21 / 30
21
しおりを挟むここは、黒騎士団の屯所だ。
あれからラファの転移魔法でここに移動して来たのだが、夜中にも関わらず何故か黒騎士団の団員達は広い集会所に集まっていた。
周りを見渡すと、全員団員達は俺に釘付けだった。
やはり異世界人の噂が広まっているからだろうか。
嫌な視線も感じるが大体の団員は興味本位で見ていた。
まぁ…後これだよな。
「なぁ…ラファ」
「なんだ?」
「なんで俺達…手を繋いでいるんだ?」
「内緒…」
そう、俺達はここに来てからずーっと手を繋いでいる。まるで見せつけるかのように。
恥ずかしいわけじゃないが、違和感しか感じない。
男2人が手を繋いでラファの部下達であろう奴らの前に立っているのだから。
「さて、そろそろ話をしようか」
急にラファは真剣な顔になり、事あろうか俺の肩を自分の方に引き寄せた。
「皆聞け!!今日から2週間この黒騎士団の客人になる異世界人様だ!!敬意を払って接せよ!わかったな!!」
客人…あれ???なんか話が違う方向に。
確か俺を調査するとかなんかだったよな。
「シーっ事情は後話すから」
囁く声で俺の耳元でコソリとそう言った。
くっ。なんだこいつの声やたらと色気が含まれた低音ボイス。
「というわけで、ぶっちゃけ俺の客人だからな俺も丁重に饗すつもりだ!!間違っても手を出そうとするなよ?手を出したものは罰を与えるからな!心しておけ?」
「はっ!!!!」
一斉にそう返事をするのだった。
その言葉の後は熱視線を感じることはなくなったものの、まだ何者かの視線を感じた。
「……おい」
その視線に執拗にイラッとしてしまった俺はラファの肩に触れる手を払って、その視線を向ける奴の前に立ちはだかり胸倉を掴んだ。
俺より身長は少し高いくらいか。
髪型は赤と白のツートンカラーで奇抜な色だった。
一重瞼でつり目の男。やたら喧嘩売られた気分で腹が立った。
「なっ…なんだよ!!!」
「お前こそなんだ?あ?文句あるなら堂々と言ってこいやっ!!」
威嚇するように胸倉を掴んだ途端その男は一瞬1歩下がろうとした。だが俺はそれを許さないさらに自分の方に力一杯引く。
「うっ?!は、放せよ!!」
相手は焦った様子で手を引き離そうとするが、俺も結構力がある方で、なかなか離せないみたいだ。
ドカッ!!!
「い゛っ?!!」
次の瞬間目から火花が飛び散る。
頬を拳で殴られたのだ。
頭に血が上った俺は胸倉から手を離すとそいつの顔面に蹴りを食らわす。
そいつは俺の蹴りの反動でその場に倒れ込む。
「いってぇえなぁああ!!何してくれてんだてめぇ、口の中切れちまったじゃねぇか」
「お前が放さねぇからだろ……あ……」
そいつは反論したくせに俺の背後を見た途端顔が青ざめた。
「そこまでだ…アッシュ。お前さっき人の話聞いてたか?異世界人様は客だと言った、その客に対してまさかの暴行とは……」
「申し訳ございません団長…」
「まさかの副団長がこういう惨事を起こすとは…降格だな」
こいつ副団長だったのか。この喧嘩如きで降格とかどんだけ厳しいんだ。いやでも俺が最初に喧嘩ふっかけてしまったわけだし。
「ラファすまん、俺が最初に喧嘩ふっかけたからコイツは悪くない許してやってくれ」
手を合わせて怒りの矛先をアッシュに向けているラファに謝る。
アッシュに向き直ると、俺は下に座り込んでいるアッシュに手を差し出す。
一瞬面食らったかのような顔をしたもののその手を掴んだ。
「お前の拳なかなかだったぜ。また喧嘩しよーや」
ニッと笑うと、何故かアッシュは目を逸らした。
その顔は、少し照れている表情に思えた。
「今回は桃太に免じて許してやる、次はないと思え?」
「はい、肝に免じております」
一件落着という事で、この沈黙した空気どうしたものか。俺もそういえば自己紹介まだだったな。
俺は団員の前に立ち思いっきり息を吸った。
「俺は柊桃太だ!!気軽に桃太って呼んでくれて構わない、2週間お世話になります!よろしくな!!ちなみに敬語は不要!!」
一瞬シーーーンとなったものの、急に大きい拍手喝采に見舞われた。
わー!!!桃太さんかっこいい!!
異世界人万歳!!!
何故か皆に気に入られてしまった。
ふとラファを見るとクックッと笑っていた。
アッシュは頬に俺の靴あとが付いた顔で俺を呆然と見ていたのだった。
31
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる