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37話 新たな依頼①
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後ろを付いてくるレグランから物申したいような空気を感じ取って、顔だけ振り向いて問う。
「……何よ。言いたいことがあるなら言いなさい」
私の許可を得たレグランは、遠慮なく口にする。
「はい。アイヴィ様は民への思いやりが深いと知って少し意外に思っただけです」
「あなた、本当に失礼ね。別に思いやりとか崇高なものじゃないわ。ただ身分の差と国政のために救えない人が大勢出るのが理不尽だと思うだけ」
「アイヴィ様は強い義務感で人々を救っているのだと思っていました。私はアイヴィ様のことを誤解していたようです」
「あら。その認識は合っているわ。何も誤解なんかじゃない。あまり私を買い被り過ぎないことね」
「…………」
レグランは見透かすような瞳で私の顔をじっと見つめる。
その視線から逃れるように顔を背け、先を急いだ。
私の部屋へ入ると、既に旅支度を焦るメイドや使用人達がバタバタと走り回っていた。
目が回るほど忙しいのだろう。私が入って来たことに気付いたのは二、三人のメイドだけだった。
「ああ、私のことは気にしないで作業していて頂戴。コニー、あなたと少し話したいの」
「は、はいっ!」
コニーは手に持っていた大量の衣類を丁寧に置いてから、私の元へと飛んで来る。
「少し聞きたいのだけど、ノノメリアは温暖な気候? それとも寒暖な気候?」
「の、ノノメリアは、非常に温暖な気候の国です。あの、あの、むしろ少し暑いと感じるくらいみたいで。なので通気性の良い、軽めのドレスをメインにご用意しております!」
「……半袖の?」
「はい……あ、あ、あの、何か、問題でもありましたか……!?」
コニーは顔を真っ青にして視線を何度も泳がせる。
彼女の肩を優しく叩き、少し落ち着かせてから首を横に振った。
「いえ、ただ日焼けしたくないの。長袖のドレスを多めに用意出来ないかしら」
本当は、もし長旅の中で聖女の力を多く使う機会があって、痩せ細ってしまったら言い訳が思い付かないから、それを隠すために長袖のドレスが欲しいのだけど。
日焼け防止という理由を上手く付けてコニーを納得させる。
「あ、あ! そういうことですね! 気が利かなくて申し訳ありませんでした!!」
コニーは自分の足に頭が付くほどガバッと頭を下げる。
あまりに深過ぎるお辞儀に戸惑いを覚えた。
「コニー。過剰に恐縮するのはやめて頂戴。私があなたを虐めていると誤解されるでしょ」
「あ、あ、あ、申し訳ありません!!」
コニーは全く同じ角度でガバッと頭を下げたので、言葉を失う。
な、何が彼女をそこまで恐縮させてしまうのかしら。
メンタルが強いとは言え、やっぱり私のこと怖がっているんじゃ……。
「…………」
こめかみに手を当て、どうしたらいいのか考えてみる。
走り回る周りのメイド達は慣れているのか、それとも気にしている暇がないのか、全くコニーを見ていない。
「もういいわ、仕事に戻って」
「は、はい!!」
考えることを放棄した私は、コニーを解放することにする。
コニーはペコペコと頭を下げながら持ち場へと戻って行った。
その一連の流れを見ていたレグランがぼそっと感想を呟く。
「アイヴィ様でもコニーの扱いに困るのですね」
「レグラン、あなた厄介者を私に押し付けたわけじゃないでしょうね?」
「まさか。私共では手に余るから、アイヴィ様ならきっと彼女を上手に使えるだろうなんて思ったわけないじゃないですか」
「……あなたも大概いい性格してるわね」
皮肉を言えば、レグランは何故か満足そうににこりと笑みを浮かべた。
「……何よ。言いたいことがあるなら言いなさい」
私の許可を得たレグランは、遠慮なく口にする。
「はい。アイヴィ様は民への思いやりが深いと知って少し意外に思っただけです」
「あなた、本当に失礼ね。別に思いやりとか崇高なものじゃないわ。ただ身分の差と国政のために救えない人が大勢出るのが理不尽だと思うだけ」
「アイヴィ様は強い義務感で人々を救っているのだと思っていました。私はアイヴィ様のことを誤解していたようです」
「あら。その認識は合っているわ。何も誤解なんかじゃない。あまり私を買い被り過ぎないことね」
「…………」
レグランは見透かすような瞳で私の顔をじっと見つめる。
その視線から逃れるように顔を背け、先を急いだ。
私の部屋へ入ると、既に旅支度を焦るメイドや使用人達がバタバタと走り回っていた。
目が回るほど忙しいのだろう。私が入って来たことに気付いたのは二、三人のメイドだけだった。
「ああ、私のことは気にしないで作業していて頂戴。コニー、あなたと少し話したいの」
「は、はいっ!」
コニーは手に持っていた大量の衣類を丁寧に置いてから、私の元へと飛んで来る。
「少し聞きたいのだけど、ノノメリアは温暖な気候? それとも寒暖な気候?」
「の、ノノメリアは、非常に温暖な気候の国です。あの、あの、むしろ少し暑いと感じるくらいみたいで。なので通気性の良い、軽めのドレスをメインにご用意しております!」
「……半袖の?」
「はい……あ、あ、あの、何か、問題でもありましたか……!?」
コニーは顔を真っ青にして視線を何度も泳がせる。
彼女の肩を優しく叩き、少し落ち着かせてから首を横に振った。
「いえ、ただ日焼けしたくないの。長袖のドレスを多めに用意出来ないかしら」
本当は、もし長旅の中で聖女の力を多く使う機会があって、痩せ細ってしまったら言い訳が思い付かないから、それを隠すために長袖のドレスが欲しいのだけど。
日焼け防止という理由を上手く付けてコニーを納得させる。
「あ、あ! そういうことですね! 気が利かなくて申し訳ありませんでした!!」
コニーは自分の足に頭が付くほどガバッと頭を下げる。
あまりに深過ぎるお辞儀に戸惑いを覚えた。
「コニー。過剰に恐縮するのはやめて頂戴。私があなたを虐めていると誤解されるでしょ」
「あ、あ、あ、申し訳ありません!!」
コニーは全く同じ角度でガバッと頭を下げたので、言葉を失う。
な、何が彼女をそこまで恐縮させてしまうのかしら。
メンタルが強いとは言え、やっぱり私のこと怖がっているんじゃ……。
「…………」
こめかみに手を当て、どうしたらいいのか考えてみる。
走り回る周りのメイド達は慣れているのか、それとも気にしている暇がないのか、全くコニーを見ていない。
「もういいわ、仕事に戻って」
「は、はい!!」
考えることを放棄した私は、コニーを解放することにする。
コニーはペコペコと頭を下げながら持ち場へと戻って行った。
その一連の流れを見ていたレグランがぼそっと感想を呟く。
「アイヴィ様でもコニーの扱いに困るのですね」
「レグラン、あなた厄介者を私に押し付けたわけじゃないでしょうね?」
「まさか。私共では手に余るから、アイヴィ様ならきっと彼女を上手に使えるだろうなんて思ったわけないじゃないですか」
「……あなたも大概いい性格してるわね」
皮肉を言えば、レグランは何故か満足そうににこりと笑みを浮かべた。
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