人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 私主催でお茶会が開かれる事になった。

 マグダラスではお茶会なんてしてる余裕なんてなかったので私には勝手がわからない。
 マグダラスは国土自体はそこそこの大きさだけれど、農地に出来る土地が少ない。
 今も山脈伝いに必死で開墾している最中だ。
 諸侯や官吏の妻や娘も重要な人手で、社交界なんてものでその手を取られてる暇なんかない事は王族が一番よくわかっていた。

 だから、私はそもそもお茶会自体を知らない。
 多分そんな王女は珍しいだろう。

 ここは優秀な侍女達を頼るしかない。

 侍女達は一様に緊張し、真剣な面持ちで準備を進めている。一旦お茶休憩を挟む。
 マリ、ヨアンナ、カティが今日の側付きなので進捗状況を聞いてみる。
「準備は進んでますか?」
 マリが答える。
「はい。今回は妾妃様お2人だけをご招待しますので大掛かりではありませんから大丈夫ですよ」
 マリが答えてくれる。

 お茶会の準備は室内装飾、家具調度品、使われる食器、飾られる花などのセンスを求められる。
 少なくともマグダラスにいた時に習ったモトキスなどの他国のお茶会はそういうものだとされている。
 きっとグリムヒルトも同じなんだろう。

 お茶会は基本的には王族や諸侯や官吏の妻や娘達、偶には夫の社交場となっている。
 グリムヒルトには女性の軍人も結構いるので、男性が内助の功をなさっている場合も多々ある。

 元々が海賊である事は、実力主義を重んじる結果に繋がってる。結果を出したらそれが女性であろうと正当に評価される。
 なのでお茶会には男性が参加される事も主催される事もある。

 正妃と誼を結びたいという人はいっぱいいるし、参加者を相当吟味しないといけないというので、今回は妾妃様方だけをお招きするという事になった。

 陛下から第7妾妃のエミリア・エンマ・ヴィカンデル様からお茶会のお誘いがあるだろうと御達があったので、
 私の方から、第2妾妃のマルグレット・ロヴィーサ・ラルセン様もご一緒にご招待する事にした。
 2人とも色良いお返事を頂けたので侍女達に準備をお願いしている。

「姫様のご要望は出来るだけ堅苦しくない、お2人に喜んで頂けるもの、でしたので、シンプルな物を選んでいますよ」
 カティは紅茶のカップを手に教えてくれる。

 ヨアンナが引き継ぐ。
「場所は今の季節なら庭園が良いと思います。アルメリアの花が満開になる時期なので丁度良いという事になりました」
「アルメリア…確か思いやりという花言葉でしたよね?」
 アルメリアはこの時期に海岸近辺に咲く。
 赤や白、ピンクの色の小さな可愛らしい花で、グリムヒルトではよく見る。
 とは言っても私はまだ見た事がないのだけれど。
「はい。他にも共感、同情と言ったものがありますよ」
 ヨアンナが更に教えてくれた。

「茶器はシンプルなデザインで華奢な作りのヨシア産の物か、同じくシンプルなデザインで質実剛健な作りのヴァイス産の物か、今侍女達で意見が分かれています」
 マリが私を見た。
「ですので姫様に御裁可頂かなければいけません」
「わかりました。本当に助かります。私ではわからない事だらけで皆んながいなければきっともっと大変だったでしょうね。
 それと式の準備も並行してやってくれているのでしょう?」
「はい。それも御裁可頂かなければならない事があります。
 式後の観兵式と晩餐会の衣装に合わせた装飾品も意見が分かれています。
 陛下は陛下の御希望で全て軍服でお出ましになられる様です。
 お互いの色を入れるという事は陛下付きの侍女達と話し合いました」
「じゃあエメラルドとダイヤなんですね……。落としそうで怖いです……」
「それなんです。今回はエメラルドではなく、パライバトルマリンとダイヤの組み合わせにしようかという話が出ています」
「そうなのですか?それは新しく作る物ではないですよね?」
「はい。亡き御正妃様の遺品です」
「そろそろ衣装合わせもありますし、その時に決めて頂きたいのです」
「わかりました。……本当に目まぐるしいですね。皆んな本当にありがとうございます」
 私は改めてお礼を言う。
 婚姻の儀に関してはその下着の準備まで入念にされる。
 今24人の侍女達がいるけど、それでなんとか回ってるのだから、事前に付いていて貰っていて本当によかった。

 こうして、色々な準備が同時進行で着々と進む。
 先ずはお茶会、頑張らなければ。
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