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第一章

19ールビちゃん

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 早々に出発して馬車の中です。私がカーバンクルを膝に載せて座り、私の足元にモモ、向かい側にリアンカが座ってます。

『ごめんね、お父様の大声でビックリしちゃったわね』
『ううん、大丈夫なの』
『お腹すかない? モモ、カーバンクルて何を食べるのかしら?』
『まだ小さいから、果物か野菜か木の実かしら?』
『リンゴ食べる?』

 コロン、と無限収納からリンゴを出す。

『うん、食べるの。シャクシャク……』
「ルル様、可愛いですね。子猫みたいです」

 私の膝の上で、両手でリンゴを抱えて食べているカーバンクルに、リアンカの眼が釘付けです。

「リアンカ、そうね。まだ小さい子供ね。怪我をして1人で泣いていたのよ、可哀想に」
「ねぇ、あなた話せるわよね? まだ念話しかできない?」

 ルルがカーバンクルに聞いてます。

「話せるのー。モモもルルも念話が通じたから、いいかと思ってたの」

 カーバンクルも話せるんだ。てか、なんだ! この可愛い子は!

「ねえ、あなたお名前は?」
「まだ小さいからないのー。ルルがつけて」
「じゃあ、ルビね」
「ルル様、即答ですね、しかもまんまですね。どうせ、額のルビー色した宝石からでしょう?」
「そうね、ルルに名付けのセンスはないわね」

 えっ、酷い。可愛いくない? モモだって私が付けたのよ。ピッタリじゃない。

「ルビなの。よろしくねー」

 食べ終わったらまたスピスピ寝だしました。まだ、体力が戻っていないのね。
 ルビを新しく仲間に迎えて、馬車はまだまだ走り続けます。


 夜です。夕食よ。街道には所々に休憩所の様な、馬車が停められる様に開けてるスペースが設けられてあります。街道を利用する者は皆、そこで野営したり馬を休ませて休憩したりするの。
 私達の馬車もそこで今夜は野営よ。王都迄は、まだまだ遠いわ。
 火が焚かれ軽い食事が作られます。メインは皆其々のマジックバッグに入れてます。
 今夜はサンドイッチと具沢山のポトフを食べてます。ポトフの中に今日1日でセイバーの隊員達が討伐してきた魔物肉も入っているのよ。皆は私の膝にいるルビことカーバンクルに注目ね。ルビはマイペースにリンゴをシャクシャク食べてます。

「ルビ、胡桃も食べる?」
「うん、食べるー」
「ルル、そろそろお膝の上の可愛い子をお母様にも紹介してほしいわ」

 お母様から声が掛かりました。

「はい、お母様。この子はカーバンクルの子供でルビと名付けました」
「まんまだな……」

 レオン様が何か言ってるわね。独り言が多いわよ。

「ルル、そのカーバンクルをモモが気にしていたのか?」

 お父様の質問です。

「はい。カーバンクルだとは分かっていなかった様ですが、泣いていると、気にしていたので」
「そうなの。森の中から泣き声がしたのよ。普通、カーバンクルは人の前には姿を表さないのだけれど。母親と一緒にいるところを、突然リザードマンに襲われたんですって。母親はルビを庇ったらしくて……ルビも怪我をして1人で泣いていたのよ。ルルに怪我を治してもらって、一緒に来る事になったの」

 ジュード兄様が……

「モモ、カーバンクルは話せるのだな? それに魔法も?」
「そうね、まだ小さいからやっと話せる様になった位じゃないかしら? 魔法も今は結界程度だけど、成長したらもっと使える様になるわ」

 モモが説明してますが、モモて物知りよね。

『ルル、私は神の眷属だからね』

 はい、そうでした。念話でツッコミ頂きました。

「父上、森に入った時に、俺とレオンは結界に遮られてカーバンクルの元に辿り着けなかったのですよ」
「そうなのか!?」
「はい、公爵。ルル嬢とモモだけしか」
「それにしても、モモ。カーバンクルとはリザードマンにやられる様なものなのか?」

 お父様、それですよね。森にカーバンクルを倒す様なリザードマンが出たと言う事ですからね。

「普通、リザードマンなどにカーバンクルが倒される筈がないわ。カーバンクルは魔物とは存在が別次元なんだから。確かにカーバンクルが使う魔法は攻撃重視ではないけれど、それでも普通はあり得ないわ。それにルビが、黒いリザードマンて言っていたの。だから、おかしいのよ。何か異変が起きているのかも知れないわ」
「それは見過ごせないな。我が領地ではないが、もしそのリザードマンが増殖して溢れでもしたら他領の話では済まなくなるな」
「父上、しかし今は先を急いでます」

 ラウ兄様の言う事も、尤もですね。

「モモ、緊急性はあるのか?」

 お父様が聞いてます。

「この森に気配はないから、緊急と言う程ではないわね。警戒をしながら、このまま通りましょう」
「よし。そうしようか」
「モモちゃん、そのルビちゃんは今使える魔法は結界のみでしょうか?」

 ユリウスが聞いてます。

「どうかしら? ルビ?」
「ルビはまだ結界だけなの。カリカリ」

 ルビはリスみたいに、まだ胡桃を食べてます。

「ルル様、ではルビちゃんにもアイテムを付ける方が宜しいかと。移動中にモモちゃんと同じ首輪と、結界を付与したトップを私が用意しますから、後はお願いしても?」

 結界以外と言う事ね。

「ええ、分かったわ。移動中に作成しておくわ」
「旦那様、モモちゃんと同じ様にティシュトリア家のカーバンクルだと分かる様に紋章を付ける方が宜しいかと」
「うむ。ユリウス頼む」
「畏まりました」
「王都に着く前に不安要素が出来てしまったが、明日からも皆気を引き締めていくように。緊急性はないとしても、最大限の注意はしよう」

 今日は隊員達が設営してくれた、天幕の中で休みます。ルビは食べる時以外はまだ寝ている事が多いみたい。今ももう寝ています。

「ねえ、モモ。ルビはまだ小さいから寝る時間が多いのかしら?」
「そうね、小さい事もあるけど、1人森の中で結界を張って頑張っていたんだと思うわ。疲れもあるだろうし、やっと安心したのね」
「こんなに小さいのに、頑張ったんですね」

 リアンカがウルウルしてます。そうだ、この兄妹は可愛いものに目がないんだったわ。

 翌日、朝ごはんを食べて、また馬車で走ってます。ルビちゃんは相変わらずおやすみ中です。私はせっせとアイテムを作っています。
 人だと指輪等のアクセサリーにできても、モモやルビはそうはいかないので、ユリウスが作ってくれる首輪に追加で付けられる様な形で作ってます。モモと一緒ね。

「ねぇ、モモ。カーバンクルて成長したらどんな魔法が使えるの?」
「私とそう変わらないわよ」
「そう言えばルル様、モモちゃんがどんな魔法を使えるか知りませんね」

 リアンカの疑問です。私も知らないわ。話ながら、アイテム作成の手は止めませんよ。

「そうね、結界に浄化と解呪、麻痺等の状態異常でしょ、風属性魔法に雷に火ね。私は状態異常にはかからないわ。あと、対象の状態把握もできるわね」
「モモちゃん凄いです」
「カーバンクルは、攻撃魔法に特化していないけど、結界は早くに出来るみたいね。成長したら魔法を封じたり、混乱させたり、浄化やストップも使えるわね。それに転移魔法が使えるのよ。だからリザードマンなどに負ける筈がないんだけど」
「本当ね。それだけ魔法が使えたら、最低限やられる前に逃げ出せるわよね」
「ルル、いい機会だから移動中にルル自身も何が出来るか把握しておく方がいいわ。ルルはスペックが高いけど、自分で分かっていない事も多いでしょ?」
「はーい。モモちゃん師匠みたいよ」
「師匠と言うと、ルル様。兄ですが」
「ん? リアンカ、どうしたの?」
「ルル様は魔法も剣術も凄いのに、兄の事を師匠て言われますよね?」
「そうね、ユリウスは私の師匠よ」
「どう考えてもルル様の方が兄より強いと思うのですが?」
「そうね……リアンカは暗器が使えて体術もできるでしょ?」

 うちの領地は執事はもちろん、侍女も戦えるのよ。なんせ、魔物が出るからね。

「母親のエポナや、父親のガイウスに鍛えられたと思うけど。リアンカが、エポナやガイウスより強くなったとしても、教えてもらった人は特別じゃないかしら? それと一緒よ」
「ルル様は兄から教わったのですね?」
「そうよ。小さい頃にね。魔法も体術も教わったわ。短剣や薬草学はディアナね。双剣はお母様とお兄様、お父様からは長剣ね。ユリウスには魔道具の作り方もそうだし、錬金術も教わったわ。リアンカの家族は凄いのよ」
「ふふ。なんだか嬉しいですわ」

 その日はアイテム作成に費やして終わりました。
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