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あまのふんどし
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昔々あるところに、漁師の若者が暮らしておりました。
いつものように魚を獲った帰りに松林の中を歩いていると、松の枝に漢臭さが芳しい立派なふんどしがかかっていました。
「やあ、これは年季が入った立派なふんどしだ」
漁師は思わず、そのふんどしを背負籠に隠してしまいました。
するとそのとき、松林の奥から人の声が聞こえてきました。
漁師がそっと覗くと、数人のたくましい漢たちが、水浴びをしていました。
「なんとも雄臭い漢たちだ」
その、この世のものとは思えない漢たちの姿に、漁師はうっとりとしました。
そうしているうちに、漢たちは水浴びを終え、近くの松の枝に掛けられていたふんどしを締めると、そろって天へと昇っていきました。
しかし一人だけ、ふんどしが見つからない漢がいました。
「むう。確かにここにかけておいたはずなのだが。わしのふんどしはどこに行ってしまったのだ。このままでは天に帰れないぞ」
漁師は何食わぬ顔で、困った様子の漢の前に姿を現しました。
「お兄さん、お兄さん、どうしたのですか?そんな姿では風邪をひいてしまいます」
そう言いながら、漁師は自分の腰蓑を漢に貸してやりました。
「かたじけない」
漢は素直に漁師に礼を言いました。
「ところでお兄さんはどこから来たのですか?」
漁師はそう尋ねました。
しかし漢は
「むう」
とつぶやいたきり、何も答えません。
「ならばわたしの家にお越しください」
そう言って漁師は漢を自分の家に連れていきました。
漁師は漢を囲炉裏に座らせ、暖を取るように勧めると、漢が囲炉裏に向かっている隙に、ふんどしを押入れの奥に仕舞いました。
こうしてふんどしを失った漢は漁師とともに暮らすようになったのです。
二人はすぐに村で評判のホモカップルとなりました。
屈強な漢と暮らすようになった漁師は、それはそれは一生懸命に働きました。
漢も家の仕事を手伝いながら、漁師の世話をかいがいしく続けました。
こうして二人は楽しく幸せに暮らしたのです。
ところがある日のこと。
漁師がいつものようにイサキ漁に出ている間に、家を掃除していた漢は、押入れの奥から、自分のふんどしを見つけてしまったのです。
「むう。これはわしのふんどしである。そうか、ふんどしを隠したのは漁師であったか。なんということだ。わしはどうしたらいいのだ」
そうです、漢は今では漁師を深く愛していたのです。
漁師がイサキ漁からかえってくると、漢はふんどしを締めて、家の前にたっていました。
漢はつらそうに呟きました。
「お前がわしのふんどしを隠していたのだな」
漁師は返事をすることができません。
「このふんどしは天界のものである。なのでわしはこのふんどしを見つけた以上、天に帰らなければならない」
漁師は漢に泣きつきました。
「ごめんなさい。どうしてもお兄さんと一緒にいたかったんだよ。お願いだ、どうかこれからも一緒に暮らしてください」
しかし漢は悲しそうに首を左右に振りました。
「わしもお前と暮らしていたい。しかしこれは天界の掟なのだ」
そう言うと、漢は天に右手を高く掲げました。
「我が生涯に一片の悔いなし!」
こうして漢は天に昇ってしまいました。
めでたしめでたし。
いつものように魚を獲った帰りに松林の中を歩いていると、松の枝に漢臭さが芳しい立派なふんどしがかかっていました。
「やあ、これは年季が入った立派なふんどしだ」
漁師は思わず、そのふんどしを背負籠に隠してしまいました。
するとそのとき、松林の奥から人の声が聞こえてきました。
漁師がそっと覗くと、数人のたくましい漢たちが、水浴びをしていました。
「なんとも雄臭い漢たちだ」
その、この世のものとは思えない漢たちの姿に、漁師はうっとりとしました。
そうしているうちに、漢たちは水浴びを終え、近くの松の枝に掛けられていたふんどしを締めると、そろって天へと昇っていきました。
しかし一人だけ、ふんどしが見つからない漢がいました。
「むう。確かにここにかけておいたはずなのだが。わしのふんどしはどこに行ってしまったのだ。このままでは天に帰れないぞ」
漁師は何食わぬ顔で、困った様子の漢の前に姿を現しました。
「お兄さん、お兄さん、どうしたのですか?そんな姿では風邪をひいてしまいます」
そう言いながら、漁師は自分の腰蓑を漢に貸してやりました。
「かたじけない」
漢は素直に漁師に礼を言いました。
「ところでお兄さんはどこから来たのですか?」
漁師はそう尋ねました。
しかし漢は
「むう」
とつぶやいたきり、何も答えません。
「ならばわたしの家にお越しください」
そう言って漁師は漢を自分の家に連れていきました。
漁師は漢を囲炉裏に座らせ、暖を取るように勧めると、漢が囲炉裏に向かっている隙に、ふんどしを押入れの奥に仕舞いました。
こうしてふんどしを失った漢は漁師とともに暮らすようになったのです。
二人はすぐに村で評判のホモカップルとなりました。
屈強な漢と暮らすようになった漁師は、それはそれは一生懸命に働きました。
漢も家の仕事を手伝いながら、漁師の世話をかいがいしく続けました。
こうして二人は楽しく幸せに暮らしたのです。
ところがある日のこと。
漁師がいつものようにイサキ漁に出ている間に、家を掃除していた漢は、押入れの奥から、自分のふんどしを見つけてしまったのです。
「むう。これはわしのふんどしである。そうか、ふんどしを隠したのは漁師であったか。なんということだ。わしはどうしたらいいのだ」
そうです、漢は今では漁師を深く愛していたのです。
漁師がイサキ漁からかえってくると、漢はふんどしを締めて、家の前にたっていました。
漢はつらそうに呟きました。
「お前がわしのふんどしを隠していたのだな」
漁師は返事をすることができません。
「このふんどしは天界のものである。なのでわしはこのふんどしを見つけた以上、天に帰らなければならない」
漁師は漢に泣きつきました。
「ごめんなさい。どうしてもお兄さんと一緒にいたかったんだよ。お願いだ、どうかこれからも一緒に暮らしてください」
しかし漢は悲しそうに首を左右に振りました。
「わしもお前と暮らしていたい。しかしこれは天界の掟なのだ」
そう言うと、漢は天に右手を高く掲げました。
「我が生涯に一片の悔いなし!」
こうして漢は天に昇ってしまいました。
めでたしめでたし。
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