月下の半導体

湊戸アサギリ

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Case.5 身体の『使い方』

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 「みんな適当に並べ。まず足の速さの測定をする。50m走って」
左門は生徒達を並ばせる。並んだ順に測定していく事にした。津々浦の視線を感じながら竹葉も並ぶ。
「これって足を義足にしている人達は優位じゃないですか?」
「ただの測定なんだから気にしないの」
足が生身かつ速さがない兵鉢は虚ろになるが左門は気に止めない。
「ちゃんと走ってくれよ。全身機械の奴の速さが見たいから」
「お前関係無いだろ……」
津々浦に関心を寄せられ、竹葉は腹が立っている。最初に測定するのは、竹葉と津々浦だった。
「さっきの続き見れるかな?」
弓彦は待ちながら健之介の隣で二人がスタートラインに並ぶのを見る。
「スタンディングでいいわよ。いちについて!」
左門は笛を鳴らし、竹葉と津々浦はその合図で走り出した。二人共殆ど同じ速度で一歩も譲らず、力強く走る。
「やっぱりな……」
健之介は竹葉の走りを見る。自分が乗り込んで止めようとした猛スピードのトラックに追いついていた彼の速さは本物だった。津々浦と竹葉はゴール地点に到着すると、津々浦は勢いよく止まったが、竹葉は、
ーードサッ!
「おわ!!」
上手く止まらずに前に転んだ。
「ああ! 大丈夫!?」
「竹葉くん!?」
「すごい勢いだ……」
勢いよく転んだ竹葉を見て弓彦と兵鉢と健之介は驚く。弓彦は竹葉の元に走り彼を立たせる。
「うはぁ」
竹葉は顔に痛みを感じる。コンバータとはいえ危険信号としての痛みは確かにある。
「竹葉未月、4秒51。津々浦大翔5秒09」
「やったっ」
左門はタイムを読み上げる。津々浦より速い記録だとわかり竹葉はぱっと喜ぶ。
「へー、やんじゃん」
津々浦は笑顔を見せるが、少し引きつっていた。
「はい、次」
左門は他の生徒達も測定する。
「讃岐健之介、10秒11。奈丹弓彦11秒40」
「槙野省吾12秒09。仲代アリサ5秒01」
「倉敷莉音13秒08。平沢頼17秒34」
淡々と測定され、全員で15人の記録がされた。
「女子で一番速いのは仲代って子か」
健之介は仲代アリサのほうを見る。
「ーー白山兵鉢、20秒12」
「やっぱり俺が一番遅かったぁぁぁ!!」
予想はしていたが兵鉢は落胆する。
「鉢は眼以外生身だし仕方ないよ」
弓彦は兵鉢を宥める。
「ほら、握力とかも見るからさっさとやる」
左門は続けていく。
ベンチプレスに握力、ボール投げ、走り幅跳び、パンチ力と普通の高校とは異なる測定が続いた。
「俺全部、多分最下位……」
全てを終えた兵鉢はぐったりする。兵鉢より機械化されている他の生徒達はまだ体力は残っていた。
竹葉と津々浦は静かに睨み合う。測定した種目は全部で6種。それぞれ3種ずつ相手より好成績を出したので引き分けである。
「やっぱり腕っぷしで示し合おうか」
「いいよ。来い」
二人は再び臨戦態勢になり、同時に飛びかかった。二人の拳が同時にぶつかり文字通り火花を散らす。津々浦の靭やかな動きに比べ、竹葉の動きは硬い。津々浦はそれに気付いていた。素早く竹葉の背後に周り羽交い締めにした。
「!?」
「君動きガチガチ過ぎだって」
「はぁ?!」
津々浦から離れようとするが竹葉はそれができなかった。
「動き方ワンパターンだよ」
津々浦はそう言いながら、竹葉を離す。
「その全身機械の身体、使い方わかってないんじゃないの?」
「……」
竹葉は少し納得する。自分の動きは決して靭やかでないと。
その一連を健之介達と左門は見ていた。
「もう済んだ?」
これが竹葉と津々浦の最初の対決であった。

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