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第8章 深まりゆく関係

第141話 タルトを前に、ご機嫌な優香。

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 ネットの口コミによると、ア・ル・カンパーニュは最近、若い女の子の間でかなり話題になっているお店らしい。
 しかもスイーツの街・神戸発祥のお店だっていうから、デートで行くなら間違いはないはずだ。

 神戸といえば洋菓子の街だもんな(だよな?)。
 そこの有名スイーツが美味しくないわけがない。
 かくいう俺も甘いものは大好きだ。

「あ、そのお店、知ってるかも。フルーツタルトとストロベリータルトが有名なところでしょ?」
「そうそう――って、詳しいみたいだけど、もしかして優香は行ったことあるのか?」

「ううん、ないよ。でも一度行ってみたいなーって、菜々花ななかちゃんと話してたんだよね」
「そういうことか」

 スイーツの話で盛り上がる美少女2人。
 とても絵になるなぁ。
 もしこれが俺と健介なら、場違いってレベルじゃない。

「じゃあそこで、今日のコンサートの感想会だね♪」
「いやあの、ア・ル・カンパーニュに行くのはいいんだけど。感想会はその、聴いてなかったからできないと申しますか……」

 ほぼ寝ていたのに感想もへったくれもないです、はい。
 羊を数えたりと、寝ないようにあれこれ無駄に頑張った話ならできるんだけども。

「ふふっ、冗談だってば。普通にお話しましょ。お店の詳しい場所は知ってるの?」

「もちろん。定休日もここからの経路もちゃんと事前にチェック済み。汚名返上、ここからはちゃんとエスコートするから大船に乗った気でいてくれ」

「ふふっ、よろしくね。期待してます」

 その後、美味しいタルトのお店に場所を移して、俺と優香は楽しくスイーツをした。

 優香は季節のフルーツがいっぱいに盛られたお店イチオシのフルーツタルトを。
 俺は大きな苺がこれでもかと、もっこりと小高い丘のように敷き詰められたストロベリータルトを注文する。

「んーーっ!! 美味しい~~!! なにこれーー!!」
 フルーツタルトを一口食べた途端に、優香が弾んだ声を上げた。

「これは人気出るのが分かるな。ヤバイ美味しさだよ」
 俺も一口食べてすぐに、その美味しさを思い知る。

「甘いのに、甘すぎないラインが絶妙だよね~」
「なんていうか、上品な甘さって言えばいいのかな?」

「しかも果物もいっぱい載ってて、見た目も華やかだし」
「見ただけで、これは美味しいって分かっちゃうよな」

「なによりタルトの耳のサクサク感! タルトってこんなに美味しかったんだね。ちょっとびっくりしたかも」

 タルトについて語る優香の目は、キラキラと輝いていた。
 普段見せてくれる落ち着いたお姉さん感が跡形もなく消え失せ、美月ちゃんみたいにはしゃいでしまっている。

 控えめに言って、超ご機嫌だった。

「喜んでもらえて良かったよ」
 こんなに喜んでくれるなんて、神戸スイーツを選んで本当によかった。

 さすが神戸スイーツ!
 ありがとう神戸スイーツ!
 ビバ神戸スイーツ!
 神戸スイーツ、万歳!

「素敵なお店に連れてきてくれて、ありがとね蒼太くん」
 優香が満面の笑みで微笑む。

 俺もそれに満面の笑みで応えて――と、そこで俺は、いつも通りに見えた優香の視線が、しかしいつもとは少しだけ違って、俺の食べかけのストロベリータルトに向かっていることに気が付いた。

 優香は割と相手の目をまっすぐ見て話すんだけど、今に限ってはチラチラと視線がタルトに行っている。

「良かったら、ストロベリータルトも少し食べるか?」
「えっ?」

 俺のさりげない提案に、しかし優香はドキッとしたように肩を震わせた。
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