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第6章 優香のお料理大作戦

第100話 ~優香SIDE~膝枕(2)

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「うぅん……? ぅん、ん、んんっ。すー……すー」

 しかし蒼太くんは一瞬眉根を寄せたものの、すぐに口呼吸に切り替えて再び気持ちよさそうに眠り始める。

 起きる素振りはちっともない。
 本当に疲れているんだろう。

 ――って、私は何をやっているのかな!?

「意地悪しちゃってごめんね」

 蒼太くんが眠っているのをいいことに、こっそりイタズラをしてしまったことを謝罪すると。
 私はさっきまでしていたように、髪をすくようにして蒼太くんの頭を撫でてあげた。
 蒼太くんが嬉しそうに寝顔をほころばせる。

 その無防備であどけない笑顔を見ているだけで、私の胸はどうしようもない程にキュンと切なくなるってしまうのだった。

「蒼太くんのばーか……」
 思わず口にしてしまうと、それに無意識に反応してしまったのか、蒼太くんが小さく寝返りを打った。

 そして蒼太くんは横向きの体勢で私の方を向くと、おでこを私のお腹――というか下腹部というかなんというか微妙なところに――ぐいぐいと押し付けてきたのだ。

「そ、蒼太くん……?」

 まさか突然目が覚めて、えっちなワイルドウルフさんにトランスフォームしちゃったのでは!?
 などということは、全くなかった。

「むぬ、むにゃ、ん、んにゃ……すー……すー……」
 蒼太くんはむにゃむにゃと小さな寝言を言うと、そのままの体勢で、再び規則正しい寝息を立て始めたのだ。

 さすが蒼太くん、どこまでも紳士だ。
 時々視線がえっちだけど――胸や太ももとをさりげなくチラ見してはくるけれど、それはまぁ年頃の思春期男子だからしょうがないだろう。

 ネットなどによると、男子高校生とは得てしてそういうものらしいから。 

 そしてホッと一安心する反面、少し残念に思う自分がいた。
 しかしそこで私はふと気付いてしまう。

 何に気付いたって、横向きになって私の方を向いた蒼太くんの、その右手の平が私のお尻の辺りを触っていることに、私は気付いてしまったのだ。

「はぅっ!?」
 危うく驚きで身体が跳ねてしまいそうになったのを、何とか堪える。
 動いたら蒼太くんが起きちゃうもんね。

 セーフ、セーフ!

 もちろんそれが意図的ではないのは明らかだ。
 その証拠に蒼太くんは、ずっと変わらずに規則正しい寝息を立てていた。
 お尻に触れている手も軽く添えられているだけで、それ以上の動きはない。

 寝ている時に時々、枕や布団を抱きしめたりしちゃうことがあるけど、その延長であろうことは間違いなかった。

 だけどね!?
 意中の男の子に抱き着かれて、下腹部に顔をうずめられながらお尻に手を当てられちゃってる状況は、すっごくすっごく、ものすっごく恥ずかしいの――!

「お、落ち着こうね私。これは不慮の事故だから。いやらしいことでも何でもないんだから」

 正直に言おう。
 抱き着かれて嫌ではなかった。
 むしろ甘えられているみたいで嬉しいまであった。

 でもねでもね!
 それと同じくらいに、お尻を触られているのが気になって気になって、しょうがないんだよ~~!

「気にしないでおこうと思えば思うほど、逆に気になっちゃうよ~!」

 手を退けたらその拍子に蒼太くんが起きてしまうかもしれないと思うと、どうにもはばかられてしまう。

 そこからの私は、下腹部に押し付けらえた蒼太くんのおでこと、お尻に触れた蒼太くんの手の感触をずっと意識しながら、あれやこれや――ときにはイケナイ妄想をして過ごしたのだった。


「んん……、あれ、優香? 今日も可愛いな……でもなんで起きたら優香が? ……って、そっか。俺、優香にソファで膝枕してもらってたんだっけ。悪い、完全に熟睡してた。あと、ありがとう」

 薄っすらと目を開けた蒼太くんの声で、ハッと意識が現実に戻ってきた時には、外はすっかり本降りの雨になっていた。


~優香SIDE~ END
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