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――
そして日曜が過ぎ、週明け月曜日。
いつも通りに仕事は進み、佐久間君もあいも変わらぬ鬼上官ぷりを発揮して、次々と仕事の依頼が舞い込んでくる。
けれど1人妙に佐久間君を意識してしてしまう私は、益々その「通常通り」の鬼上官に、困惑を隠せないでいるのだった。
佐久間君と視線が合えば顔が真っ赤になるし、書類を手渡す際にふと指先と指先なんて触れてしまえば、妙に甘い刺激が身体を襲い、ブルリと思わず震えてしまう。
なんだなんだ。一体これはなんなんだ。
自分の説明つかない揺れる感情もさる事ながら、なんであの佐久間君は、なんともない顔をしているのだろう。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、そんな調子で火水木と曜日は流れ、本日金曜日。
またしても終業時間間際に佐久間君がオフィスに飛び込んできた。
「先輩、申し訳ないですけど、急ぎで書類対応お願いできませんか?」
ええーまたあ?
2週続けての急な依頼に正直うんざりするところではあるが、これも仕事だ仕方がない。
帰り支度を止めた私は再び椅子に腰掛けると、資料を貰って作業を開始するのだった。
――
週末ともなれば残業する人も殆ど無く、今となっては佐久間君と私の二人きり。残業開始から2時間後、ようやく作業は終了したのだった。
「先週に続いて今週も、残業対応ありがとうございました。」
ニコリと良くできましたとばかりに微笑む佐久間君。
先週……。
そうだ。先週の話題を出しておいて、なんで佐久間君は何事も無かったような顔をしているのだろう。
なんでこちらの気持ちをこんなに乱しておきながら、彼はあんな涼しい顔でいられるのだろう?
残業の疲れも相まって、思わず苛ついてしまった私はつい棘々しい口調で佐久間君の言葉に反応してしまうのだった。
「佐久間君、なんともない顔をして先週の話題なんかするけど、先週ここで、何があったか忘れちゃったの?」
……しまった。
感情の昂りのせいか、恨みがましい一言がつい口をついて出てしまった。
一瞬後悔の念がよぎるが、一度吐き出してしまった気持ちは止まらない。
「大体なんなの?!先週私に好きだなんて言っておいて、なんでなんともない顔してんの?!こっちなんてあれからずっと佐久間君のこと、意識しちゃってるっていうのにっ!」
思わずギャンギャンと噛みつくと、佐久間君は少し驚いたように目を丸くさせ、その後ちょっと照れくさそうにニヤリと笑うのだった。
「……先輩、俺のこと、意識してくれてたんですか?……じゃあもしかして、俺のこと、ちょっとは好きになっちゃいました?」
嬉しげな口調でそんなことを言われてしまうと、なんだか急に恥ずかしくなってきてしまう。
「ち、違う!そうじゃなくって……!!」
と、慌てて否定の言葉を口にすると、佐久間君は急に表情を変え目を怪しく光らせる。
コツリコツリと私の周りを歩き回ると、
「ふーん。……じゃあ先輩、もしかして、もう一度俺にこんなことされたかったんですか?」
私を背後からがばりと抱きしめ、耳元でそんな事を呟くのだった。
そして日曜が過ぎ、週明け月曜日。
いつも通りに仕事は進み、佐久間君もあいも変わらぬ鬼上官ぷりを発揮して、次々と仕事の依頼が舞い込んでくる。
けれど1人妙に佐久間君を意識してしてしまう私は、益々その「通常通り」の鬼上官に、困惑を隠せないでいるのだった。
佐久間君と視線が合えば顔が真っ赤になるし、書類を手渡す際にふと指先と指先なんて触れてしまえば、妙に甘い刺激が身体を襲い、ブルリと思わず震えてしまう。
なんだなんだ。一体これはなんなんだ。
自分の説明つかない揺れる感情もさる事ながら、なんであの佐久間君は、なんともない顔をしているのだろう。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、そんな調子で火水木と曜日は流れ、本日金曜日。
またしても終業時間間際に佐久間君がオフィスに飛び込んできた。
「先輩、申し訳ないですけど、急ぎで書類対応お願いできませんか?」
ええーまたあ?
2週続けての急な依頼に正直うんざりするところではあるが、これも仕事だ仕方がない。
帰り支度を止めた私は再び椅子に腰掛けると、資料を貰って作業を開始するのだった。
――
週末ともなれば残業する人も殆ど無く、今となっては佐久間君と私の二人きり。残業開始から2時間後、ようやく作業は終了したのだった。
「先週に続いて今週も、残業対応ありがとうございました。」
ニコリと良くできましたとばかりに微笑む佐久間君。
先週……。
そうだ。先週の話題を出しておいて、なんで佐久間君は何事も無かったような顔をしているのだろう。
なんでこちらの気持ちをこんなに乱しておきながら、彼はあんな涼しい顔でいられるのだろう?
残業の疲れも相まって、思わず苛ついてしまった私はつい棘々しい口調で佐久間君の言葉に反応してしまうのだった。
「佐久間君、なんともない顔をして先週の話題なんかするけど、先週ここで、何があったか忘れちゃったの?」
……しまった。
感情の昂りのせいか、恨みがましい一言がつい口をついて出てしまった。
一瞬後悔の念がよぎるが、一度吐き出してしまった気持ちは止まらない。
「大体なんなの?!先週私に好きだなんて言っておいて、なんでなんともない顔してんの?!こっちなんてあれからずっと佐久間君のこと、意識しちゃってるっていうのにっ!」
思わずギャンギャンと噛みつくと、佐久間君は少し驚いたように目を丸くさせ、その後ちょっと照れくさそうにニヤリと笑うのだった。
「……先輩、俺のこと、意識してくれてたんですか?……じゃあもしかして、俺のこと、ちょっとは好きになっちゃいました?」
嬉しげな口調でそんなことを言われてしまうと、なんだか急に恥ずかしくなってきてしまう。
「ち、違う!そうじゃなくって……!!」
と、慌てて否定の言葉を口にすると、佐久間君は急に表情を変え目を怪しく光らせる。
コツリコツリと私の周りを歩き回ると、
「ふーん。……じゃあ先輩、もしかして、もう一度俺にこんなことされたかったんですか?」
私を背後からがばりと抱きしめ、耳元でそんな事を呟くのだった。
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