上 下
18 / 175
第2章 変わり始めた関係

第18話「でも蒼太、気を付けろよ?」

しおりを挟む
「はぁ!? なんでだよ!?」

 突如飛び出したあまりにひどすぎる一言に、俺は思わず席から立ち上がった。
 だって健介お前、さっきマックセットを奢ってくれるって言ったじゃん!
 しかもデザート付きで!

「なんでだと? 理由はてめぇの心に聞いてみろやこのリア充ヤロウが! 葛谷さんといい姫宮さんといい、なんでお前ばっかり美少女にモテるんだよ! 俺と大差ない顔面のくせにおかしいだろが!」

「だから優香とは偶然ちょっとだけ仲良くなっただけだっての」

「チッ、まだ言い張るかこのリア王が」
「言い張るとか言うな、言い張るとか。事実なんだからしょうがないだろ」

「事実ねぇ……」

 健介が全く信じていなさそうな胡乱うろんげな視線を向けてくる。
 だけど俺としても、優香が今後あらぬ疑惑に晒されないためにもここで折れるわけにはいかなかった。

「事実は事実だから、俺としてもマジでそれ以外に言いようがないんだよ」

「ま、蒼太がそう言うんなら、今日のところはそういうことにしておいてやるよ」
「今日のところもなにも、明日も明後日も揺るがない事実なんだよなぁ……」

 俺は事実をそのまんま伝えてるだけだっての。
 っていうかろくに話したこともなかった学園のアイドルと、俺がある日突然付き合える――とか思っちゃえる健介の頭が、俺は少しだけ心配になってしまうんだが?

「……でも蒼太、気を付けろよ?」
 と、ここで健介が急に声を潜めた。

「気を付けろって何にだよ?」

「姫宮さんにファンが多いのは蒼太も知ってるだろ?」
「そりゃ知ってるよ。学校内にファンクラブがあるとかそういう話も聞いたことがあるし。でもそれがどうしたんだ?」

「姫宮さんのファンの一部は過激化しているって話だからな。あまり仲良くしていると襲われるかもしれない」

 健介がとても真剣な顔をしながら、とてつもなく馬鹿なことを言った。

「……なにをバカなこと言ってんだ? うちの学校は普通の公立高校だぞ? そんな昭和漫画のヤンキー学校みたいなことが起こってたまるかっての」

 真剣な顔をして何を言われるのかと思ったら超絶アホなことを言われてしまい、俺は苦笑するしかなかった。
 だけど健介は今日一番ってくらいに真剣な顔をして言った。

「違う。姫宮さんだけは普通とは別格の存在だって話だよ。なんにせよ気をつけて損はないからな?」
「はぁ……」

 どこまで本気なのかは分からないけど、俺のことを心配してくれているのは確かみたいだし、一応は心の隅にとどめておくことにしよう。

 キンコンカンコーン。

 と、ちょうど健介と話し終わったタイミングで朝の予鈴が鳴り響いた。
 教室のあちらこちらで俺と健介の会話に聞き耳を立てていたクラスメイトたちが、各々の席へと散らばっていく。

「俺も情報が入ったらすぐにお前に報せるからよ」
 健介もそんな言葉を残しつつ、俺の席を離れて自分の席へと歩き出した。

「まぁその時があればよろしくな。『その時』があればだけど」
「ああ、任せとけ。イの一番に伝えてやるからよ」

 肩越しに颯爽と振り返りながら、親指を立ててグーにした拳を軽く上げて応える健介。
 だからハリウッドなオサレポーズはお前には(もちろん俺にもだが)似合わないっての。

 そしてどんなドタバタがあろうとも、学校生活はチャイムの音とともに強制的に進行していく。
 それが高校生の日常というものだった。

 俺はふぅ、と軽く息を吐いて幾分いくぶん浮ついていた気持ちを鎮めると、いつもと変わらない日常生活――授業をこなしていった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

処理中です...