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第2章 朝5時にピンポン連打する金髪ネコ耳公務員さん
第37話「あんたが教祖よ」「え、俺?」
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とまぁ、俺がそんな風に内心エリカとの人としての格差に凹んでいたんだけど、
「それで、あなたたちの目的は何なのですか? と、一応聞いておきましょうか」
国家公務員をやっているヒナギクさんが、こっちはこっちでいたって冷静な顔をしながら、拘束されて倒れている黒ずくめの男たちに向かって問いかけていた。
「ふん、国家の犬なんぞに誰が言うものか。我らは崇高なる使命に燃えるいと尊き殉教者よ。たとえ死ぬより恐ろしい拷問をされようとも、我らは口を割ったりはせん」
しかし黒ずくめの男たちのリーダーは鼻で笑うと、そのまま真一文字に口を結んで黙り込んでしまったのだ。
ヒナギクさんがあれこれ問いかけても全く反応しない。
部下たちも同様だった。
「完全にだんまりですわね。これだから妄信めいた宗教心というものは困るのですわ」
「宗教心? その言い方だと、もしかしてヒナギクさんはこの不法侵入者たちに心当たりでもあるのか?」
やれやれと肩をすくめたヒナギクさんがやけに具体的に言及したことに、俺は少なくない違和感を覚えていた。
「そうですわね、せっかくですから教祖様から直々に問いただしてもらいましょうか。教祖様に話せと言われれば、彼らは喜び勇んで我先にと話してくれるでしょうから」
「教祖様? いったい誰のことなんだ?」
「もちろんトールさんですわよ」
「え、俺?」
ヒナギクさんからいきなり「あんたが教祖よ」と言われてしまった俺は、自分の顔を指差しながら間抜けな声で聞き返す。
「はい、トールさんですわ」
「いやいやいや、なんで俺が教祖なんだよ? 俺は生まれてこの方、完全に無宗教で生きてきたぞ?」
でも日本人ってだいたいそうだよな?
正月には神社に行き。
お盆には先祖の霊に祈りを捧げ。
キリスト教徒でもないのに毎年律義にクリスマスを祝い。
大みそかには除夜の鐘をBGMに年越しそばを食べる。
俺は日本人に極めて多い、実質無宗教で好きなイベント要素だけ取り入れるいいとこどりのちゃんぽん宗教観だった。
――あ、すみません、今ちょっとフカしました。
一人暮らしを始めてからは、クリスマスは特に祝ったことはないです。
心の中なのにイイカッコしてしまいした、ごめんなさい。
でもヒナギクさんは俺の疑問なんて気にする様子もなく言葉を続ける。
「彼らの素性はおそらく、この世界で異世界召喚を行う力を持つ者――つまりトールさんを異世界転移・転生の女神様の分身と位置づけ、さらには教祖として崇め奉らんとする環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーですわ」
「環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』だって? なんかえらく美味しそうな名前だな……? だってサーモンって鮭だよな?」
「サーモンではなくサモンですわ。召喚という意味です」
「あ、はい」
「彼らは環太平洋地域の広範囲にわたってメンバーや協力者を張り巡らせている、巨大秘密結社です」
「……はぁ」
いきなりそんなアホみたいな話をされても、俺反応に困るんだけど。
「はぁ」以外になんて言えばいいの?
「彼らは何らかの方法によってエリカさんを召喚したトールさんの存在を知り、自分たちの教祖とするべく連れ帰ろうとしたのでしょう」
「それはまたえらくまた突飛な話だな? 突飛すぎてなかなか頭がついていかないんだけど……」
異世界から召喚しちゃった女の子との同居ラブコメだと思っていたら、実は悪の秘密結社と戦うワールドワイドなアクションものだった、的な?
俺は凄腕エージェントの立ち位置?
「理解はおいおいで構いませんわ。つまりわたくしが言いたいのはこういうことですの。教祖であるトールさんの言うことなら彼らは何でも聞くはずです。わたくしの代わりにトールさんから質問してみて下さいな」
「はぁ……、まぁ質問するくらいなら別にいいんだけどさ? でも多分俺が聞いてもダメだと思うぞ?」
「物は試しで是非ともお願いいたしますわ」
「そこまで言うなら……じゃあえっと、君たちは環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーなのか?」
ヒナギクさんから矢継ぎ早に言われた俺は、半信半疑――というかぶっちゃけ9割9分9厘疑いつつ尋ねてみた。
するとなんと言うことだろうか!!
「教祖様のおっしゃる通り、我々は環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーです。本日は教祖様をお迎えにあがりました」
俺の言葉を聞いた途端にリーダー格の男が口を開いたかと思ったら、拘束された全員が床に横たわったまま背筋をピンと伸ばしたのだ。
「お、おう……そっか」
まさかのマジ話かよ。
「自分は最高幹部の一人であり、現在は教祖代行も務めております、教祖様を別にすれば実質ナンバーワンのエクスシアと申します。以後お見知りおきを」
しかもリーダー格の男(以降エクスシア)は、素直にペラペラと聞いてもいないことまでしゃべり始めたのだ――!
「それで、あなたたちの目的は何なのですか? と、一応聞いておきましょうか」
国家公務員をやっているヒナギクさんが、こっちはこっちでいたって冷静な顔をしながら、拘束されて倒れている黒ずくめの男たちに向かって問いかけていた。
「ふん、国家の犬なんぞに誰が言うものか。我らは崇高なる使命に燃えるいと尊き殉教者よ。たとえ死ぬより恐ろしい拷問をされようとも、我らは口を割ったりはせん」
しかし黒ずくめの男たちのリーダーは鼻で笑うと、そのまま真一文字に口を結んで黙り込んでしまったのだ。
ヒナギクさんがあれこれ問いかけても全く反応しない。
部下たちも同様だった。
「完全にだんまりですわね。これだから妄信めいた宗教心というものは困るのですわ」
「宗教心? その言い方だと、もしかしてヒナギクさんはこの不法侵入者たちに心当たりでもあるのか?」
やれやれと肩をすくめたヒナギクさんがやけに具体的に言及したことに、俺は少なくない違和感を覚えていた。
「そうですわね、せっかくですから教祖様から直々に問いただしてもらいましょうか。教祖様に話せと言われれば、彼らは喜び勇んで我先にと話してくれるでしょうから」
「教祖様? いったい誰のことなんだ?」
「もちろんトールさんですわよ」
「え、俺?」
ヒナギクさんからいきなり「あんたが教祖よ」と言われてしまった俺は、自分の顔を指差しながら間抜けな声で聞き返す。
「はい、トールさんですわ」
「いやいやいや、なんで俺が教祖なんだよ? 俺は生まれてこの方、完全に無宗教で生きてきたぞ?」
でも日本人ってだいたいそうだよな?
正月には神社に行き。
お盆には先祖の霊に祈りを捧げ。
キリスト教徒でもないのに毎年律義にクリスマスを祝い。
大みそかには除夜の鐘をBGMに年越しそばを食べる。
俺は日本人に極めて多い、実質無宗教で好きなイベント要素だけ取り入れるいいとこどりのちゃんぽん宗教観だった。
――あ、すみません、今ちょっとフカしました。
一人暮らしを始めてからは、クリスマスは特に祝ったことはないです。
心の中なのにイイカッコしてしまいした、ごめんなさい。
でもヒナギクさんは俺の疑問なんて気にする様子もなく言葉を続ける。
「彼らの素性はおそらく、この世界で異世界召喚を行う力を持つ者――つまりトールさんを異世界転移・転生の女神様の分身と位置づけ、さらには教祖として崇め奉らんとする環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーですわ」
「環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』だって? なんかえらく美味しそうな名前だな……? だってサーモンって鮭だよな?」
「サーモンではなくサモンですわ。召喚という意味です」
「あ、はい」
「彼らは環太平洋地域の広範囲にわたってメンバーや協力者を張り巡らせている、巨大秘密結社です」
「……はぁ」
いきなりそんなアホみたいな話をされても、俺反応に困るんだけど。
「はぁ」以外になんて言えばいいの?
「彼らは何らかの方法によってエリカさんを召喚したトールさんの存在を知り、自分たちの教祖とするべく連れ帰ろうとしたのでしょう」
「それはまたえらくまた突飛な話だな? 突飛すぎてなかなか頭がついていかないんだけど……」
異世界から召喚しちゃった女の子との同居ラブコメだと思っていたら、実は悪の秘密結社と戦うワールドワイドなアクションものだった、的な?
俺は凄腕エージェントの立ち位置?
「理解はおいおいで構いませんわ。つまりわたくしが言いたいのはこういうことですの。教祖であるトールさんの言うことなら彼らは何でも聞くはずです。わたくしの代わりにトールさんから質問してみて下さいな」
「はぁ……、まぁ質問するくらいなら別にいいんだけどさ? でも多分俺が聞いてもダメだと思うぞ?」
「物は試しで是非ともお願いいたしますわ」
「そこまで言うなら……じゃあえっと、君たちは環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーなのか?」
ヒナギクさんから矢継ぎ早に言われた俺は、半信半疑――というかぶっちゃけ9割9分9厘疑いつつ尋ねてみた。
するとなんと言うことだろうか!!
「教祖様のおっしゃる通り、我々は環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』のメンバーです。本日は教祖様をお迎えにあがりました」
俺の言葉を聞いた途端にリーダー格の男が口を開いたかと思ったら、拘束された全員が床に横たわったまま背筋をピンと伸ばしたのだ。
「お、おう……そっか」
まさかのマジ話かよ。
「自分は最高幹部の一人であり、現在は教祖代行も務めております、教祖様を別にすれば実質ナンバーワンのエクスシアと申します。以後お見知りおきを」
しかもリーダー格の男(以降エクスシア)は、素直にペラペラと聞いてもいないことまでしゃべり始めたのだ――!
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