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高年期[二学期・前編]
ホテルにて。オーナー直々に登場
しおりを挟む「すみません!遅くなりました。」
「ああ、時間を指定してたわけではないから気にするな。家に帰ったわけでもないんだしな。」
「はい。忘れてたわけではないのですが、友人と話し込んでしまって・・・」
「ああ、そのようだな。・・・夕飯はどうする?あのホテルで食べるか?この時間だと、そうした方がいいと思うが?」
「あー・・・そうですね。では家に連絡しておきます。」
「ああ。」
もう6時を回り、このあとホテルの方と話をすれば確実に夕食の時間には帰れない。ならお言葉に甘えさせてもらおうかな。
子鷹狩くんの用意してもらった車に乗った。・・・あ、運転手はあの嘘をついた来栖さんだ。
「ご無沙汰しております八乙女様。」
「・・・ご無沙汰してます。・・・嘘はいけませんよ来栖さん。あれ、本当に悩んだんですよ?エイプリルフールでもそんな嘘はアウトです。」
「え、えいぷり・・・?」
「あ、すみません。とある国には特別な1日がありまして、その日はどんな嘘や戯れ言など言っても許される日があるのです。その日の事をエイプリルフールというのです。」
「ほぅ!・・・とても興味深いお話ですね。いやはや八乙女様は物知りですね。」
「・・・いえ。」
なんか物腰が柔らかいせいか憎めないんだよねぇ~この老執事さん・・・いやまだ若いんだけどね。若老執事とでも言うのかな。
そしてホテルに着きレストランへと行く。の前に正装に着替えさせてもらいました。さすがに制服はね・・・
「お待ちしておりました子鷹狩様、八乙女様。八乙女様には大変お世話になっております。」
「あ、今日はお世話になります。」
「当然の事でございます!ではお席へご案内致します。」
なんとも腰の低いオーナー。あれ?この人オーナーで合ってるよね?
「あの人がオーナーさん?」
「そうだ。あいつも心底薫風の歌声に惚れてるようだからな。今日来ると分かって夕方から待機していたようだ。」
「え、そんなに!?」
まぁここで歌うのは何回かあるけど・・・確かオーナーは滅多にいないとか言ってなかったか?それなのに僕が来るといつもいるんだよね。・・・そんなに気に入ってくれたのか?
「えっと、ここのスタッフさんは何の楽器を演奏できますか?」
「ピアノが主です。あと最近スタッフが八乙女様の姿に感動して箏とギターを弾くようになりました。あとバイオリンです。」
「バイオリン・・・ですか。うん、では今日はバイオリンとピアノのを演奏できる方をお呼びできますか?」
「はい、控えております。」
「では今から楽譜を書きます。・・・ですが、僕はピアノの楽譜は書けてもバイオリンの方は書けないので・・・」
「では音程さえ教えていただければ楽譜はこちらが書きましょう。」
「わかりました。歌はバラードです。夜に咲く花をイメージした歌ですね。」
「それは楽しみですね。では呼んで参ります。」
そう言って姿を消した。うん、デキる大人だね。すぐ3人のスタッフを呼んできたよ。え?さっきから控えてた?・・・気が早すぎやしないかい?
とりあえずピアノの方の楽譜を書く。・・・うん僕チート。難なく思い出して書いてます。多少音合わせて修正して・・・はい完成。
次にバイオリン。・・・あー僕弾けるかな?ノータッチなんですが・・・
軽く説明を聞いて弾いてみる。うん、あのキィーキィー音が出なくて一安心したよ。あのシズカちゃんみたいな、ね。
30分教えてもらってワンシーン弾いてみる。・・・あれまたチート発動してる?でもあの音を揺らすテクニックは無理でした。でもスタッフさんに指示して僕の知ってる音に近づけてくれたので、まぁいいでしょう!
とまぁ夢中になってたら子鷹狩くんに呼ばれ夕食を取る。やはりVIPルームでした。そして何故かオーナーと執事・来栖さんも一緒です。
「・・・!この曲」
「お分かりですか?これは八乙女様が初めて来店して初めて楽譜を頂いた時のものです。これを聴きに来る客もいる程素晴らしい曲です。有難うございます。」
「あ、いいえ・・・すみません、僕はその事は記憶になくって・・・」
「ああ、八乙女様はお酒が弱いとか。今日の料理にはアルコールははいってませんのでご安心下さい。」
「あ、有難うございます。」
「・・・」
な、なんか子鷹狩くんが不機嫌なんですが・・・
「もし宜しければ今宵またステージに上がってはいかがでしょうか。」
「・・・おい設楽。」
「すみません気が高ぶってしまいました。なんせ八乙女様の歌声はもう・・・女神の歌声のようで虜になってしまったので、つい・・・」
「別に構いませんよ?時間が遅いせいかお客さんも疎らですし。」
「おい薫風・・・」
「い、いいのですか!では宜しくお願い致します!」
「はい。・・・爛先輩、いいですか?」
「っ・・・薫風が、歌いたいなら好きにしろ。」
うっわー超不機嫌。でも延々とオーナーに褒められそうで居たたまれなかったんだもん。許して。
そんで今日は、うん、福山さんの歌を歌おうか。好評だったって言ってたし。あれならギター一本で歌えるし。
『本日も我がビジネスホテルへご来店誠に有難うございます。本日、特別ゲストがご来店頂き匿名で、ただ今お食事して頂いてる方々に素晴らしい一時をご堪能して頂きたく演奏をさせていただきたいと思います。どうぞ、許す限りこの場に留まり安らぎの一時を提供させていただきます。ごゆっくりどうぞ。』
アナウンスが流れる。・・・なんか株上げてませんか?僕、そんな良い歌うたえないよ?軽くプレッシャー。
「・・・匿名で失礼致します。有意義な時間を過ごせたと思ってもらえるよう精一杯歌わせていただきます。ご自由にお過ごし下さい。では歌わせてもらいます。」
いつものセリフを言う。有意義な一時ね。うん、僕の歌声で満足してくれたら嬉しいよ。
「そんな風に・・・微笑むから・・・いつの間にか~嬉しく、なるよ~・・・」
片思いの女性の歌。なんか今ここにいるお客さんの層が女性が多い気がするんだよね。若い人もいれば年配の夫婦がいるんだよね。この場に相応しい歌かわからないけど歌いますよ。そんな気分だし。あ、僕は片思いしてませんよーコイビトいますからぁ?
あ、でも子鷹狩くん宛に歌ってもいいのか?あれ、酷なことしてるかな?まぁいいや。
はい、歌い終わりましたー。次はラブバラード歌いますよぉ?
「あーいしーたいーあなーたにー会いーたい・・・いーま、こーのむーねのー奥で、叫ーんでーるよー・・・」
あ、なんか目をウルウルさせてる女性がいる。大丈夫かな?・・・うんでもやっぱりこの歌好きよ。聞く方が好きだけど福山さんと同じ声で歌える人はいないだろうから無理なんだよね。
あ、でも子鷹狩くんのハスキーなあの声でこれ歌われたらキュンキュンするかも(笑)
そして歌い終わるとこの場にいた数人のお客さんが拍手をしてくれた。・・・スタッフの皆さんもね。でもちゃんと仕事しなさい?
「素晴らしい歌を有難うございます。八乙女様。」
「やはり薫風の歌はいいな。休みが楽しみだ。」
「有難うございます。僕からしたら好きに歌わせてもらえるので楽しいです。気晴らしにもなりますし、歌って喜ばれるなら何度でも歌いますよ。」
「八乙女様なら、あの歌手という職業でもやっていけそうな気がしますが、歌手になる気はないのですか?まぁこのままたまに我がホテルで歌って頂ける方が有り難いのですが。」
「歌手になるつもりはありません。歌うのは好きですが、それを職業にする気はないですね。」
「薫風はそうだよな。・・・もう遅い。送ろう。今日は楽しかったよ。あと一回打ち合わせをしたいのだがいいか?」
「あ、構いませんよ。ただ来週のイベントの作戦会議もあるので・・・」
「あぁ、それは俺も参加する予定だ。その後、今日みたいに夕食と一緒に少し打ち合わせるだけでいい。」
「わかりました。では前日はどうですか?」
「いいだろう。」
「・・・またのお越しをお待ちしております。」
なんかオーナーが歓喜にうち震えてる感じなんですが?何故?
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