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高年期[夏休み編]
真夏の海に兄さんとは部類の違う魔王降臨。
しおりを挟む「・・・なぁ、いい加減に、しろよ・・・?」
「「「っ!?」」」
あ、克典がキレた。・・・これ、どうしよう?
されるがままになってた克典がゆっくり立ち上がり僕の腕を掴んでるクリーム色の髪をした男の娘に、いつも垂れ目でめんどくさそうにしている顔から想像がつかない程の怒気を纏った鋭い目線を向けていた。
「薫風はね、俺のなの。・・・だから、触んないで?」
「っ!・・・あ、」
「いい加減、離れろ。」
口調はいつも通りゆったりとした感じだが、顔が!そしてオーラが!隠すことのない怒りのオーラが凄まじいですっ!なにこれ怖っ!!
僕に言われてるわけじゃないのに、まるで僕が怒られてるような、怒気に当てられて萎縮してしまう。
僕と男の娘に近づいてきて、まず腕を引き剥がされた。克典に掴まれた腕がかなり痛い。顔が歪んでしまったのは仕方ないと思う。
周りの男の娘たちも夏空で暑い中、顔を蒼白にして固まっている。・・・さらに克典に腕を引き剥がされた男の娘はさらに顔色が悪く今にも倒れそうな感じだ。・・・どーしよー・・・
「克典・・・戯れ言にそんな真に受けるなよ。克典らしくない。」
「そう・・・薫風は戯れ言で済ませようとするんだな。」
「僕にどうしろと?・・・まったくもー・・・」
もうこの空気ヤバい。精神がジリジリと削られる。この魔王様、早々帰らせねば・・・
「ごめんね名前も知らない君。・・・僕は誰とも付き合う気が無ければ伴侶もとるつもりもないんだ。だから断らせてもらうよ。」
「え?・・・あ、・・・す、すみま、せん・・・僕は」
「ああ、名前とか言わなくて結構。じゃあこれにて失礼するよ。・・・ほら、克典行くよー」
「・・・」
とりあえずこの場から離れたい。男の娘たちらプルプルして可哀想な事になってるし、未だに魔王降臨してる克典は怒気が収まらないし・・・どーすりゃいい?
未だに男の娘たちを睨んでる克典、動く気配がない。むしろ威圧で殺しそうな雰囲気なんですが・・・怖っ!
あーもーめんどくさーい!!!!こんな時には必殺!
色仕掛け!
両手で思いっきり克典の顔を鷲掴みにしてこちらを振り向かせ、ギュッ!と目を瞑って少し背伸びをして克典の顔に自分の顔を近付けた。
ムチュ!
「っ!」
「克典ぃ~、いい加減にしろ?知らない子達を怖がらせて何になるんさ?」
「薫風・・・」
「えっ!あ、ちょ待っ・・・んむぅーーー!」
・・・自分からキスしたのは悪かったよ。自業自得。でも自分の身を犠牲にした甲斐があり、ヒュン!と一瞬にして魔王様引っ込ませるのに成功しました。
ふ、ふふふ・・・その代償として濃厚な、かな~り濃厚なお返しを貰ったけどね。僕は意識をこちらに向かせる為に軽く触れる程度の挨拶の様な軽い口付けをしたんだけどなぁ~・・・2倍?いや3倍返しされました・・・人目を気にせず濃厚なやつを返されました。
酸欠になりそうな程しつこくされ、解放された時には本日2度目のグッタリを体験しました。はい。
克典が満面の笑みを浮かべながら胸元に抱き締められました。・・・もう好きにして。
「はぁ・・・うん、仕方ないから薫風に免じて君たちの事、見逃してあげるよ。」
「え、あ、あの・・・」
「・・・見逃して、あげるって言ってるんだけど?わからない?」
「ひっ!・・・し、失礼しましたー!」
克典に凭れながら男の娘たちを見送る。金縛りから解けて一目散に僕らの視界から消えていった。脱兎の如く・・・
「さて薫風、続き~」
「は?・・・あんま、調子に・・・乗るなっ!」
「いたっ!」
何が「続き」だよ!思わず突っ込んで頭に手刀、いわゆるチョップを克典の頭に振りかざしてやった。・・・朝っぱから散々僕の身体を弄んだくせにまだやるつもりなのか?もうお前の精力、怪物並みだわ!勘弁してくれよ!
克典を置いてって皆の元へと向かう。・・・途中、克典が後ろから抱きつかれ引き摺りながら克典を連れて帰る事になった・・・つ、疲れた・・・克典はご機嫌宜しくニコニコしてますがね。その顔、凄くムカつく。殴ってやりたい。仕返しされるからやらないけどね。・・・もっと身体鍛えよう・・・。
「あれ?陽南さんは?」
「ん?あれ?・・・トイレに行ったきり・・・あ、ヤバいかな?」
「え?誰も着いていかなかったの?」
「麗華さんも一緒に・・・」
「おい万純くん・・・それ、ヤバいよね。何故男が誰も着いていかないんだよ。」
「ご、ごめん・・・僕も着いて行きたかったんだけどこっちはこっちで大変で・・・」
「あれ兄さんは?それにあと2人の男子は・・・?」
「あ、流依先輩はあそこ・・・鳳くんの友達はあそこ・・・」
「・・・えぇ~・・・なんでぇ~・・・」
みーんなバラバラ。ねぇ、何でみんな一緒に行動できないわけ?・・・とりあえず陽南さんと麗華さんが心配だな。陽南さんは言わすともだが、麗華さんも絶世の美女の部類に入る。
クリーム色のフワ緩ウェーブ髪はあのフランス人形のモデルの様な可憐さがあり、雰囲気でわかる位おっとりしててお淑やかだ。控えめで令嬢の鏡の様な麗華さんは学年で男性にも女性にも密かな人気者なのだ。
・・・流依兄さんの方は・・・うん、自分でなんとかしてもらおう。女性2人を探しに行こう。
・・・なんで僕、保護者の様な立場にいるんだろう・・・ まぁ今の所、自由に動き回るれるのは僕だけだし仕方ないか。
「・・・万純くんはこのまま真菜たちの用心棒してくれる?僕は陽南さんと麗華さんが気になるから探してくる。流依兄さんは・・・自力でなんとかしてもらおう。あの2人は・・・克典、任せていい?」
「・・・あー、うんいいよ~。俺が誘ったんだしー面倒見なきゃねぇー。」
「・・・ほどほどにな?面倒見なきゃって、ペットじゃないんだから・・・」
「ま、まぁとりあえず薫風くん、悪いけど陽南さんたちをお願いね。君の妹と友達は任せてくれていいから!」
「有難う万純くん。あー一番頼りになるのは万純くんだけだわ。」
「えー俺はー?」
「・・・」
こいつ、本当に懲りないな。チョップだけじゃダメだったか?
とりあえずトイレの方へ向かいますかぁ~・・・
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