95 / 175
第6章 優香のお料理大作戦

第94話 ポテト・ヘッド蒼太

しおりを挟む
 停留所でバスを降りた俺と優香は、いつ雨が降り出してもおかしくない分厚い雲が垂れ込める中、俺の家に向かう前にまずは近くのスーパーへと足を向けた。
 親に貰っていた食事代を使って、食材を購入するのだ。

「冷蔵庫とか食料庫に何があるかとかは分かる?」

 歩きながら早速、本日の料理長であらせられる優香シェフが、紺野家にある食材を尋ねてきた。

「えーと……ちょっと分からないな」

 しかし俺はそれにまともに答えることができなかった。
 正直なところ、男子高校生ほど家にある食材についてうとい人間はいないと思うんだ。

「一回蒼太くんのおうちに寄って、何があるかを確認してからの方がよかったかもね」
「段取り悪くてごめんな。今から一回うちによるか?」

「ううん、これはこれで楽しいし。想像力を働かせる余地があるっていうか。ふふっ、腕の見せ所だね」

 自分ちの冷蔵庫の中身すら把握していないジャガイモ頭――英語のスラングでアホのことをポテト・ヘッドと言うらしい。この前、英語の授業で先生が言っていた――な俺を前に、だけど優香は呆れる様子もなく、むしろ楽しそうに見える。

 優香の優しさと、こういう前向きなところは本当に素敵だよな。
 俺も見習わないとだ。

「でもちょっと待ってくれな。頑張って思い出すから。えーと……たしか台所にジャガイモがあった気がする。あと玉ねぎとニンジンも一緒に置いてあったような」

「ふんふん、根菜は結構ある感じだね」
「後は玉子やチーズ、牛乳とか一般家庭に普通にありそうなのはあると思う」

 それでも俺はおぼろげな記憶からなんとか引っ張り上げて、我が家の食材事情について優香に報告した。
 ポテト・ヘッドという言い回しからジャガイモがあることを思い出したのは、もちろん内緒だ。

「じゃあ冷凍食品はどうかな? さっき買い置きの冷凍食品があるって言ってたよね?」

「冷凍食品はバスタと餃子とハンバーグがあるって、母さんが言ってたはずだ」
 実は言われただけで実際に見て確認はしていないんだけど、まさか母さんも嘘はつかないだろう。

「その辺りは冷食の定番だもんね。美月もハンバーグが好きだから、あんまり時間がない時は冷凍ハンバーグをアレンジして出してるんだよねー」

「ははっ、ハンバーグが好きだなんて子供らしくて可愛いな」
 俺は目を輝かせながらハンバーグをパクパクと食べる美月ちゃんを想像して、なんともほっこりしたのだった。


 食材について話しているうちに、スーパーに到着した。

「さーてと。なんとなく献立のイメージはできたかな。必要なものもそんなになさそうだから、ちゃちゃっと買い物を済ませちゃうね」

 優香が胸の前で、可愛らしい小さなガッツポーズをする。

「ならカゴ持ちは俺に任せてくれ。カートも持ってきた方がいいか?」
「そんなにたくさんは買わないと思うからカートはなくてもいいけど、あったほうが楽は楽だよね」

「だよな。じゃあカートも持ってくる」
 文明の利器は使わないとだ。
 俺はカートに買い物カゴを載せると早速、優香と一緒に買い物を始めた。

 既に頭の中に何を買うかのプランができているのだろう。
 優香はソーセージやブロッコリー、レタス、パプリカといった食材をテキパキと購入していく。

「優香ってこのスーパーに来たことあるのか? 優香の家からはかなり遠いよな?」

 たしか優香の家の辺りには別のスーパーがあったはずだから、ここに来ることはまずないと思うんだけどな。
 あまりにも優香の手際が良かったので、つい気になって尋ねてみた。

―――――――

新作スタートしました!

ボッチなオレがソシャゲ世界に転移したら、姫騎士学園で俺だけ男!?しかも最高位職のLv99神騎士だったので無双、推しの子(姫騎士)と同棲する。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/435568949/627794691

異世界推しの子ファンタジーです。
よろしくお願い致します!
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...