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高年期[一学期編]
閑話休題…主人に仕えて
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~こちらは風間和彦の執事の目線です~
興味のあるかたのみ読んでください。閑話ですので飛ばしても話は通じます。
本編は夕方あたりに更新します。この話を読むと次回更新の話をより内容がわかりやすく楽しめます。
*********
私は代々風間公爵家に仕える執事の家柄。幼い頃から主人に仕えるよう教育を受けていた。
私が6歳の頃、風間家に男児が生まれた。・・・だが喜ばしい事なのに夫婦は冷静淡白で生まれたばかりの我が子を乳母に渡してしまった。
名前は和彦様。旦那様似で髪の色は至極色で小顔で可愛らしい。そして奥様似の灰色の瞳、そしてくっきりとした二重。・・・将来、誰もが振り向く絶世の美男子になるだろうと思った。
私は旦那様に仕えている自分の父上に直談判して和彦様の専属執事になった。
とても大人しい子であまり泣かず起きてる時は赤ちゃん用の玩具で遊んだりして大人を困らせる事が少なかった。
和彦様が3歳になり幼稚園へ通い、ある日幼稚園側から連絡が寄せられた。なんでも喧嘩をしたらしい。そしてそのうちの一人が大怪我をしたらしく苦情を言ってきたらしいのだ。
・・・そして和彦様が帰ってくるや否や旦那様が和彦様に大声で罵声を浴びせ暴力を振るった。それをみた乳母や侍女が慌てて和彦様を、庇う。もちろん私は和彦様を懐へ抱き締めこれ以上手を挙げられないように動いた。
・・・それをきっかけに和彦様から笑顔はなくなった。心を閉ざしてしまったのだ。ずっと親に誉めてもらいたくて習い事を頑張っていたのに・・・
私は痛々しく思いながらずっと和彦様を側で守ると心に決めた。
小学校に入る頃には立派な公爵令息となっていた。優秀で大人にも劣らない知識を身に付けどんな事も吸収していった。
そしてまだ小学生というのに色気を漂わせていた。そのせいか侍女たちが何かと言い訳をしては和彦様に色目を使うようになってしまった・・・そのせいで和彦様は人間不振になり更に心を閉ざしてしまった。
ところがある日、和彦様が11歳になり小学6年生になった頃、和彦様に異変が起きた。いつも笑顔の鉄仮面を被ってる和彦様が、どこか楽しそうに笑っていたのだ。・・・思わず主人に質問をしてしまった。
「和彦様、とても・・・ご機嫌麗しゅうございますね。」
「あぁ・・・学校の新入生に気になる奴がいるんだ。」
「左様で御座いますか。失礼しました。」
「いや、いい。・・・そんなに私は顔にでていたかい?」
「僭越ながら・・・はい。とても機嫌の良い感じに受け取りました。」
「そう、か・・・お前がそういうならそうなんだろうな。」
なんの咎めもなく質問に答えてくれた。・・・いつもは必要事項のみの会話しかしなく、こう・・・世間話のような、今日の様に口調を崩して話すのは、あの心を閉ざしたあの日以来だ。
それからも学校に帰ってきては私に今日の出来事を話すようになった。・・・これは良い傾向だ。少しずつ歩み寄っていければこのまま・・・
和彦様はその「気になる奴」にご執心になっていった。夏休みにはその子の家にまで押し掛け拉致同然の行為をして別荘へと連れてってしまった。パジャマのまま・・・
初めて出会う和彦様のお気に入りは八乙女薫風というらしい。・・・確かに中性で整った顔立ちだ。そして何より驚いたのが瞳の色だった。
ネイビーブルー。初めて見た色だった。素直に綺麗な瞳だと思った。・・・そして執事の私に対しても傲った態度は見せず控え目で何をするのにも「有難うございます」とお礼を述べてくるのだ。・・・和彦様が気に入るのがわかった気がした。良い子だった。
それから和彦様はとても楽しそうに学校へ行っては八乙女様の話をする。・・・少ししつこいのではないかと心の中で思ったが和彦様が楽しそうなので話に相槌をうつ。・・・八乙女様には感謝しなくてはならないな。
・・・だが、そんな時に予想だにしなかった出来事が起こった。
「・・・風間家は没落する。荷をまとめよ。新な雇い主を見つけ取り入らなければならない。」
予想だにしない事を言われ言葉が理解できず唖然としてしまった・・・風間家が・・・没落・・・?
では、和彦様は・・・・・?
親の制止を抜けて急いで和彦様の元へ。・・・するとたった今、和彦様が学校から帰って来た所に出くわした。すると鉄仮面ではなく優しい微笑みを私に向け近付いてきた。・・・まだ没落する話を聞かされてないのだな。
だが直ぐに異変に気付く。・・・ご夫婦が珍しく広間にいたのだ。すぐに和彦様を呼び私は扉の前で待機を命じられた。
執事の訓練で小さな音でも聞き取れるよう神経を鋭くする訓練を受けていたので中の声を盗み聞きする。・・・やはり没落するという話だった。
ご夫婦はこの家を手放し借金を支払うと言っていた。・・・やはり父上の言うとおり別の主人の元へ行くしかないのだろうか・・・そう思ってた矢先、とんでもない事を和彦様から発せられた。
「荷物をまとめるのは貴方たちだけです。」
凛とした声が聞こえた。驚きながら耳を澄ませた。・・・なんとまだ幼い成人もしていない和彦様が公爵家を継ぐとご夫婦に言い放ったのだ。しかも旦那様を「お父様」ではなく「貴方」呼ばわりしたのだ。・・・耳を疑いたくなる程、和彦様は淡々と話を進めていく。
・・・少し前に「もしもの為に貯めている金がある」と言っていた事を思い出した。・・・話からしてご夫婦を別宅に追いやるつもりらしい。
・・・ご指示は無かったが直感を信じアタッシュケースを取りに行き合図を待つ。・・・するとやはり私の直感は的中したらしく、合図と共にアタッシュケースを持って広間に入る。・・・他に侍女にキャリーケースも用意してもらいご夫婦に渡した。
・・・ご夫婦は和彦様には目をくれず金の入ったアタッシュケースに眼が釘付けになっていた。・・・これはもう苦笑いしか浮かばなかった。和彦様もわかっていたらしく、ほんの少し寂しそうな顔を浮かべたが、すぐに立ち直りどんどんと話を進めていく。
・・・その姿は何処か辛そうで儚かった。
「・・・足利、お前は、どうする?あの人の執事はお前の父親だろ?」
・・・なんと!私を気遣いの言葉をかけてくれたっ!そして・・・執事になって初めて「お前」ではなく「足利」と、苗字で呼ばれた!
呆気にとられてると和彦様が怪訝な顔をして私の顔を覗き込んできた。
「なんだ?・・・はっきり答えられないのか?」
「・・・いえ・・・あの、父上は、もう新な雇い主を探しに行ってしまわれたの、で・・・」
「そうか。・・・で、足利はこの後どうするのだ?・・・ここに留まるか、新しい主人を見付けるか・・・どちらだ?」
「・・・和彦様がお許しになるのであれば・・・私はここに、和彦様のお側にいて、支えたいと存じ上げます。」
「・・・そうか。」
端的な返答がきたが、どこかホッと安心したような顔を浮かべていた。・・・私をそこまで頼って信頼してくれたのかと、勘違いかもしれないが今の表情でわかった事がある。
私は和彦様に頼られてる存在になれたのだと。私は光栄に思い歓喜にうち震えていた。
・・・ほかに侍女など屋敷に住む者たちには各自独断で退職願いをだすか、それともこのまま留まるか判断させた。・・・すると6割程いなくなったが4割が残ってくれた。予想以上に残ってくれた事に安堵する。
公爵家とあって土地が広い。家を維持するのには人手が必要だからだ。残ってくれた侍女たちは和彦様を幼き頃(今でも幼いが)からずっと傍にいた人たちだった。乳母である彼女も残ってくれた。もう40過ぎているので死ぬまでここで働きたいとの事だった。・・・有難い事だ。
それから、残酷な事に和彦様は学校を辞め若くして領主の勤めを果たし始めた。・・・だが優秀で英才な頭をもつ為、借金は僅か1年で完済してしまった。それから領土の事、人々の言葉を聞きまわっては改ざんして年々領土は豊かになっていった・・・
そして領土が安定した頃には和彦様が23歳になったその頃、エリート校である聖陵高等学校の理事長を勤める事になった。
・・・何故領主の仕事が忙しいのに、さらに面倒な責務を引き受けたのだろう。初めはわからなかった。・・・・・だが新入生挨拶の時に和彦様が学校へ向かわれた時にその理由がわかった。
見間違いかと思ったが和彦様の顔を見て確信した。・・・和彦様を変えてくれたあの子、そう八乙女様が新入生の中にいたのだ。小学校の頃の小さな姿からは想像できない程とても華奢でいて意思の強そうな美少年になって和彦様の前に現れたのだ。
・・・何故か出会った時にはなかった前髪の金のメッシュが気になったが、その私の反応を察したらしい和彦様から教えてもらった。・・・なんでもネイビーブルーの瞳が目立つからその為のカモフラージュらしい・・・なんじゃそれ?
呆気にとられた私の姿を見て和彦様がクスクスと笑い「私もそう思うよ」と何も言ってないのにも関わらず呟かれた。・・・見透かされたらしい。執事としてどうなのだろう?少し凹む。
・・・そして知りたくもない和彦様の夜の姿を見てしまった。
・・・どうやら絶倫らしい・・・今お相手してるのは八乙女様。なんでも禁止薬物の媚薬を飲まされたらしいのだ。エリート校恐るべし。
急に侍女たちに2日の暇をやり屋敷から追い出してしまったのは、もはや天晴れ。先読みの力凄い。・・・でも使い方おかしくないか?まぁそれは突っ込まないのが身の為だと言い聞かせ和彦様からの呼び出しを待つ。
・・・未だに八乙女様の声が廊下に響く・・・あぁ、侍女たちに暇をやったのは正解らしい。こんな・・・朝まで・・・い、いや絶倫様には至極当たり前の事なのだろうか?
日が登り辺りが明るくなった頃に呼び出され蒸しタオルや新しいシーツの交換など・・・まるで初夜を迎えたような雰囲気が漂った。それはもう・・・今まで見たことのない満足したような笑顔で「薫風を絶対この家に嫁がせるからね。」と言われた。・・・左様で。
そして和彦様と幼馴染である五十嵐様がお出でになり・・・お二人で風呂場で情事を始めてしまい・・・嫌がってる八乙女様の声を聞くと、なんとも不憫に思いましたが・・・私からしたら和彦様が幸せであれば私はそれで良いと思います。
八乙女様は和彦様と同じく優秀でいらっしゃり、容姿や性格も申し分ないお方。男性であるのが残念ではあるが、ある意味男性で良かったのかもしれない・・・あの夜の出来事を思うと、もし八乙女様が女性なら即身籠るだろうと判断できるからだ。
是非、八乙女様には風間家に嫁いでもらいたいものです・・・私は和彦様の幸せを願ってます。もちろん、あらゆる手を尽くしますが・・・八乙女様。和彦様に好かれてしまったのですから観念して和彦様を受け入れていただきますよ・・・。
興味のあるかたのみ読んでください。閑話ですので飛ばしても話は通じます。
本編は夕方あたりに更新します。この話を読むと次回更新の話をより内容がわかりやすく楽しめます。
*********
私は代々風間公爵家に仕える執事の家柄。幼い頃から主人に仕えるよう教育を受けていた。
私が6歳の頃、風間家に男児が生まれた。・・・だが喜ばしい事なのに夫婦は冷静淡白で生まれたばかりの我が子を乳母に渡してしまった。
名前は和彦様。旦那様似で髪の色は至極色で小顔で可愛らしい。そして奥様似の灰色の瞳、そしてくっきりとした二重。・・・将来、誰もが振り向く絶世の美男子になるだろうと思った。
私は旦那様に仕えている自分の父上に直談判して和彦様の専属執事になった。
とても大人しい子であまり泣かず起きてる時は赤ちゃん用の玩具で遊んだりして大人を困らせる事が少なかった。
和彦様が3歳になり幼稚園へ通い、ある日幼稚園側から連絡が寄せられた。なんでも喧嘩をしたらしい。そしてそのうちの一人が大怪我をしたらしく苦情を言ってきたらしいのだ。
・・・そして和彦様が帰ってくるや否や旦那様が和彦様に大声で罵声を浴びせ暴力を振るった。それをみた乳母や侍女が慌てて和彦様を、庇う。もちろん私は和彦様を懐へ抱き締めこれ以上手を挙げられないように動いた。
・・・それをきっかけに和彦様から笑顔はなくなった。心を閉ざしてしまったのだ。ずっと親に誉めてもらいたくて習い事を頑張っていたのに・・・
私は痛々しく思いながらずっと和彦様を側で守ると心に決めた。
小学校に入る頃には立派な公爵令息となっていた。優秀で大人にも劣らない知識を身に付けどんな事も吸収していった。
そしてまだ小学生というのに色気を漂わせていた。そのせいか侍女たちが何かと言い訳をしては和彦様に色目を使うようになってしまった・・・そのせいで和彦様は人間不振になり更に心を閉ざしてしまった。
ところがある日、和彦様が11歳になり小学6年生になった頃、和彦様に異変が起きた。いつも笑顔の鉄仮面を被ってる和彦様が、どこか楽しそうに笑っていたのだ。・・・思わず主人に質問をしてしまった。
「和彦様、とても・・・ご機嫌麗しゅうございますね。」
「あぁ・・・学校の新入生に気になる奴がいるんだ。」
「左様で御座いますか。失礼しました。」
「いや、いい。・・・そんなに私は顔にでていたかい?」
「僭越ながら・・・はい。とても機嫌の良い感じに受け取りました。」
「そう、か・・・お前がそういうならそうなんだろうな。」
なんの咎めもなく質問に答えてくれた。・・・いつもは必要事項のみの会話しかしなく、こう・・・世間話のような、今日の様に口調を崩して話すのは、あの心を閉ざしたあの日以来だ。
それからも学校に帰ってきては私に今日の出来事を話すようになった。・・・これは良い傾向だ。少しずつ歩み寄っていければこのまま・・・
和彦様はその「気になる奴」にご執心になっていった。夏休みにはその子の家にまで押し掛け拉致同然の行為をして別荘へと連れてってしまった。パジャマのまま・・・
初めて出会う和彦様のお気に入りは八乙女薫風というらしい。・・・確かに中性で整った顔立ちだ。そして何より驚いたのが瞳の色だった。
ネイビーブルー。初めて見た色だった。素直に綺麗な瞳だと思った。・・・そして執事の私に対しても傲った態度は見せず控え目で何をするのにも「有難うございます」とお礼を述べてくるのだ。・・・和彦様が気に入るのがわかった気がした。良い子だった。
それから和彦様はとても楽しそうに学校へ行っては八乙女様の話をする。・・・少ししつこいのではないかと心の中で思ったが和彦様が楽しそうなので話に相槌をうつ。・・・八乙女様には感謝しなくてはならないな。
・・・だが、そんな時に予想だにしなかった出来事が起こった。
「・・・風間家は没落する。荷をまとめよ。新な雇い主を見つけ取り入らなければならない。」
予想だにしない事を言われ言葉が理解できず唖然としてしまった・・・風間家が・・・没落・・・?
では、和彦様は・・・・・?
親の制止を抜けて急いで和彦様の元へ。・・・するとたった今、和彦様が学校から帰って来た所に出くわした。すると鉄仮面ではなく優しい微笑みを私に向け近付いてきた。・・・まだ没落する話を聞かされてないのだな。
だが直ぐに異変に気付く。・・・ご夫婦が珍しく広間にいたのだ。すぐに和彦様を呼び私は扉の前で待機を命じられた。
執事の訓練で小さな音でも聞き取れるよう神経を鋭くする訓練を受けていたので中の声を盗み聞きする。・・・やはり没落するという話だった。
ご夫婦はこの家を手放し借金を支払うと言っていた。・・・やはり父上の言うとおり別の主人の元へ行くしかないのだろうか・・・そう思ってた矢先、とんでもない事を和彦様から発せられた。
「荷物をまとめるのは貴方たちだけです。」
凛とした声が聞こえた。驚きながら耳を澄ませた。・・・なんとまだ幼い成人もしていない和彦様が公爵家を継ぐとご夫婦に言い放ったのだ。しかも旦那様を「お父様」ではなく「貴方」呼ばわりしたのだ。・・・耳を疑いたくなる程、和彦様は淡々と話を進めていく。
・・・少し前に「もしもの為に貯めている金がある」と言っていた事を思い出した。・・・話からしてご夫婦を別宅に追いやるつもりらしい。
・・・ご指示は無かったが直感を信じアタッシュケースを取りに行き合図を待つ。・・・するとやはり私の直感は的中したらしく、合図と共にアタッシュケースを持って広間に入る。・・・他に侍女にキャリーケースも用意してもらいご夫婦に渡した。
・・・ご夫婦は和彦様には目をくれず金の入ったアタッシュケースに眼が釘付けになっていた。・・・これはもう苦笑いしか浮かばなかった。和彦様もわかっていたらしく、ほんの少し寂しそうな顔を浮かべたが、すぐに立ち直りどんどんと話を進めていく。
・・・その姿は何処か辛そうで儚かった。
「・・・足利、お前は、どうする?あの人の執事はお前の父親だろ?」
・・・なんと!私を気遣いの言葉をかけてくれたっ!そして・・・執事になって初めて「お前」ではなく「足利」と、苗字で呼ばれた!
呆気にとられてると和彦様が怪訝な顔をして私の顔を覗き込んできた。
「なんだ?・・・はっきり答えられないのか?」
「・・・いえ・・・あの、父上は、もう新な雇い主を探しに行ってしまわれたの、で・・・」
「そうか。・・・で、足利はこの後どうするのだ?・・・ここに留まるか、新しい主人を見付けるか・・・どちらだ?」
「・・・和彦様がお許しになるのであれば・・・私はここに、和彦様のお側にいて、支えたいと存じ上げます。」
「・・・そうか。」
端的な返答がきたが、どこかホッと安心したような顔を浮かべていた。・・・私をそこまで頼って信頼してくれたのかと、勘違いかもしれないが今の表情でわかった事がある。
私は和彦様に頼られてる存在になれたのだと。私は光栄に思い歓喜にうち震えていた。
・・・ほかに侍女など屋敷に住む者たちには各自独断で退職願いをだすか、それともこのまま留まるか判断させた。・・・すると6割程いなくなったが4割が残ってくれた。予想以上に残ってくれた事に安堵する。
公爵家とあって土地が広い。家を維持するのには人手が必要だからだ。残ってくれた侍女たちは和彦様を幼き頃(今でも幼いが)からずっと傍にいた人たちだった。乳母である彼女も残ってくれた。もう40過ぎているので死ぬまでここで働きたいとの事だった。・・・有難い事だ。
それから、残酷な事に和彦様は学校を辞め若くして領主の勤めを果たし始めた。・・・だが優秀で英才な頭をもつ為、借金は僅か1年で完済してしまった。それから領土の事、人々の言葉を聞きまわっては改ざんして年々領土は豊かになっていった・・・
そして領土が安定した頃には和彦様が23歳になったその頃、エリート校である聖陵高等学校の理事長を勤める事になった。
・・・何故領主の仕事が忙しいのに、さらに面倒な責務を引き受けたのだろう。初めはわからなかった。・・・・・だが新入生挨拶の時に和彦様が学校へ向かわれた時にその理由がわかった。
見間違いかと思ったが和彦様の顔を見て確信した。・・・和彦様を変えてくれたあの子、そう八乙女様が新入生の中にいたのだ。小学校の頃の小さな姿からは想像できない程とても華奢でいて意思の強そうな美少年になって和彦様の前に現れたのだ。
・・・何故か出会った時にはなかった前髪の金のメッシュが気になったが、その私の反応を察したらしい和彦様から教えてもらった。・・・なんでもネイビーブルーの瞳が目立つからその為のカモフラージュらしい・・・なんじゃそれ?
呆気にとられた私の姿を見て和彦様がクスクスと笑い「私もそう思うよ」と何も言ってないのにも関わらず呟かれた。・・・見透かされたらしい。執事としてどうなのだろう?少し凹む。
・・・そして知りたくもない和彦様の夜の姿を見てしまった。
・・・どうやら絶倫らしい・・・今お相手してるのは八乙女様。なんでも禁止薬物の媚薬を飲まされたらしいのだ。エリート校恐るべし。
急に侍女たちに2日の暇をやり屋敷から追い出してしまったのは、もはや天晴れ。先読みの力凄い。・・・でも使い方おかしくないか?まぁそれは突っ込まないのが身の為だと言い聞かせ和彦様からの呼び出しを待つ。
・・・未だに八乙女様の声が廊下に響く・・・あぁ、侍女たちに暇をやったのは正解らしい。こんな・・・朝まで・・・い、いや絶倫様には至極当たり前の事なのだろうか?
日が登り辺りが明るくなった頃に呼び出され蒸しタオルや新しいシーツの交換など・・・まるで初夜を迎えたような雰囲気が漂った。それはもう・・・今まで見たことのない満足したような笑顔で「薫風を絶対この家に嫁がせるからね。」と言われた。・・・左様で。
そして和彦様と幼馴染である五十嵐様がお出でになり・・・お二人で風呂場で情事を始めてしまい・・・嫌がってる八乙女様の声を聞くと、なんとも不憫に思いましたが・・・私からしたら和彦様が幸せであれば私はそれで良いと思います。
八乙女様は和彦様と同じく優秀でいらっしゃり、容姿や性格も申し分ないお方。男性であるのが残念ではあるが、ある意味男性で良かったのかもしれない・・・あの夜の出来事を思うと、もし八乙女様が女性なら即身籠るだろうと判断できるからだ。
是非、八乙女様には風間家に嫁いでもらいたいものです・・・私は和彦様の幸せを願ってます。もちろん、あらゆる手を尽くしますが・・・八乙女様。和彦様に好かれてしまったのですから観念して和彦様を受け入れていただきますよ・・・。
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