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高年期[二学期・後編]
鬼龍院さんと蛭間さん。変わらずなんね。
しおりを挟む翌日。
「に、兄さん・・・あの、クッキー作ったんだけど、食べてくれる?」
「薫風が作ったの?・・・薫風が料理するなんて・・・」
「な、何度か作った事はあるんだよ。味は保証できるよ。味はプレーンとジンジャーだよ。丸いのがプレーン、人形型のがジンジャーだよ。」
「この人形型のは・・・うん、なんとも可愛らしいな。・・・いただくよ。」
「!あ、有難う!」
朝早く起きて料理長に場所を作ってもらいクッキーを焼いた。・・・ちょうど熱が冷め袋に詰めていたところに流依兄さんが現れた。
・・・あの保健室以来、なんか顔合わせが気まずくて会っても会釈のみだったから久々に話した気分になった。
だってさ、リセット後に流依兄さん凄く冷たくなったから戸惑いもあり話しかけずらかったんだよね・・・両親もその雰囲気にオロオロしていたけど、まぁ僕が積極的に話しかけるしかないよね。
ついで、今日からは教室で昼食を取る事になったから弁当は兄さんと合わせて2つ。・・・もう重箱ではないんだよね。教室で食べてても兄さんは自室で食べてるみたいだし。・・・あー凄く寂しい!
あとは・・・今は何人、親衛隊がいるのかわからないから、確実な3人の分を小袋に詰めて、あとは大袋に作ったものを詰め込んだ。小袋も何枚か持って行きます。後に隊長の神泉先輩に任せれば大丈夫だろうから・・・ってか任せちゃいます。
兄さんと無言で車に乗り学校へ行く。そして園庭へ行くと庭師さんと愛翔さんがいた。
「おはようございます。」
「おはよう薫風。」
「ああ、おはよう。」
「薫風、風間理事長とは話はちゃんと着いたのかい?」
「はい。別れる事ができました。・・・愛翔さん、ごめんね僕に付き合わせて・・・」
「大丈夫だよ。」
昨日家に帰り早速あの出来事を手紙に書き速達で届けた。・・・そして愛翔さんとの婚約は保留となっている。
だってさぁ~急に恋人という期間もなく婚約しちゃうなんて・・・なんだか元妹として禁断の恋をするような感じがしてさぁ~。よく少女マンガで禁断愛の物語があるじゃん?そんな感じで罪悪感というか後ろめたさがあってね・・・とりあえず手紙に話の内容と婚約を保留にしたいという意向を書いたんだよね。
愛翔さんは気を悪くする事なく僕の我儘を聞いてくれた。も~愛翔さん優しすぎる!やはり僕には勿体ない人だな。
「あ、愛翔さん、クッキー作ったから食べて。あとで神泉先輩の所にも持っていくつもりなんだけど先に愛翔さんに渡しとくね。」
「久々のクッキーだね。ジンジャーが好きだから嬉しいよ。休憩がてらに食べるよ。」
「・・・なんだ、八乙女は料理が出来たのか?」
「あ、もし良ければ鬼龍院さんもどうぞ。」
「いいのか?・・・有り難く貰う。・・・まだ朝礼まで時間があるだろう、紅茶でも飲むか?」
「いただきます!ジャスミンありますか?」
「ある。準備してくるからベンチで待ってろ。」
そそくさ庭師さんがバラ園へと姿を消した。あ。なんかご機嫌なオーラが?あれ?庭師さんもクッキー好きだったっけ?
「ふふ・・・鬼龍院さん、ああ見えて甘党らしいよ。前に蛭間さんが言っていたよ。」
「人は見かけによらないって事だねぇ~。ギャップ萌え?」
「そうだね。それを知った人は鬼龍院さんの警戒を解きそうだ。」
他愛のない話をしながらベンチに座る。
・・・するとバラ園から「だぁぁーーーー!」という悲鳴?のようなものが聞こえてきた。・・・なんか聞き覚えのある声がし気がする?
・・・それから右手に紅茶を乗せたタライを持ち左手に首根っこを掴まれて涙目になってる蛭間さんが引きずられながらぶら下がっていた。・・・何事?
「痛ぃわぁ~鬼龍院さん!たかがクッキー1つ貰っただけでそな怒らんでぇな~」
「・・・これは八乙女の手作りだ。量も少ないのに摘まみ食いされたんだ。怒らない奴はいないと思うが?」
「えっ薫風が作ったの?この丸いクッキー美味しかったわぁ~。なぁ、俺のとかないん?」
「え、あ・・・えっと、少しなら・・・」
「流石薫風やな!あんがとなぁ~!」
「・・・おい八乙女、あまり蛭間を甘やかすな。」
「えぇやないですか~!ちゃっかり鬼龍院さんは貰ってるやないですか!あ、鬼龍院さんの分けてくれるんやったら薫風から集ったりせぇへんわ!」
「・・・なんの冗談だ?俺が何故お前にやらなくてはならない。」
・・・うん、リセットされてても仲良しなのは仲良しらしいね。ただ恋人でないだけで。
「ところで蛭間さん、どうしてここに?」
「休憩や!ちょっとバラ園に居たら鬼龍院さんが裏の方へ機嫌良く消えてったもんで後付いていったんや。そしたら袋の中にクッキーを発見してなぁ~。朝食食べ損ねてたから貰ったんや!」
「・・・俺はあげた覚えはない。」
「まぁまぁ細かい所はええやないですかぁ~!・・・んで盗み食いがバレて拳骨貰ったんや。」
「ああ・・・それであの悲鳴ですか。あ、はいどうぞ蛭間さん。プレーンの味が好みのようでしたので多めに入れました。」
「わ~い!早速いただくわっ!」
あ~・・・袋に詰めた意味が無かった。渡した途端、クッキーを鷲掴みして口に頬張ってるよこの人。まぁ、大胆な食べっぷりは僕は好きなので文句を言わず見てます。・・・うん、美味しそうに食べてもらえて嬉しいよ。
それから鬼龍院さんもチョコクッキーを1つ摘まんで一口で食べた。・・・一瞬固まったように見えたけど、すぐ無言で咀嚼して食べていた。・・・反応薄っ!あれ?口に合わなかったのかな?
「薫風~美味しいわぁ~!もっと食べたい~!」
「本当ですか?ではまた今度作ってきます。これは本来違う人に作った物なので・・・これ以上は申し訳ない。」
「ええよ!むしろすまんね。分けてもらって。今度何かお礼するわぁ!・・・それに鬼龍院さんもご満悦見たいやし。」
「え?」
わっかんないよ!思わず庭師さんを凝視しちゃったよ!・・・そしたら真顔で見返された。うぅぅ、もう少し表情筋鍛えてよ・・・でも流石だね、蛭間さんは庭師さんの事よくわかってるね。
庭師さんにも後にお礼をすると言われたけど、よくお茶をご馳走してもらってるから遊びに来たときにお茶をご馳走してほしいと言ったら苦笑いされて了承してくれた。園庭の隅に茶畑もあるので新鮮なのが飲めるのは僕にとって有り難いのだ!めちゃ美味しいし!
・・・というわけで、朝礼が始まり授業が始まり・・・あっと言う間に昼休み。
「神泉先輩いますか?」
「噂の八乙女弟だ。・・・神泉ぃ、お前の姫さんが呼んでるよ~!」
「!?」
え?何、噂って・・・?
_________
「・・・ってなわけだよ姫。姫の耳にピアスが無いから噂は本当だって更に広まってねぇ~。」
「そうなんですか・・・」
どーりで朝からチラチラとすれ違う人達に見られていたのか。しかも右側に、ね。
始めに風間くんが風間くんの親衛隊?に僕の悪い噂を流すように伝えた所、噂に尾ひれがついて悪い噂が最悪な噂になり生徒の中には雌猫だの魔性だの性悪だのと散々な言われようだったのが・・・あ、ちなみに風間くんが親衛隊に伝えたのは「薫風は自分専用の体だ」だったらしく、気に入らなかった親衛隊が悪評を付け加え最悪な噂が流れてしまったらしい。
脱線した。・・・その噂が今日の朝には「全て偽り。一時的な恋人契約で今は別れた」と噂が流れて、真相を知りたい人は僕の姿を見つけては右耳に付けてたピアスを確認していた、と。・・・ふーん。
「始め変な噂を聞いて耳を疑ったよ~。何故みんな姫の悪口を言うんだろ~って。でもやっと噂が嘘だって皆に伝わったらしくて、まぁ複雑だけど安心したよ~。」
「そうなんですね・・・あの、神泉先輩に聞きたい事があるんですが・・・」
「な~に~?」
「・・・僕のせいで誰かに嫌がらせとかされたりしませんでしたか?」
「・・・」
「されたんですね・・・」
「う~ん・・・嫌がらせ?嫌がらせになるのかわからないけど、されたのかと言われたら「された」と答えざるをえないかな。」
「・・・そうですか。・・・あ、それと、クッキーを」
「クッキー!?うわぁい!姫の手作りクッキー!」
「!?」
急に大はしゃぎした神泉さんに面食らい呆然としてしまった。
あ、あの・・・もう少し話をしたいのですが・・・?
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