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色とりどりのドレスを着飾った令嬢が父親にエスコートされて、入城してくる。
ホワイトの横に並び立つロアンヌのことは、初めからいないものとして無視するかのように、王妃ではなくても、ロアンヌは王太后としての地位もあるはずなのに……。
どうせお飾りですわ。対外的には、お飾り王妃兼ステージママと言ったところか。
それでも、名前だけでも王妃のロアンヌを無視するとは、いい度胸をしているわね?もし、ロアンヌから王妃の座を奪ったとして、離婚されたとしても、ホワイトの母には変わりがなく、姑の立場になるわけですよ。そこのところ、ご理解されているのかしら?
ロアンヌは、姑根性をむき出しにして、つま先から頭のてっぺんに至るまで、それぞれの令嬢を値踏みするかのように吟味していくことにする。
それに対して、不快感をあらわにする令嬢の多いことと言ったら、ほとんどが、今まで何を勘違いしていたのか、ロアンヌのことをライバル視していたくせに、急にロアンヌが姑根性を出した途端、手のひらを変えて、すり寄ってくる。
ロアンヌに気に入られなければ、王妃どころか婚約者にも、側妃の道もないということをその時にあらためて思い知ったようだった。
それというのも、父親が令嬢に耳打ちするまでは、生意気にもロアンヌのことを完全無視していたくせにぃ!腹が立つと言ったら、ありゃしない!
ホワイトは横に立つ母の心情を知ってか知らずか、令嬢の行列に一瞥をくれ、後は適当にいなしている。
そのうちの誰か一人の令嬢と誰とも踊ろうとしない態度は、いささかロアンヌを呆れさせる。
「どなたかと踊ってきなさいよ」
小声で言うも、ホワイトもまた聞こえないふりをして、無視を決め込む。
ああ。どいつもこいつも人の話をまともに聞こうとしない。諦めかけた時、不意に、ホワイトが立ち上がり、ロアンヌに手を差し伸べてきた。
え?何よ?
それは、ホワイトのファーストダンスの申し込みだった。そうだった令嬢から適しばかりされて、クタクタになっていたから、ファーストダンスを踊ることを忘れ去っていたのだ。
顔から火が噴きだしそうになるぐらい真っ赤になって、ホールのセンターへ行く。ホワイトと初めて踊ったけれど、息もぴったりで、さすが母子と面目躍如の思い。
陛下御夫妻が躍らなければ、誰も踊りたくても踊れない決まりがあるということを忘れていた。
今までは王太子妃だったので、その辺のタイミングはすべてリチャード任せにしていた。それが今や我が子にエスコートされ、リードされる日が来るとは……感涙にむせぶロアンヌ。いや、今は戦闘の真っ最中、王妃をめぐる女の闘いの真っ最中なのだ。こうしてはいられない。新たな戦いが勃発してしまった以上、受けて立つのが王妃としてのけじめなのだ。
がぜん、張り切り出したロアンヌをしり目に、王妃の椅子まで案内してくれたホワイトはロアンヌにくるりと背を向け、令嬢の輪の中に飛び込んでいく。
へ?どういうこと?
どうやら、令嬢の中に木になった娘がいたようで、その娘と踊りたいらしい。チクショウ!夜は、いつも激しすぎるぐらいロアンヌを求めてくるが、やはり若い娘の魅力には敵わないか?
結局、ホワイトも一人のどこにでもいる男に変わりがない。今まで、ホワイトを神格化してみてきたロアンヌは、自分の浅はかさを後悔する。
そしてその夜、ついに閨を共にしない夜が来てしまう。ロアンヌとのことは、単なる性欲処理の一環だったということを思い知り、一人枕を濡らすロアンヌ。
pmピ起こせば、17歳の時に婚約者だったロバート・クレメンタインを失い、乞われるがままに王太子リチャード・ピューリッツの側室として、結婚し、ウイリアムを産む前に、正妃となり、フランシスコを設け、その後、神の子ホワイトを出産する。そして夫であったリチャードが頓死、ホワイトが即位して、ホワイトの閨の教育係になってしまったことで、王妃に就任したのだが、その座を追われるのも風前の灯火となり、もはや時間の問題となってしまった。
この3年間で、ロバート、リチャード、ホワイトと3人の男たちに翻弄され、傷ついてばかりだったと思い起こす。
本当に誰か一人を愛するということを知らないまま……これでいいのだろうか?ホワイトの王妃の前にウイリアム、フランシスコという2人の王子の母でもあるのだが、今はもう自信をいとも簡単に手放してしまっている。
そこへ一陣の風と共に現れたのがロバートの幽霊で。
「遅れてしまって、すまない。俺と一緒に行こうよ」
「え?どこへ?」
「天国だよ。楽しいところだ」
「でも、ウイリアムやフランシスコを置いて逝けないわ」
「大丈夫だよ。あの二人なら。だって、ピューリッツの宝でしょ?それより、天国で新しい白馬を買ったんだよ。背中に折りたたみの羽が付いていてさ、それをロアンヌに見せたくて、今日、連れてきたんだ」
「え?本当?見たいわ。わぁ、可愛い。本当に真っ白ね、名前はなんていうの?」
「雌馬だから、ロロにしたんだ」
「え……、っもう!ロビーったら……」
ふいに、ロバートに抱きしめられ唇を奪われる。もう、それだけでドキドキしてしまって、夢見心地になってしまう。
そのまま、ロバートに手を引かれ、バルコニーから身を躍らせた。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
夜会の後、急逝したロアンヌ王妃は、自殺か事故死か、と大騒ぎになった。
ただ、死に顔は美しく、微笑んでいるような顔をしている。
ホワイトは、その場に膝をつき、何時間もの間、ロアンヌとの別れを惜しむ。
ほんのちょっとした自分の浮気心のせいで、愛する女性でありながら、大切な母親、それでいながら姉のような若さと美貌を持った女性を永遠に失ってしまったわけで、もう幼な子に戻れない自分を恥じ、悔いた。
ホワイトは、一定のところまで年齢を重ねた後、一切年を取らなくなり、成人した兄のウイリアムに王位を譲り、隠居してしまう。
なお。ホワイトはロアンヌ以外に王妃を娶らず、その生涯を独身のまま過ごしたと言うが、彼の功績には、さすが神様と言われるほど、素晴らしいものばかりであり、後にも先にも彼ほどの賢王は存在しないと言われるほど立派な人物として、語り継がれている。
ホワイトの横に並び立つロアンヌのことは、初めからいないものとして無視するかのように、王妃ではなくても、ロアンヌは王太后としての地位もあるはずなのに……。
どうせお飾りですわ。対外的には、お飾り王妃兼ステージママと言ったところか。
それでも、名前だけでも王妃のロアンヌを無視するとは、いい度胸をしているわね?もし、ロアンヌから王妃の座を奪ったとして、離婚されたとしても、ホワイトの母には変わりがなく、姑の立場になるわけですよ。そこのところ、ご理解されているのかしら?
ロアンヌは、姑根性をむき出しにして、つま先から頭のてっぺんに至るまで、それぞれの令嬢を値踏みするかのように吟味していくことにする。
それに対して、不快感をあらわにする令嬢の多いことと言ったら、ほとんどが、今まで何を勘違いしていたのか、ロアンヌのことをライバル視していたくせに、急にロアンヌが姑根性を出した途端、手のひらを変えて、すり寄ってくる。
ロアンヌに気に入られなければ、王妃どころか婚約者にも、側妃の道もないということをその時にあらためて思い知ったようだった。
それというのも、父親が令嬢に耳打ちするまでは、生意気にもロアンヌのことを完全無視していたくせにぃ!腹が立つと言ったら、ありゃしない!
ホワイトは横に立つ母の心情を知ってか知らずか、令嬢の行列に一瞥をくれ、後は適当にいなしている。
そのうちの誰か一人の令嬢と誰とも踊ろうとしない態度は、いささかロアンヌを呆れさせる。
「どなたかと踊ってきなさいよ」
小声で言うも、ホワイトもまた聞こえないふりをして、無視を決め込む。
ああ。どいつもこいつも人の話をまともに聞こうとしない。諦めかけた時、不意に、ホワイトが立ち上がり、ロアンヌに手を差し伸べてきた。
え?何よ?
それは、ホワイトのファーストダンスの申し込みだった。そうだった令嬢から適しばかりされて、クタクタになっていたから、ファーストダンスを踊ることを忘れ去っていたのだ。
顔から火が噴きだしそうになるぐらい真っ赤になって、ホールのセンターへ行く。ホワイトと初めて踊ったけれど、息もぴったりで、さすが母子と面目躍如の思い。
陛下御夫妻が躍らなければ、誰も踊りたくても踊れない決まりがあるということを忘れていた。
今までは王太子妃だったので、その辺のタイミングはすべてリチャード任せにしていた。それが今や我が子にエスコートされ、リードされる日が来るとは……感涙にむせぶロアンヌ。いや、今は戦闘の真っ最中、王妃をめぐる女の闘いの真っ最中なのだ。こうしてはいられない。新たな戦いが勃発してしまった以上、受けて立つのが王妃としてのけじめなのだ。
がぜん、張り切り出したロアンヌをしり目に、王妃の椅子まで案内してくれたホワイトはロアンヌにくるりと背を向け、令嬢の輪の中に飛び込んでいく。
へ?どういうこと?
どうやら、令嬢の中に木になった娘がいたようで、その娘と踊りたいらしい。チクショウ!夜は、いつも激しすぎるぐらいロアンヌを求めてくるが、やはり若い娘の魅力には敵わないか?
結局、ホワイトも一人のどこにでもいる男に変わりがない。今まで、ホワイトを神格化してみてきたロアンヌは、自分の浅はかさを後悔する。
そしてその夜、ついに閨を共にしない夜が来てしまう。ロアンヌとのことは、単なる性欲処理の一環だったということを思い知り、一人枕を濡らすロアンヌ。
pmピ起こせば、17歳の時に婚約者だったロバート・クレメンタインを失い、乞われるがままに王太子リチャード・ピューリッツの側室として、結婚し、ウイリアムを産む前に、正妃となり、フランシスコを設け、その後、神の子ホワイトを出産する。そして夫であったリチャードが頓死、ホワイトが即位して、ホワイトの閨の教育係になってしまったことで、王妃に就任したのだが、その座を追われるのも風前の灯火となり、もはや時間の問題となってしまった。
この3年間で、ロバート、リチャード、ホワイトと3人の男たちに翻弄され、傷ついてばかりだったと思い起こす。
本当に誰か一人を愛するということを知らないまま……これでいいのだろうか?ホワイトの王妃の前にウイリアム、フランシスコという2人の王子の母でもあるのだが、今はもう自信をいとも簡単に手放してしまっている。
そこへ一陣の風と共に現れたのがロバートの幽霊で。
「遅れてしまって、すまない。俺と一緒に行こうよ」
「え?どこへ?」
「天国だよ。楽しいところだ」
「でも、ウイリアムやフランシスコを置いて逝けないわ」
「大丈夫だよ。あの二人なら。だって、ピューリッツの宝でしょ?それより、天国で新しい白馬を買ったんだよ。背中に折りたたみの羽が付いていてさ、それをロアンヌに見せたくて、今日、連れてきたんだ」
「え?本当?見たいわ。わぁ、可愛い。本当に真っ白ね、名前はなんていうの?」
「雌馬だから、ロロにしたんだ」
「え……、っもう!ロビーったら……」
ふいに、ロバートに抱きしめられ唇を奪われる。もう、それだけでドキドキしてしまって、夢見心地になってしまう。
そのまま、ロバートに手を引かれ、バルコニーから身を躍らせた。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
夜会の後、急逝したロアンヌ王妃は、自殺か事故死か、と大騒ぎになった。
ただ、死に顔は美しく、微笑んでいるような顔をしている。
ホワイトは、その場に膝をつき、何時間もの間、ロアンヌとの別れを惜しむ。
ほんのちょっとした自分の浮気心のせいで、愛する女性でありながら、大切な母親、それでいながら姉のような若さと美貌を持った女性を永遠に失ってしまったわけで、もう幼な子に戻れない自分を恥じ、悔いた。
ホワイトは、一定のところまで年齢を重ねた後、一切年を取らなくなり、成人した兄のウイリアムに王位を譲り、隠居してしまう。
なお。ホワイトはロアンヌ以外に王妃を娶らず、その生涯を独身のまま過ごしたと言うが、彼の功績には、さすが神様と言われるほど、素晴らしいものばかりであり、後にも先にも彼ほどの賢王は存在しないと言われるほど立派な人物として、語り継がれている。
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