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いちひめ神社

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 一姫神社で殺されていた女の人は、やはり神社の巫女さんだったけど、いちひめ神社の巫女さんではなく、近くの神社の巫女さんだった。どうして、いちひめ神社で殺されたのか疑問に残る。

 姉小路御幸が目撃した車種から、すぐに容疑者が割り出せたのだが、本人は否定している。いちひめ神社へ呼び出され、行ったときにはすでに亡くなっていたそうである。

 「だったら、なんで逃げるんだ?」

 「自分が疑われるかもしれないと思ったから。」

 被害者の巫女さんとは、幼馴染で相談があると言って被害者から呼び出されたらしい。
 被害者の巫女さんの名前は、村崎カンナ20歳。BMWの容疑者?は国友博之20歳の大学生。

 姉小路御幸は、今度のことは事件とは関係ない。第1発見者であるというだけで、事件とは全く関係がないので、自分のご依頼のことだけを考えて行動する。

 ということで、また中央市場に戻る。もう、次から次へと成仏したがってる霊がこれでもか?と思えるぐらい行列して出てくるわ。出てくるわ。

 もうこうなれば、「ハイ次。」「ハイ次。」という感じでやるしかない。清水寺とは、またタイプが違う霊みたい。

 そうこうしているうちに、もうすっかり殺人事件の第1発見者だったことも忘れてしまっていて、京都府警が訪ねてきても「何か用?」の反応に、知り合いの刑事さんが怒る。

 「だって、こっちの仕事が満員御礼だったから、仕方ないでしょ?」

 「ほかに何か見なかったか?」

 「そう言われてもね。……いちひめ神社に着いた時から、ずっと血の匂いがしていたから。うん。やっぱりわからない。」

 「ゆっくり思い出してみ。」

 「そういえば、枳殻邸のあたりから、血の匂いがしていたような気がするわ。犯人は、枳殻邸のほうへ逃げたような気がする。」

 姉小路御幸は中央市場から自転車で移動していたのである。京都は道が狭いから車で置くところ(コインパーキング)を探すより、自転車で移動したほうが早いし、楽であるから。それに一方通行の心配もしなくていいから。京都御所から徒歩で30分も行けば、たいていのところに行けるという近さでもあるから、自転車での移動が多い。

 「よっしゃ。おおきに。」

 「せわしないな、さて、お仕事しよう。」

 京都府警は枳殻邸界隈で聞き込みをした結果、すぐまた容疑者が浮かんできたのである。村崎カンナにストーカーしていた男が浮上してきた。枳殻邸近くの側溝から、凶器と思われるナイフが出てきたのである。

 犯人は、村崎カンナが務めている神社の近所に住んでいた男で、村崎カンナに一目ぼれして言い寄っていたが、断られたためにかっとなって犯行に及んだらしい。仲野健一28歳、新型風邪の影響で失業中だったらしい。
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