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エピローグ

第170話 カップルになって初めての放課後デート

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 つつがなく授業を終えて、放課後。
 俺と優香は落ちついた雰囲気の喫茶店で、向かい合わせに座っていた。

 つまり、優香とカップルになって初めての放課後デートである。

「ふふっ」
 店員さんにケーキセットを2つ注文をした後、優香が俺を見てにへらーと嬉しそうに微笑んだ。

 ちなみに前に来たタルト屋さん――オーケストラコンサートの後に行って優香にすごく好評だった――とはまた別のお店だ。
 あのお店は学校からは少し距離があるのと、前に行ったばかりでまた同じ店ってのはどうかなと思ったからだ。

 紺野蒼太は、恋人に新たな感動を提供し続ける男であるからして。

「急に笑ってどうかしたんだ?」
「ううん、何でもないよ」

「そうは見えないけど」
「しいて言うなら、蒼太くんの顔を見たら嬉しくなったからかな?」

 言いながら、優香がまた嬉しそうに笑う。

「お、おう。そうか」
「そうだよー。あ、もしかして照れてる?」

「じっと見つめられながらそんな恥ずかしいこと言われたら、そりゃ照れるだろ?」
「蒼太くんは意外と照れ屋さんなんだね。ふふっ、また1つ蒼太くんのこと、詳しくなっちゃった♪」

 優香がそれはもう嬉しそうに声を弾ませた。

 くっ!
 なんだこいつ、可愛すぎだろ。
 優香が楽しそうに笑うだけで、俺の心が月までピョンピョンしちゃうんだが?

 俺の心を翻弄して喜ぶなんて、優香は小悪魔か?
 小悪魔優香ちゃんなのか!?

 はっ、そうか!
 月のウサギさんは、彼女に微笑まれて嬉しくなった男の心が、飛び跳ねて月まで行ったものだったんだな!

 こんな子が俺の彼女だったら――って、優香は俺の彼女なんだよな。

 名前で呼び合う仲のいいクラスメイトでも、バス通学フレンズでも、こっそりお泊まり会をした秘密の共有者でも、妹を助けた恩人でもない。

 今の俺と優香は正式に彼氏・彼女な関係だった。

 前から優香は相手の目や顔をまっすぐ見て話す女の子で、話す時は自然と見つめ合ってはいた。
 だけどカップルになったという確固たる事実が、俺の心を不思議なくらい強くドキドキとさせる。

 だが俺も男である。
 このまま小悪魔モード優香にからかわれてばかりではいられない。

 俺は負けじと優香の顔を見つめ返した。

 アイドルのように整った可愛らしい顔立ち。
 大きな瞳。
 透きとおるような肌。
 プルプルのリップ。
 流れるような黒髪。

 もうほんといつまででも見ていられる。

 美人は3日で飽きるってことわざがあるけれど、好きな子が目の前にいてくれたら、美人でも美人でなくても飽きるわけがないと思うんだ。
 これは世界一、意味が分からないことわざだよ。

 俺がどうにも横道にそれたことばかり考えていると、

「もぅ、蒼太くんってば、そんなに見つめられたら恥ずかしいよ……」

 上目づかいの優香が、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で可愛らしくつぶやいた。
 透きとおるように白い頬が、ほんのりと赤く染まっている。

「な? 優香に見つめられてドキドキした俺の気持ちが、分かっただろ?」
「もぅ、蒼太くんのいじわる……でも、好き」

「お、おう……俺も好きだぞ」
「えへへ、ありがと♪」

「…………」
「…………」

 そこで会話がプツリと途切れ、俺たちは向かい合って座ったまま無言で見つめ合った。
 だけど全然嫌な沈黙じゃない。
 会話の糸口を探してるんじゃなくて、2人の間の静かな空気にゆっくりとひたっているっていうか。

 店内に流れている小さめに調整されたBGMをなんとはなしに耳に入れながら、居心地のいい沈黙に身をゆだねていると、

「お待たせいたしました。チーズケーキのセットと、ガトーショコラのセットになります」

 店員さんが注文したケーキセットを運んできた。
 店員さんは丁寧な態度で手際よく、俺と優香の前にケーキセットを並べていく。

 俺がチーズケーキ。
 優香がガトーショコラだ。

「ご注文は以上になります。ごゆっくりどうぞ~」

 最後に一言言い添えて離れていく店員さんに、俺と優香は示し合わせたように同じタイミングで、ぺこりと頭を下げた。
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