38 / 76
38話 素直にはなれない①
しおりを挟む
翌朝。
恐らく一睡もしていないであろうコニーに、私は身支度をしてもらっていた。
鏡に映るコニーが私の髪を整えるのを観察する。
コニーの顔色は悪くはないけれど、徹夜明けはしんどいでしょうから、少し心配だわ。
「コニー、あなた大丈夫なの? 自分の支度は出来たの?」
「は、はい……! ご心配なく! 全て、終えております!」
「そう、ご苦労様。あなた眠れていないでしょうから、馬車の中で休むといいわ」
コニーは私の髪の毛を梳く手を止めて、大袈裟に両手と首を振る。
「い、いえ! アイヴィ様がお休みでない時に、メイドの私が休むわけには……!」
「命令よ、コニー。あなたの体調管理は私の義務でもあるの。必ず休みなさい」
「はっ、はい……!! あの、あ、ありがとうございます」
「別に礼を言われることは言ってないけれど……」
コニーは律儀に何度か頭を下げて、私に感謝の意を伝える。
もういいったら、そう告げるとコニーはようやく頭を上げた。
「コニー。私が頼んだ長袖のドレスは多めに入れてくれた?」
「は、はい! で、ですが……日焼け対策だとしても、かなり暑いかもしれません……」
「いいのよ。私寒がりだから」
もちろんそんなのは真っ赤な嘘だけど。
そうでも言わないとコニーは半袖のドレスを推して来そうだから仕方ない。
コニーは私の嘘を信じたのか、それ以上は特に突っ込んで来るようなことはなかった。
支度を終えて城門前へ向かうと、わざわざ国王様と王妃様がいらして、私達の出発の見送りをしてくれた。
「ライナス、アイヴィさん。気を付けて行ってくるのよ。ちゃんと無事に帰って来てね、絶対よ!」
「はい、母上」
「ありがとうございます、王妃殿下」
「アイヴィさん?」
「セッ……セリーナ様」
王妃様を名前呼びしなかったら、顔は笑顔のままだけど妙な圧を感じたので反射的に名前を呼ばせて頂く。
王妃さ……セリーナ様は満足したのか、圧が消えてニコニコと優しい笑顔に戻った。
こ、怖いわ。今の圧は気のせいじゃないわよね?
国王様はそんなセリーナ様に慣れているのか、特に諌めるようなこともせず、ライナスと私に言葉をかけてくれる。
「ライナス、頼んだぞ。先方に失礼のないようにな。それから聖女殿、必ずノノメリア王女を救って欲しい」
「はい、父上」
「はい。尽力致します、国王陛下」
馬車に乗り込み、国王夫妻に会釈をする。
馬車はガタンと一度大きく音を鳴らしてから、ゆっくりと動き始めた。
「気を付けてねー!」
セリーナ様がハンカチをヒラヒラさせながら私達の姿が見えなくなるまで大きく手を振るのを、最後まで見届けた。
私とライナスの二人の馬車、その後ろの馬車にライナスの従者とレグランとコニー、そして荷馬車と護衛兵士が続く。かなりの大所帯だ。
恐らく一睡もしていないであろうコニーに、私は身支度をしてもらっていた。
鏡に映るコニーが私の髪を整えるのを観察する。
コニーの顔色は悪くはないけれど、徹夜明けはしんどいでしょうから、少し心配だわ。
「コニー、あなた大丈夫なの? 自分の支度は出来たの?」
「は、はい……! ご心配なく! 全て、終えております!」
「そう、ご苦労様。あなた眠れていないでしょうから、馬車の中で休むといいわ」
コニーは私の髪の毛を梳く手を止めて、大袈裟に両手と首を振る。
「い、いえ! アイヴィ様がお休みでない時に、メイドの私が休むわけには……!」
「命令よ、コニー。あなたの体調管理は私の義務でもあるの。必ず休みなさい」
「はっ、はい……!! あの、あ、ありがとうございます」
「別に礼を言われることは言ってないけれど……」
コニーは律儀に何度か頭を下げて、私に感謝の意を伝える。
もういいったら、そう告げるとコニーはようやく頭を上げた。
「コニー。私が頼んだ長袖のドレスは多めに入れてくれた?」
「は、はい! で、ですが……日焼け対策だとしても、かなり暑いかもしれません……」
「いいのよ。私寒がりだから」
もちろんそんなのは真っ赤な嘘だけど。
そうでも言わないとコニーは半袖のドレスを推して来そうだから仕方ない。
コニーは私の嘘を信じたのか、それ以上は特に突っ込んで来るようなことはなかった。
支度を終えて城門前へ向かうと、わざわざ国王様と王妃様がいらして、私達の出発の見送りをしてくれた。
「ライナス、アイヴィさん。気を付けて行ってくるのよ。ちゃんと無事に帰って来てね、絶対よ!」
「はい、母上」
「ありがとうございます、王妃殿下」
「アイヴィさん?」
「セッ……セリーナ様」
王妃様を名前呼びしなかったら、顔は笑顔のままだけど妙な圧を感じたので反射的に名前を呼ばせて頂く。
王妃さ……セリーナ様は満足したのか、圧が消えてニコニコと優しい笑顔に戻った。
こ、怖いわ。今の圧は気のせいじゃないわよね?
国王様はそんなセリーナ様に慣れているのか、特に諌めるようなこともせず、ライナスと私に言葉をかけてくれる。
「ライナス、頼んだぞ。先方に失礼のないようにな。それから聖女殿、必ずノノメリア王女を救って欲しい」
「はい、父上」
「はい。尽力致します、国王陛下」
馬車に乗り込み、国王夫妻に会釈をする。
馬車はガタンと一度大きく音を鳴らしてから、ゆっくりと動き始めた。
「気を付けてねー!」
セリーナ様がハンカチをヒラヒラさせながら私達の姿が見えなくなるまで大きく手を振るのを、最後まで見届けた。
私とライナスの二人の馬車、その後ろの馬車にライナスの従者とレグランとコニー、そして荷馬車と護衛兵士が続く。かなりの大所帯だ。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる