ほもむかしばなし

halsan

文字の大きさ
10 / 19

あまのふんどし

しおりを挟む
 昔々あるところに、漁師の若者が暮らしておりました。

 いつものように魚を獲った帰りに松林の中を歩いていると、松の枝に漢臭さがかぐわしい立派なふんどしがかかっていました。
 
「やあ、これは年季が入った立派なふんどしだ」

 漁師は思わず、そのふんどしを背負籠せおいかごに隠してしまいました。
 
 するとそのとき、松林の奥から人の声が聞こえてきました。
 
 漁師がそっと覗くと、数人のたくましい漢たちが、水浴びをしていました。
 
「なんともオスくさおとこたちだ」

 その、この世のものとは思えない漢たちの姿に、漁師はうっとりとしました。
 
 そうしているうちに、漢たちは水浴びを終え、近くの松の枝に掛けられていたふんどしを締めると、そろって天へと昇っていきました。
 
 しかし一人だけ、ふんどしが見つからない漢がいました。
 
「むう。確かにここにかけておいたはずなのだが。わしのふんどしはどこに行ってしまったのだ。このままでは天に帰れないぞ」

 漁師は何食わぬ顔で、困った様子の漢の前に姿を現しました。
 
「お兄さん、お兄さん、どうしたのですか?そんな姿では風邪をひいてしまいます」

 そう言いながら、漁師は自分の腰蓑こしみのを漢に貸してやりました。
 
「かたじけない」

 漢は素直に漁師に礼を言いました。
 
「ところでお兄さんはどこから来たのですか?」

 漁師はそう尋ねました。
 
 しかし漢は
 
「むう」

 とつぶやいたきり、何も答えません。

「ならばわたしの家にお越しください」

 そう言って漁師は漢を自分の家に連れていきました。
 
 漁師は漢を囲炉裏いろりに座らせ、暖を取るように勧めると、漢が囲炉裏に向かっている隙に、ふんどしを押入れの奥に仕舞しまいました。
 
 こうしてふんどしを失った漢は漁師とともに暮らすようになったのです。
 
 二人はすぐに村で評判のホモカップルとなりました。
 
 屈強な漢と暮らすようになった漁師は、それはそれは一生懸命に働きました。
 
 漢も家の仕事を手伝いながら、漁師の世話をかいがいしく続けました。
 
 こうして二人は楽しく幸せに暮らしたのです。
 
 ところがある日のこと。
 
 漁師がいつものようにイサキ漁に出ている間に、家を掃除していた漢は、押入れの奥から、自分のふんどしを見つけてしまったのです。
 
「むう。これはわしのふんどしである。そうか、ふんどしを隠したのは漁師であったか。なんということだ。わしはどうしたらいいのだ」

 そうです、漢は今では漁師を深く愛していたのです。
 
 漁師がイサキ漁からかえってくると、漢はふんどしを締めて、家の前にたっていました。
 
 漢はつらそうに呟きました。
 
「お前がわしのふんどしを隠していたのだな」

 漁師は返事をすることができません。
 
「このふんどしは天界のものである。なのでわしはこのふんどしを見つけた以上、天に帰らなければならない」

 漁師は漢に泣きつきました。
 
「ごめんなさい。どうしてもお兄さんと一緒にいたかったんだよ。お願いだ、どうかこれからも一緒に暮らしてください」

 しかし漢は悲しそうに首を左右に振りました。
 
「わしもお前と暮らしていたい。しかしこれは天界のおきてなのだ」

 そう言うと、漢は天に右手を高く掲げました。
 
「我が生涯に一片の悔いなし!」

 こうして漢は天に昇ってしまいました。

 めでたしめでたし。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...