」
「ピー?」

 ピアのお腹がポッコリ膨らんでます。

「ピア、沢山食べたのね。美味しかった?」
「ピー!」

 そしてピアはレオン様の頭に乗ってます。

「だから何で頭だよ?」
「いいじゃないか、レオン。お似合いだぞ」
「ラウ、言うな。複雑なんだ」

 本当に懐かれてるわね。
 そしてこれからジュード兄様とレオン様も一緒にバロールの作業場へ行きます。

「ノトス、着いて来い。ルル、モモとピアとルビはどうする?」
「私はルルが行くなら一緒に行くわ」
「じゃあ、モモは一緒に。ピアはルビとお留守番していてくれるかな?」
「ピー! ピピー!!」

 ピアがパタパタと私の周りを飛んでます。

「え? 行きたいの?」
「ピー!」
「ピア、昨日お父様が仰ってたでしょ? 目立たない様にしないとね」
「ピー……」
「ルル、まだ不安なのよ。ルルの側にいたいのよ」

 そうなの? いつもレオン様の頭にいるけど。

「ピー……」
「じゃあ、モモに乗っていてね。パタパタ飛ばないでね。約束よ」
「ピピー!」
「リアンカー!」
「はいッ! ルル様、お呼びですか!?」

 シュタッと走ってきたわ、リアンカさん。リアンカて、どの辺まで私の声が聞こえるんだろ?

「リアンカ、ジュード兄様達とバロールの作業場に行ってくるから、ルビをお願いね」
「畏まりました! お気をつけていってらっしゃいませ!」

 ルビがリアンカに抱かれて手を振ってくれてます。ルビは手が掛からなくて大人しいわね。
 お邸を出て、敷地に沿って直ぐを裏へ周るとバロールの作業場です。

「ジュード、直ぐ近くなんだな?」
「ああ、レオン。剣を作るのなんて領主隊かうち位だろ? 近い方が便利なんだよ」
「成る程ね」
「だから、邸の裏に作業場を建てる話もあったんだがな。バロールが、邸の中にあったら領民が気軽に来れないからダメだと言ってきかないんだよ。領民の工具や農具に斧なんかもバロールは作ってるからな」
「なるほど……」

 ジュード兄様が先を歩きます。二階建の家の重そうなドアを開きます。開くと同時にガンガン鉄を打つ音と、熱気が伝わってきます。1階が作業場になっているのね。

「バロール! いるかー!」

 バロールが奥から出てきました。

「おや、ジュード坊ちゃん。どうしました? ルル嬢様も。て、……! ええっ!?」

 バロール初めて見るから、びっくり目です。

「ルル嬢様、噂のモモちゃんですか!?」

 どんな噂よ。

「そうよ、噂のモモよ。宜しくね」
「わふっ」
「いや、モモちゃんがデカくなった事は聞いてましたが、乗ってるそれは?」
「バロール、極秘だぞ。ドラゴンのピアだ」
「ピー」

 ピアは片手を上げてます。やっぱりコレッて挨拶してるつもりなのね。

「……ドラゴン⁉︎」
「ああ、ドラゴンの赤ちゃんだ」
「ピー」
「ルル嬢様ですか……?」
「ルルしかいないだろ?」
「そうですよね? そうだ。嬢様はそうだった」

 こう言う反応も大分慣れてきたわ。
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