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高年期[二学期・後編]
閑話休題…主人の異変
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~こちらは風間家の執事・足利目線です~
前回の風間が薫風を無理矢理~の続きとなっておりますが、飛ばしても話が通じるよう調節します!
ただ本編でも良いんじゃないかと思えるような内容も混ざってる為、読んで頂けると嬉しいです。
・・・長文です。
***********
いつもの日常、いつも通りに行動していたある日、私の主・和彦様に異変が起きた。
「あの・・・和彦様?どこか、体調が悪いのでは・・・」
「?可笑しな事を言うね足利。・・・特に体調は問題ないが?」
「そ、そうですか。・・・失礼いたしました。」
「別に構わない。ここ最近では五十嵐がスケジュールを極端に詰めていたからな。なぜあんな丸一日休みにしたのか理解できない。」
「・・・」
何故そんな事を言ったのか、その時は理解ができず、ただ聞き流す事しかできなかった。
先日の休みに和彦様の恋人である薫風様と、それはそれはとても濃密な時間を過ごしたはず。
・・・それなのに今は、まるであの頃に戻ったような冷たさを感じる程、態度が変わってしまった。・・・一体我が主の身に何があったのだろう・・・?
「こ、れは・・・」
「何を驚いてる?前からあったではないか。それにこの契約書を記入する時はお前も一緒に居たではないか。」
「・・・」
一枚の用紙の内容を読んで絶句した。・・・そこに書かれていたのは和彦様と薫風様の恋人契約書だった。
互いの要望が書かれており最後の下段に2人の直筆のサインが書かれていた。紛れもなく本物の契約書だ。・・・だが内容が酷い。これは、そう例えるなら性奴隷の様な内容だった。破棄するには互いに婚約者ができるまで。・・・薫風様は本当にこれにサインをしてしまったのだろうか?
それから和彦様の異変は他にもあった。あの頃、そう、和彦様が旦那様に代わり領主になった頃のような感じに戻ってしまわれた、そんな感じがします。
・・・?
・・・いや、領主はまだ変わって・・・?今は旦那様は別宅で暫しの休暇をとってるだけ・・・?和彦様はその代理?・・・?
何かがおかしい・・・なんだ?私は今まで何をしていた?和彦様の側で仕事を手伝っているのは変わらない。だが和彦様の立場と和彦様の両親との成り染めが・・・
??
「何をしている足利?」
「あ・・・い、いえ、少し考え事を・・・」
「?なんなのだ・・・仕事はまだまだ残っている。全く・・・周りの推薦で理事長にはなったが・・・こんなにも面倒なものだとは思いもよらなかったよ。」
「えっ!?」
「?なんだ?」
「あ、いえ・・・」
「・・・今日のお前は何だか変だな。働きすぎか?」
「・・・大丈夫です。申し訳ございません。」
やはりおかしい・・・あの聖陵学校の理事長には周りを脅して自分から進んで理事長になったはず・・・。薫風様に会う為に。
・・・それなのに周りに進められたから無理矢理理事長になった?それにこの薫風様との契約書・・・こんなの有り得ない!2人は前の休みの日に両思いになって晴れて2人は本当の恋人になったのですから!
_________
『足利ぁ~私は遂に、遂にっ!薫風を恋人にする事ができたよ!』
『!それは真ですか?』
『ああ!昨日、薫風が、あの素直になれない可愛らしい薫風がっ!私の腕の中で「好きです」と言ってくれたのだ!それも一度でなく何度もだ!聞き間違いではない事実!あ~私は本当に幸せを手に入れたのだ!』
『・・・それは、おめでとうございます。』
『なんだその素っ気ない態度は!しかもだぞ?薫風が卒業した暁には、ここに嫁いでくる事も承諾したんだぞ!』
『!それは吉報ですね。これでようやく和彦様が落ち着いて仕事に集中できますね。』
『吉報だろう?ふふ・・・はぁ~待ち遠しい。あと2年と少し・・・それまでに問題となってる物をすぐ片付けて薫風が不安になるような要素を無くさねばな。』
『そうですね。のちに養子の事も考えねばなりませんね。未来の為に色々と準備させて頂きます。』
『・・・足利は反対しないのか?』
『はい?・・・ああ、薫風様が嫁いでくる事に、ですか?・・・問題ありません、むしろ大歓迎です。薫風様程、和彦様を支える方はいないと思います。身分は一つ下ですが八乙女家の次男というだけで充分信頼のおける方ですから。・・・それに幼い頃から知っておりますから。』
『・・・薫風は私のだぞ?』
『存じ上げております。薫風様は好いてますが恋愛要素はありませんので、ご安心ください。』
『そうか・・・足利に認められてるなら問題ないだろう。』
『ええ、余所の執事にも、それはそれは大好評でして・・・とある侯爵家の執事いわく薫風様に是非とも我が家に嫁いで』
『なんだと!?どこの家だっ!?』
『他にも────』
──────────
このやり取りをしたのは昨日。あんなに幸せそうにノロケ話を語っていたのに・・・今日のこの態度はなんなのだ?
不安・・・不安しか頭を過らない・・・どうしてしまったのだうちの主は・・・?
「・・・和彦様、失礼ですが旦那様は何処へ?」
「ん?父さんか・・・今は別宅で休暇中だ。もうすぐ帰ってくるだろう。私が事業を黒字にしたからな・・・親の尻拭いもこれが最後にしてほしいものだね。・・・なぁ?そう思うだろう?」
「・・・」
「11歳の子供を置いて自分達は別宅に引きこもり失敗した事業から他の領地の事はほったらかし。・・・今この公爵家が維持できてるのは私のお陰でもあるのに・・・ふん、都合の良い時だけ私を頼るのだから・・・うんざりだ。」
「・・・」
今日は何度私を驚かせてくれるのだろうか・・・?
別宅に追いやったのではなく逃げた。そしてもうすぐ帰ってくる・・・帰ってくる?何故?和彦様がもしもの時の為に貯めていた大金を持たせて縁を切ったのではなく?
私はどうしてしまったのだろう・・・まるで和彦様が別人に思える。私は誰と話しているのだ・・・?
_________
五十嵐様に会った。五十嵐様は変わらず和彦様の支援をしている。・・・だが、少し違和感を感じる。五十嵐様が和彦様に少し遠慮してるような態度を取っているのだ。
気になり少し話を聞いてみる事にした。
「あの、五十嵐様・・・」
「っ、・・・あ、ああ、足利か。何か用か?」
「あの・・・和彦様に、何か異変はありませんか?」
「!足利、お前・・・そうか、お前は薫風が前世の記憶持ちだと知っている唯一だったな。」
「えっ?」
「詳しく話したいが何分、俺もまだ頭の整理が付かない状況で説明の仕様がない・・・だが、薫風は変わらない。変わったのは・・・風間たちだ。記憶喪失の様な、少し話が噛み合わないだろうが・・・そこは相槌を打って誤魔化すんだ。」
「・・・承知、しました。」
「後に薫風が風間と接触するだろう。あの契約書・・・読んだ時、反吐が出る思いがした。・・・辛いだろうな薫風。すまないな足利、薫風を支えてやってくれ。風間はきっと無茶をするだろうから。」
「誠心誠意、薫風様を支えます。」
「よろしく頼む。」
・・・五十嵐様は変わらない様子ですね。少し安堵しました。それにしても気になる事を、「記憶喪失」?何故その様な事に・・・しかもそれは和彦様だけではない様な言い回しでしたね・・・風間たち、と言ってましたね。
ここは、五十嵐様の言うとおり話に相槌を打って様子見としましょうか・・・
_________
なんて事だ・・・薫風様は直談判をし、契約書をその場で破ってしまった。でも、まぁ仕方ないかと思います。あの契約書は、五十嵐様の言うとおり反吐が出る程、気分の良い物ではありませんでしたからね。
契約書を破り踵を返して出ていこうとこちらに向かってきました。そして謝罪をしてきました。・・・なんとも複雑、でも薫風様が苦しむのであれば致し方ない事。だが・・・
和彦様は薫風様を担いで寝室へと連れ出してしまった・・・私は、薫風様を守った方が良かったのでしょうか・・・いや、私は和彦様の執事。・・・今は、和彦様には薫風様が必要・・・そう、これは和彦様の為に、薫風様を犠牲にする他ない事・・・仕方ない、こと・・・
・・・
太陽が昇り、辺りが朝日に照らされ輝きだした頃に、和彦様の部屋からベルの音が聞こえた。
急いで部屋へ赴きノックをし返事が帰って来たので中へと入る。
・・・いつもの事ながら、この光景は凄まじかった。だが今回は薫風様が悲惨な状態だった。
艶のある綺麗な黒髪は乱れ、未だに落ち着かないのか少し荒い息を吐き、身体の至るところに噛み跡があり血が滲んでいた。
「・・・シーツの交換。そしてこいつを洗ってやってくれ。」
「・・・承知しました。」
今まで、一度たりとも事後処理はシーツのみで薫風様の身体の手入れは和彦様がやっていたのに・・・ここまでお変わりになるなんて、一体何があったのでしょうか。
シーツに薫風様をくるみ私達従者が使う風呂場へと行く。・・・予めお湯を張っといて良かった。
まだ意識があるのか終始無言だったがお湯をかけると痛むのか身を捩り、苦し気に唸る声がもれた。
自分のスーツが濡れるのを構わずに風呂場で胡座をかき薫風様を脚に座らせ身を預けるよう包み込む。そして、大変恐縮ですが・・・体調を崩さない為にも事後処理を始めた。
・・・そして素早く風呂場から上がり水気を拭き取ってると薫風様から声をかけられ和彦様に会いたくないと申し出てきた。薫風様の今の心境を察し私の部屋を進めた。私の部屋は和彦様でさえ鍵を持っておらず私しか入れない部屋なので安心して休めるだろうと配慮した結論だった。・・・薫風様は申し訳なさそうに、でも疲労困憊だったのだろう、頷いて私に身を預けてきました。・・・なんともお痛わしい姿。
五十嵐様の言うとおり、これは私が薫風様を支えなければなりません。和彦様には・・・契約書も破棄したのですし一歩も薫風様に近付けさせないようお守りしよう。・・・そう決意しました。
_________
「これはもう済んだ。・・・ああ、それはまだ交渉中だ。・・・こちらは足利に任せる。」
「ではこちらの新津様の件は私が対応致しますが、こちらはどうしましょうか。」
「ああ、これはここと、あとこの書類を・・・ああ、これなんだが畠山の所が受け持つそうだ。まだ書類の整理は済んでない。」
薫風様の手当てを済ませバスローブを着せて横に寝かせて廊下へと出て鍵を締める。・・・すると丁度和彦様が書類を持って現れた。・・・珍しい、自分からこちらにやってくるなんて。
廊下で仕事の話を始めた。・・・これは直ぐに確認しなくても良い書類のはずなのですが・・・?
「わかりました。・・・では。」
「ああ。・・・ところで薫風は?何故お前の部屋に運んだ?」
「薫風様のご希望です。今は・・・和彦様にお会いしたくないとの事。私の部屋なら私の許可なく入ることが出来ないと説明したら二つ返事で私の部屋で寝る、と。」
「・・・何故?何故だ!あいつは私のものだ!」
「落ち着いてくださいませ。薫風様は今は安静に───」
ドタンッ!
っ!!部屋で薫風様に何かがあったのでしょうか?今の音、何かが倒れた音ですね。
急いで鍵を開けドアを開ける。すると薫風様が仰向けになって床に倒れていた。急いで駆け寄ると私の肩を掴み後ろへと引かれ和彦様が前にでて薫風様に駆け寄って行きました。私も急いで薫風様に駆け寄る。
和彦様が薫風様に寄り添おうとしたところを遮り主人と言い合いになってしまった。だが今は薫風様優先。和彦様に会いたくないと言ってたのでこちらの部屋に案内したのに意味が無くなってしまいました・・・
薫風様の事を思いキツイ言葉を並べ和彦様に付け入る隙を作らないよう言葉を繋げ、とにかく薫風様から離した。薫風様をまずベッドに移動させ水分をとらせた。
・・・そして鬱憤を晴らすように今までの和彦様の至らない所をここぞとばかりに吐き捨てた。薫風様と和彦様の顔が引き吊ってるのを構わずに延々と貯めていた鬱憤を吐き出した。
はぁ・・・これからが思いやられてしまうな・・・
前回の風間が薫風を無理矢理~の続きとなっておりますが、飛ばしても話が通じるよう調節します!
ただ本編でも良いんじゃないかと思えるような内容も混ざってる為、読んで頂けると嬉しいです。
・・・長文です。
***********
いつもの日常、いつも通りに行動していたある日、私の主・和彦様に異変が起きた。
「あの・・・和彦様?どこか、体調が悪いのでは・・・」
「?可笑しな事を言うね足利。・・・特に体調は問題ないが?」
「そ、そうですか。・・・失礼いたしました。」
「別に構わない。ここ最近では五十嵐がスケジュールを極端に詰めていたからな。なぜあんな丸一日休みにしたのか理解できない。」
「・・・」
何故そんな事を言ったのか、その時は理解ができず、ただ聞き流す事しかできなかった。
先日の休みに和彦様の恋人である薫風様と、それはそれはとても濃密な時間を過ごしたはず。
・・・それなのに今は、まるであの頃に戻ったような冷たさを感じる程、態度が変わってしまった。・・・一体我が主の身に何があったのだろう・・・?
「こ、れは・・・」
「何を驚いてる?前からあったではないか。それにこの契約書を記入する時はお前も一緒に居たではないか。」
「・・・」
一枚の用紙の内容を読んで絶句した。・・・そこに書かれていたのは和彦様と薫風様の恋人契約書だった。
互いの要望が書かれており最後の下段に2人の直筆のサインが書かれていた。紛れもなく本物の契約書だ。・・・だが内容が酷い。これは、そう例えるなら性奴隷の様な内容だった。破棄するには互いに婚約者ができるまで。・・・薫風様は本当にこれにサインをしてしまったのだろうか?
それから和彦様の異変は他にもあった。あの頃、そう、和彦様が旦那様に代わり領主になった頃のような感じに戻ってしまわれた、そんな感じがします。
・・・?
・・・いや、領主はまだ変わって・・・?今は旦那様は別宅で暫しの休暇をとってるだけ・・・?和彦様はその代理?・・・?
何かがおかしい・・・なんだ?私は今まで何をしていた?和彦様の側で仕事を手伝っているのは変わらない。だが和彦様の立場と和彦様の両親との成り染めが・・・
??
「何をしている足利?」
「あ・・・い、いえ、少し考え事を・・・」
「?なんなのだ・・・仕事はまだまだ残っている。全く・・・周りの推薦で理事長にはなったが・・・こんなにも面倒なものだとは思いもよらなかったよ。」
「えっ!?」
「?なんだ?」
「あ、いえ・・・」
「・・・今日のお前は何だか変だな。働きすぎか?」
「・・・大丈夫です。申し訳ございません。」
やはりおかしい・・・あの聖陵学校の理事長には周りを脅して自分から進んで理事長になったはず・・・。薫風様に会う為に。
・・・それなのに周りに進められたから無理矢理理事長になった?それにこの薫風様との契約書・・・こんなの有り得ない!2人は前の休みの日に両思いになって晴れて2人は本当の恋人になったのですから!
_________
『足利ぁ~私は遂に、遂にっ!薫風を恋人にする事ができたよ!』
『!それは真ですか?』
『ああ!昨日、薫風が、あの素直になれない可愛らしい薫風がっ!私の腕の中で「好きです」と言ってくれたのだ!それも一度でなく何度もだ!聞き間違いではない事実!あ~私は本当に幸せを手に入れたのだ!』
『・・・それは、おめでとうございます。』
『なんだその素っ気ない態度は!しかもだぞ?薫風が卒業した暁には、ここに嫁いでくる事も承諾したんだぞ!』
『!それは吉報ですね。これでようやく和彦様が落ち着いて仕事に集中できますね。』
『吉報だろう?ふふ・・・はぁ~待ち遠しい。あと2年と少し・・・それまでに問題となってる物をすぐ片付けて薫風が不安になるような要素を無くさねばな。』
『そうですね。のちに養子の事も考えねばなりませんね。未来の為に色々と準備させて頂きます。』
『・・・足利は反対しないのか?』
『はい?・・・ああ、薫風様が嫁いでくる事に、ですか?・・・問題ありません、むしろ大歓迎です。薫風様程、和彦様を支える方はいないと思います。身分は一つ下ですが八乙女家の次男というだけで充分信頼のおける方ですから。・・・それに幼い頃から知っておりますから。』
『・・・薫風は私のだぞ?』
『存じ上げております。薫風様は好いてますが恋愛要素はありませんので、ご安心ください。』
『そうか・・・足利に認められてるなら問題ないだろう。』
『ええ、余所の執事にも、それはそれは大好評でして・・・とある侯爵家の執事いわく薫風様に是非とも我が家に嫁いで』
『なんだと!?どこの家だっ!?』
『他にも────』
──────────
このやり取りをしたのは昨日。あんなに幸せそうにノロケ話を語っていたのに・・・今日のこの態度はなんなのだ?
不安・・・不安しか頭を過らない・・・どうしてしまったのだうちの主は・・・?
「・・・和彦様、失礼ですが旦那様は何処へ?」
「ん?父さんか・・・今は別宅で休暇中だ。もうすぐ帰ってくるだろう。私が事業を黒字にしたからな・・・親の尻拭いもこれが最後にしてほしいものだね。・・・なぁ?そう思うだろう?」
「・・・」
「11歳の子供を置いて自分達は別宅に引きこもり失敗した事業から他の領地の事はほったらかし。・・・今この公爵家が維持できてるのは私のお陰でもあるのに・・・ふん、都合の良い時だけ私を頼るのだから・・・うんざりだ。」
「・・・」
今日は何度私を驚かせてくれるのだろうか・・・?
別宅に追いやったのではなく逃げた。そしてもうすぐ帰ってくる・・・帰ってくる?何故?和彦様がもしもの時の為に貯めていた大金を持たせて縁を切ったのではなく?
私はどうしてしまったのだろう・・・まるで和彦様が別人に思える。私は誰と話しているのだ・・・?
_________
五十嵐様に会った。五十嵐様は変わらず和彦様の支援をしている。・・・だが、少し違和感を感じる。五十嵐様が和彦様に少し遠慮してるような態度を取っているのだ。
気になり少し話を聞いてみる事にした。
「あの、五十嵐様・・・」
「っ、・・・あ、ああ、足利か。何か用か?」
「あの・・・和彦様に、何か異変はありませんか?」
「!足利、お前・・・そうか、お前は薫風が前世の記憶持ちだと知っている唯一だったな。」
「えっ?」
「詳しく話したいが何分、俺もまだ頭の整理が付かない状況で説明の仕様がない・・・だが、薫風は変わらない。変わったのは・・・風間たちだ。記憶喪失の様な、少し話が噛み合わないだろうが・・・そこは相槌を打って誤魔化すんだ。」
「・・・承知、しました。」
「後に薫風が風間と接触するだろう。あの契約書・・・読んだ時、反吐が出る思いがした。・・・辛いだろうな薫風。すまないな足利、薫風を支えてやってくれ。風間はきっと無茶をするだろうから。」
「誠心誠意、薫風様を支えます。」
「よろしく頼む。」
・・・五十嵐様は変わらない様子ですね。少し安堵しました。それにしても気になる事を、「記憶喪失」?何故その様な事に・・・しかもそれは和彦様だけではない様な言い回しでしたね・・・風間たち、と言ってましたね。
ここは、五十嵐様の言うとおり話に相槌を打って様子見としましょうか・・・
_________
なんて事だ・・・薫風様は直談判をし、契約書をその場で破ってしまった。でも、まぁ仕方ないかと思います。あの契約書は、五十嵐様の言うとおり反吐が出る程、気分の良い物ではありませんでしたからね。
契約書を破り踵を返して出ていこうとこちらに向かってきました。そして謝罪をしてきました。・・・なんとも複雑、でも薫風様が苦しむのであれば致し方ない事。だが・・・
和彦様は薫風様を担いで寝室へと連れ出してしまった・・・私は、薫風様を守った方が良かったのでしょうか・・・いや、私は和彦様の執事。・・・今は、和彦様には薫風様が必要・・・そう、これは和彦様の為に、薫風様を犠牲にする他ない事・・・仕方ない、こと・・・
・・・
太陽が昇り、辺りが朝日に照らされ輝きだした頃に、和彦様の部屋からベルの音が聞こえた。
急いで部屋へ赴きノックをし返事が帰って来たので中へと入る。
・・・いつもの事ながら、この光景は凄まじかった。だが今回は薫風様が悲惨な状態だった。
艶のある綺麗な黒髪は乱れ、未だに落ち着かないのか少し荒い息を吐き、身体の至るところに噛み跡があり血が滲んでいた。
「・・・シーツの交換。そしてこいつを洗ってやってくれ。」
「・・・承知しました。」
今まで、一度たりとも事後処理はシーツのみで薫風様の身体の手入れは和彦様がやっていたのに・・・ここまでお変わりになるなんて、一体何があったのでしょうか。
シーツに薫風様をくるみ私達従者が使う風呂場へと行く。・・・予めお湯を張っといて良かった。
まだ意識があるのか終始無言だったがお湯をかけると痛むのか身を捩り、苦し気に唸る声がもれた。
自分のスーツが濡れるのを構わずに風呂場で胡座をかき薫風様を脚に座らせ身を預けるよう包み込む。そして、大変恐縮ですが・・・体調を崩さない為にも事後処理を始めた。
・・・そして素早く風呂場から上がり水気を拭き取ってると薫風様から声をかけられ和彦様に会いたくないと申し出てきた。薫風様の今の心境を察し私の部屋を進めた。私の部屋は和彦様でさえ鍵を持っておらず私しか入れない部屋なので安心して休めるだろうと配慮した結論だった。・・・薫風様は申し訳なさそうに、でも疲労困憊だったのだろう、頷いて私に身を預けてきました。・・・なんともお痛わしい姿。
五十嵐様の言うとおり、これは私が薫風様を支えなければなりません。和彦様には・・・契約書も破棄したのですし一歩も薫風様に近付けさせないようお守りしよう。・・・そう決意しました。
_________
「これはもう済んだ。・・・ああ、それはまだ交渉中だ。・・・こちらは足利に任せる。」
「ではこちらの新津様の件は私が対応致しますが、こちらはどうしましょうか。」
「ああ、これはここと、あとこの書類を・・・ああ、これなんだが畠山の所が受け持つそうだ。まだ書類の整理は済んでない。」
薫風様の手当てを済ませバスローブを着せて横に寝かせて廊下へと出て鍵を締める。・・・すると丁度和彦様が書類を持って現れた。・・・珍しい、自分からこちらにやってくるなんて。
廊下で仕事の話を始めた。・・・これは直ぐに確認しなくても良い書類のはずなのですが・・・?
「わかりました。・・・では。」
「ああ。・・・ところで薫風は?何故お前の部屋に運んだ?」
「薫風様のご希望です。今は・・・和彦様にお会いしたくないとの事。私の部屋なら私の許可なく入ることが出来ないと説明したら二つ返事で私の部屋で寝る、と。」
「・・・何故?何故だ!あいつは私のものだ!」
「落ち着いてくださいませ。薫風様は今は安静に───」
ドタンッ!
っ!!部屋で薫風様に何かがあったのでしょうか?今の音、何かが倒れた音ですね。
急いで鍵を開けドアを開ける。すると薫風様が仰向けになって床に倒れていた。急いで駆け寄ると私の肩を掴み後ろへと引かれ和彦様が前にでて薫風様に駆け寄って行きました。私も急いで薫風様に駆け寄る。
和彦様が薫風様に寄り添おうとしたところを遮り主人と言い合いになってしまった。だが今は薫風様優先。和彦様に会いたくないと言ってたのでこちらの部屋に案内したのに意味が無くなってしまいました・・・
薫風様の事を思いキツイ言葉を並べ和彦様に付け入る隙を作らないよう言葉を繋げ、とにかく薫風様から離した。薫風様をまずベッドに移動させ水分をとらせた。
・・・そして鬱憤を晴らすように今までの和彦様の至らない所をここぞとばかりに吐き捨てた。薫風様と和彦様の顔が引き吊ってるのを構わずに延々と貯めていた鬱憤を吐き出した。
はぁ・・・これからが思いやられてしまうな・・・
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