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高年期[二学期・後編]
体育祭③二人三脚
しおりを挟む柳瀬先輩は本当に足が早く器用で見事1位を取っていた。チラッと、ほんとチラッと柳瀬先輩の方に目を向けたらバッチリ目が合いニッコリ笑い手を降られた。・・・うん、人懐っこい人だよね。手を降られた返事に僕はニコリと微笑み頷いて返した。
そして前の障害物へと視線を向け集中する。
第1障害 平均台/第2障害 ネット潜り/第3障害 ハードル/第4障害 フラフープ30回/第5障害 パターゴルフ・・・以上。頑張るよー!
・・・結果。残念、2位でした。パターゴルフで2回失敗して時間をロスしてしまったんだよね。いやぁ~1回外した時は焦っちゃったよ・・・まぁ初めてやったからね、感覚が掴めなかったんだよね。
・・・ハイ、言い訳です。1位は、なんと子鷹狩くんでした。今の所、黒組が一位なんだよね・・・悔しい。
「八乙女・・・お前ゴルフは初めてか?」
「子鷹狩先輩・・・はい、上手くできませんでした。最後の最後で越されてしまいましたね。」
「ああ、運が良かった。八乙女は運動神経はいいほうだと聞いていたからな。」
「・・・」
はぁ・・・未だに子鷹狩くんが「薫風」じゃなく「八乙女」って呼ばれるのに慣れない・・・だって小学校、いや幼稚園の頃から名前呼びだったから・・・う~ん、少し寂しいかな。
そして運動神経が良い方だって言われたのは心外だなぁ・・・はぁ、これも補正がかかってるのかな。・・・良い方じゃなく良いんですよ、実際は。
「子鷹狩先輩、少し聞いてもいいですか?」
「・・・なんだ?」
「・・・何故、昔の様に名前で呼ばなくなったんですか?」
「は?」
え?何故そんな呆気にとられてるんですか?もしかして幼い頃の記憶もリセットされてる?
「・・・」
「え、子鷹狩先輩?・・・あの、同じ幼稚園、小学校へと通ってましたよね?」
「・・・」
「いつも僕は学年で成績首位をとって学年長になって、子鷹狩先輩は流依兄さんと競ってどちらかが学年長になってましたよね?・・・覚えてませんか?」
「・・・あ、ああ、なんだか、頭に靄がかかってるようだ。俺は・・・八乙女を名前で呼んでたのか?そんな馬鹿な事があるか・・・」
「・・・そ、うですか・・・残念です。すみません変な質問をしてしまったようで・・・忘れてください。」
「あ、おい・・・」
キリの良い所で障害物レースの得点が付いたらしく解散となった・・・子鷹狩くんに呼び掛けられた気がしたが自分でもわかる位、顔が歪んでたからもうその場からいなくなりたかったから無視した。
次は二人三脚~・・・あぁ~もう疲れた。前半にレース物詰めすぎ!もう休みたい。
「姫ぇ~!・・・って、大丈夫?」
「神泉先輩・・・はい、大丈夫です。ちょっと水分を」
「ゆっくりね!俺たちの出番は中盤だから!」
「はい・・・あ、でも少し練習しましょう。」
「大丈夫?休める時に休んだ方が・・・」
「いえいえ、これやれば後は暫く休めますので。」
「そっか~・・・じゃあもう少し休んで、やろっかー!」
「はい。」
水筒で水分補給して自分たちの番になるまで練習する事になった。
「・・・あの、神泉先輩に聞きたい事があるのですが。」
「ん~どうしたの?」
「・・・柳瀬先輩ってどんな人ですか?」
「ん~そうだな・・・まぁ、親衛隊にいても害にはならない奴、かな。柳瀬がどうしたの?まさか!柳瀬が姫に粗相な事を!?」
「い、いえ!・・・さっきの障害物レースで前に並んでて、少し話をしたんです。・・・なんというか、先輩なのに失礼ながら人懐っこい人だけど信用できない人だなって思ったので・・・」
「さっすが姫だね!・・・うん、害にはならないだろうが、信用はできないやつだよ。・・・だって、姫の悪い噂・・・あいつが率先して流したからね。」
「は?」
「あいつ興味を引かれた物にトコトン執着する奴でね、薫風の前は風間理事長の背中を追いかけていたんだよ。・・・実は柳瀬はほんと最近入った親衛隊なんだ。」
「・・・そうだったんですね。でも、なんかさっき話をして目をつけられた気がするのですが・・・」
「まぁ好きにさせると良いよー。さっきも言ったけど害にはならない奴だから。」
「・・・あの、何か引っかかる言い方しますね?」
「まぁ~・・・あいつも初めはね、薫風の親衛隊にちょっかい出してきたんだよ?」
「はぁ?」
「でもね、姫なら絶対仕返しなんて望まないと思ったから避ける程度に留めたんだよ。・・・ネコは無理だったけどね。」
「それ、本人が濁して言ってました。僕の親衛隊は怪我してない・・・とか。」
「うん、それ本音。ネコは少しでも姫の悪口をした奴らに鳩尾やら脇腹やら悪口言った分だけ入れてたからね・・・顔とかじゃない辺り冷静だったなって思うよ。」
「えっ、ネコ先輩、強いんですか?」
「強いよ~?中学なんて『赤毛の狂猫』なんて2つ名があったし。あ、ネコは中学はこんな貴族学校じゃなくて平民も通う普通学校行ってたんだよー。なんでも仲良い友達がいるからだとか。」
うわぁ~2つ名とか!ヤンキーですか?ってか仲良い友達って十中八九ヤンキーですよね?うわぁ~・・・
「詳しくはわからないけど友達がやりたい事があるとかで引っ越しちゃったらしい。それで親の勧めでこの学校にきたらしいよ~。」
「ふわぁ~ネコ先輩、凄くおっとりしてるから、そんなヤンキーな姿が思いつきません。」
「ははは!それは俺もだよ~。まぁ姫の親衛隊を作ったのが切っ掛けで知り合ったから姫のお陰かな?親衛隊の奴らは皆良い奴だよ!」
「・・・柳瀬先輩の話したばかりじゃないですか。」
「過去は過去だよ~!何かあったら、その時は姫に届く前に処理するから安心してぇ~!」
「しょ、処理って・・・物騒ですね。」
「でもね~柳瀬は洞察力が、多分この学校で一番優れてると思うよ。だから何か気になった事があったら柳瀬を頼ると良いよ。ただ何か対価を求められる可能性があるから・・・うぅ、クッキーとか供物を、持っていくといいよ・・・」
「・・・何故そこで声がどもるんですか?」
「え~だってさぁ~・・・俺、隊長だよ?まずは俺に頼ってほしいわけ。でも情報とかは柳瀬の方が優れてるからさぁ・・・」
「ふふ・・・そうですか。ではまずは何かあった時は神泉先輩を頼り、のちに柳瀬先輩を頼ります。神泉先輩の方が断然信用できますから。」
「ひ、姫ぇ~!ほんっっっと良い子だねぇ~!」
「わわっ!?ちょ、足結んでるんですから寄りかかられると倒れちゃいますよっ!」
「ごめんねぇ~!はぁ、ほんと、姫は天使・・・最高。」
なにかボソリと呟いてたようだが、うん、ろくでもない事だろうからスルーで良いだろう。さて・・・出番がくるから列に並びましょうか。
「位置について・・・よーい・・・どん!」
合図と共に互いに方に腕を回している腕に力がこもる。目指すは一位!・・・ん?
「1、2、1、2、1、2、1、2・・・ん?」
「姫、気付いた?俺たち、余裕みたいだ。」
「1、2、1・・・なん、か、拍子抜けです、ね・・・」
「まぁ、俺たち程真剣に練習してた奴はいないからね。」
「えっ!?」
「俺は~姫と~一緒に居たかったから二人三脚ずっと練習してたよ~!もう最高の一時でした。」
「・・・」
な、なんだろうこの残念な感じは・・・あ、もちろん一位とりましたー!てか二位との差がありすぎて本当に拍子抜けです。・・・もっと気合いいれよーよー・・・
あ、陽南さんも友達(もちろん女性)と一緒に二人三脚やって一位とってました。おー大分点数稼いだんじゃない?一位の列に紫色のハチマキしてる人たくさんいたし。
よしよし、このまま行けば一位は目じゃないぜぇ~!
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