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家でお泊まり2
しおりを挟むなんと、このマンションにはロビーにコンシェルジュがいる。そこへ専用タブレットで食べたい物を選び時間指定をして送信すると、コンシェルジュが店側への注文から受け取りまでして、更には各部屋へと運んでくれるのだ。
これで店側に部屋番号を知られる事もない。すごい。俺も芸能人みたい!
「それで頼むのがピザな」
「うっ、ピザも立派なイタリアンです!」
確かに、こんなマンションに住んでいたら老舗のお寿司や和食を頼むのが似合うかもしれないけど。
「ピザの出前、取ってみたかったんですよ」
高校の頃に一度だけ友人の家に遊びに行った時に、ピザの出前を取ってくれた。その値段を見て驚いたのだ。スーパーの特売で買う冷凍ピザの、十倍。
その日は余るくらいにピザがあって、みんなで一緒に食べて、美味しくて、楽しくて。いつか俺も、と思っていたのだ。
「そっか。じゃ、ハーフのやつにするか?」
「何ですかその贅沢なのは」
「四種のもあるぞ」
「な、なんてこと……」
優斗の反応に、隆晴が吹き出す。いや、だって、一枚のピザに四種類の味とか。しかも二人なら全種類食べられる。神のピザかな。
うっかり口に出したら、隆晴は肩を震わせて笑い出した。
「じゃ、これとハーフのと、チキンと、飲み物どうする?」
「ピザにはコーラだと聞きました」
「どこ情報だよ。いや、合うけど」
隆晴は慣れた手付きでタブレットを操り、注文を終えてしまう。さすがハイスペック。しかも。
「先輩の手、男らしくてかっこいいですよね」
指も長くて、筋張っているところが大人の男という感じで格好良い。ジッと見つめていると、隆晴に手を取られするりと指を絡められた。
「優斗は、可愛いな」
「!?」
「驚いた顔も可愛い」
「かっ、わいくないですからね!?」
「そういうとこが可愛いっての」
「っ……先輩、大学に入ってからチャラくなりましたよね」
「まあ、お前にだけな?」
ちょっと意味が分からないがツッコミを入れてはいけない気がする。グッと言葉を飲み込むと隆晴はまた笑った。
「あの、先輩、手を……」
何故繋がれたのか、いわゆる恋人繋ぎ。指先で手の甲を撫でられ、擽ったさに手を引いても隆晴の力に勝てるわけもなく。
「お前の手って、こんな小さかったっけ?」
「標準的ですよっ? 先輩が大きいだけです」
ムッとして言い返す。その間にも隆晴は優斗の手をするすると撫でながらジッと見つめている。
「先輩?」
どうしたのかな、と思っていると……、チュ、と優斗の指に唇が触れた。
「っ……な、……」
驚愕のあまりポカーンと口を開けてしまった。こんなドラマのような事を、直柾ではなく隆晴がするなんて。
唖然としていると、隆晴はハッとして顔を上げた。
「あ、悪い。つい」
「~~っ、ついって何ですか! やっぱり先輩チャラくなってますよ!」
「あー……、まあ、なんだ、お前の手がなんか可愛く見えて?」
「標準的ですからね!?」
「悪かったって」
怒る優斗に苦笑しながら、ようやく離した手でポンポンと頭を撫でる。
「そういや、注文って何時まで?」
「俺まだ怒ってる途中なんですけど……。確か、24時間です」
「じゃあ、夜食は後から頼むか」
「夜食、何にします?」
「気が早ぇよ」
切り替えも早い、と笑いながら優斗の頭をまた撫でる。
「ってか、久しぶりにお前の作ったのも食いたいんだけど」
「じゃあ、朝は俺が作りますね。リクエストあります?」
「甘い卵焼き」
即答。優斗は小さく笑った。昔から隆晴は甘い卵焼きが好きだった。
たまに優斗の家で食べる事もあったが、大抵は昼休みに、隆晴が自分の弁当の中の何かと優斗の卵焼きを交換してくれと言って来た。懐かしい思い出だ。
「あ、味噌汁もな」
「了解です」
確か玉葱とワカメがあった筈。そういえば冷凍の鮭も買っていた。明日はそれも焼こう。
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