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私は湯浴みを済まし、陛下を待つ。
いつもの様に私と一緒に眠って下さるだろうか?
今日はいつもと違う一日なので王の間でゆっくり過ごされるかもしれない。
そう思いながらももしこちらに来られたらいけないので、長椅子に座って本を読む。
眠ってしまうかもしれないので、あまり難しくない本を選んだ。
遅々として進まない読書だったけどそれでも読み進めていると、
ガチャリと部屋のドアが開く音がした。
「起きているのか」
陛下は長い脚で足速に長椅子までやってきた。
軍服のままやって来た陛下は早速私を抱きしめた。
「陛下。お疲れ様でした」
「ああ、本当に疲れたぞ」
陛下は私を離して、ポイと乱雑に軍服を脱ぎ捨てる。シャツのボタンを外して胸元を剥き出しにする。
「……その格好をなさっていると、本当に初代のアルフヒルド様とそっくりですね」
私は1階にある大きな階段の踊り場に飾られている初代アルフヒルド様の肖像画を思い浮かべる。
丁度今の陛下と同じ様に軍服を着崩して、ジャケットを羽織って仁王立ちし、腕を組んでいる。
きっと他国の王族の肖像画ではあり得ない格好と構図だろう。
陛下は高い位置で纏めた髪の紐をスルスルと解いていく。
長い銀色の髪がストンと腰まで滑り落ちる。
「そうだな。そのおかげで艦を率いる時には士気が上がって重宝した」
「そうなのですか?」
私は席を立って陛下の脱いだ軍服を拾い、一人掛けの椅子の背もたれにかけた。
「ああ、初陣ではこの着崩しをして皆の前で鬨を上げたな」
「陛下の初陣は確か今の私と同じ、14でしたね」
「ああ、そうだ」
私はまた長椅子の陛下の横に座った。
「アルフヒルド様は今でも人気なのですか?」
「海軍の軍人達からは女神の様に扱われているな。何せ炎のセイレーンの剣技を持ち、海戦に強く、カリスマもある。炎のセイレーンの剣技が如何なるものか、今のセイレーン殿が体現しているからな。わかりやすいのだろう」
「あの、ずっと疑問でしたのですが、どうして、[炎のセイレーン]と呼ばれるのですか?」
陛下は足を組み頬杖をつく。
「海戦というのはな、艦隊が横一列に並び、相手の船に乗り込み、船員を如何に多く屠るかが勝負の分かれ目になる。つまり個人の剣技は重要な戦力だ。初代や現セイレーン殿は、船の足場の悪さを物ともせず、炎の揺らめく如く舞い踊り唄う様にたった一人で戦艦一隻を墜とす。故に付いた二つ名だな」
「……凄すぎて、想像がつきません……」
私はその桁違いの強さに、[炎のセイレーン]の二つ名がこの国の至宝とまで呼ばれている事に合点がいった。
確かに私が初めて会った時にへリュ様に取った態度は無礼だと怒られても仕方がなかったのかもしれない。
あまりに馴れ馴れしかった。
たまにやってくるシビディアの船の船員さん達に接するのと同じ様に接してしまったので、失礼だっただろう。
今後も他国からの来賓があるだろうから、その時は本当に気をつけよう。
「そんな事より姫。疲れた」
「そうですか。一日中儀式に晩餐会にと忙しくされていましたからね。でも、次からはご一緒出来ますね」
私は笑ってそう言った。
「姫、儂に褒美をくれ」
「……っ!ほ、頬にキスはもう堪忍して下さい!」
やっぱり私は顔を赤らめてしまう。
「いや、膝枕だ」
「ひ、膝枕ですか……?」
「ああ」
「そ、それぐらいでしたら……、喜んで」
私は膝を明け渡す。
陛下は横になって、私の膝に頭を乗せた。
「ふむ。やはり心地良いな」
「そ、そうですか…? あの……光栄です」
やっぱりドギマギしてしまう。それでもいつもよりは赤い顔はしてないと思う。
陛下は腕を組んで目を閉じている。
私は陛下の横顔を見下ろす形になる。
陛下が充足を得られるまで、今日の月の光と同じ色の銀色の髪を撫ぜながら、そのまま静かに待った。
いつもの様に私と一緒に眠って下さるだろうか?
今日はいつもと違う一日なので王の間でゆっくり過ごされるかもしれない。
そう思いながらももしこちらに来られたらいけないので、長椅子に座って本を読む。
眠ってしまうかもしれないので、あまり難しくない本を選んだ。
遅々として進まない読書だったけどそれでも読み進めていると、
ガチャリと部屋のドアが開く音がした。
「起きているのか」
陛下は長い脚で足速に長椅子までやってきた。
軍服のままやって来た陛下は早速私を抱きしめた。
「陛下。お疲れ様でした」
「ああ、本当に疲れたぞ」
陛下は私を離して、ポイと乱雑に軍服を脱ぎ捨てる。シャツのボタンを外して胸元を剥き出しにする。
「……その格好をなさっていると、本当に初代のアルフヒルド様とそっくりですね」
私は1階にある大きな階段の踊り場に飾られている初代アルフヒルド様の肖像画を思い浮かべる。
丁度今の陛下と同じ様に軍服を着崩して、ジャケットを羽織って仁王立ちし、腕を組んでいる。
きっと他国の王族の肖像画ではあり得ない格好と構図だろう。
陛下は高い位置で纏めた髪の紐をスルスルと解いていく。
長い銀色の髪がストンと腰まで滑り落ちる。
「そうだな。そのおかげで艦を率いる時には士気が上がって重宝した」
「そうなのですか?」
私は席を立って陛下の脱いだ軍服を拾い、一人掛けの椅子の背もたれにかけた。
「ああ、初陣ではこの着崩しをして皆の前で鬨を上げたな」
「陛下の初陣は確か今の私と同じ、14でしたね」
「ああ、そうだ」
私はまた長椅子の陛下の横に座った。
「アルフヒルド様は今でも人気なのですか?」
「海軍の軍人達からは女神の様に扱われているな。何せ炎のセイレーンの剣技を持ち、海戦に強く、カリスマもある。炎のセイレーンの剣技が如何なるものか、今のセイレーン殿が体現しているからな。わかりやすいのだろう」
「あの、ずっと疑問でしたのですが、どうして、[炎のセイレーン]と呼ばれるのですか?」
陛下は足を組み頬杖をつく。
「海戦というのはな、艦隊が横一列に並び、相手の船に乗り込み、船員を如何に多く屠るかが勝負の分かれ目になる。つまり個人の剣技は重要な戦力だ。初代や現セイレーン殿は、船の足場の悪さを物ともせず、炎の揺らめく如く舞い踊り唄う様にたった一人で戦艦一隻を墜とす。故に付いた二つ名だな」
「……凄すぎて、想像がつきません……」
私はその桁違いの強さに、[炎のセイレーン]の二つ名がこの国の至宝とまで呼ばれている事に合点がいった。
確かに私が初めて会った時にへリュ様に取った態度は無礼だと怒られても仕方がなかったのかもしれない。
あまりに馴れ馴れしかった。
たまにやってくるシビディアの船の船員さん達に接するのと同じ様に接してしまったので、失礼だっただろう。
今後も他国からの来賓があるだろうから、その時は本当に気をつけよう。
「そんな事より姫。疲れた」
「そうですか。一日中儀式に晩餐会にと忙しくされていましたからね。でも、次からはご一緒出来ますね」
私は笑ってそう言った。
「姫、儂に褒美をくれ」
「……っ!ほ、頬にキスはもう堪忍して下さい!」
やっぱり私は顔を赤らめてしまう。
「いや、膝枕だ」
「ひ、膝枕ですか……?」
「ああ」
「そ、それぐらいでしたら……、喜んで」
私は膝を明け渡す。
陛下は横になって、私の膝に頭を乗せた。
「ふむ。やはり心地良いな」
「そ、そうですか…? あの……光栄です」
やっぱりドギマギしてしまう。それでもいつもよりは赤い顔はしてないと思う。
陛下は腕を組んで目を閉じている。
私は陛下の横顔を見下ろす形になる。
陛下が充足を得られるまで、今日の月の光と同じ色の銀色の髪を撫ぜながら、そのまま静かに待った。
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