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5巻
5-2
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「ん……あっ……く……」
部屋の中にクロードの声が響く。
ワシはいつもの三倍近い出力で、クロードの魔力線を弄っている。普段は声を押し殺しているクロードも真っ赤な顔で汗を流し、目に涙すら浮かべながら耐え忍んでいた。
枕を両手で抱き締め、シーツを噛みながらできるだけ声を出さぬようにしているのだが、それでも身体は動いてしまうのか、時折ベッドがぎしぎしと揺れる。
「無理するなよ? クロード」
「……っ……は……い……」
玉のような汗を浮かべ、苦悶の表情を隠すように無理に笑おうとするクロード。
やはり相当きついようだ。
ちなみにシルシュはというと、その様子を顔を真っ赤にしながら見ていた。
以前のように暴れ出さぬよう、ロープで緊縛してある。
まずは視覚から慣れさせていかねばならないからな。
これを続けていれば、少しは慣れるはずだ。
「んあっ……!」
クロードが枕に顔を埋めたまま、声を上げた。
ワシが手を動かすたびに身体を大きく震わせている。刺激が強すぎるのだろう。
だからあまり気が乗らなかったのだが。
「クロード、もうやめたほうが……」
「だ、いじょうぶ……ですから……っ! ……最後まで……!」
そうは言うが、シルシュのほうが限界のようだ。
シルシュの顔は熱に浮かされたようにぼんやりとしている。
顔から湯気が出ているぞ。
刺激が強いか。まだシルシュに魔力線の操作はしないほうがいいな。
だがクロードも満足させてやらねばならないだろうし、シルシュの耐性もつけなければならない。今日はちゃんと最後までしてやるとしよう。
縛られたシルシュが見守る中、クロードの声は一晩中響き続けたのであった。
◆ ◆ ◆
――そして朝になり、ワシはミリィ、レディアとともに朝食を取っていたのだが、まだクロードたちが起きてくる気配がない。
ミリィがジト目でワシを見てくる。
「またゼフが何かしたんでしょ……昨日は私の部屋まで声が聞こえて来たわよ」
「クロードがどうしてもと言うからな……」
「へぇ~、どうしても……ねぇ」
疑いの目を向けつつ、ずずずとスープをすするミリィ。
ったく、自分だってどうしてもとか言ってきたくせに。
「あっはは、まぁいいじゃない。食事が済んだら買い物でもして待ってましょうよ」
「そうだな」
ワシはレディアに向かって頷いたのだった。
……結局二人は朝食の間に起きてこなかった。昼頃、ワシがレディアの露店巡りに付き合っていたときに、やっと念話をかけてきたのである。
《す、すみません……おはようございます。ゼフ君……》
《おはようクロード。身体の調子はどうだ?》
《ぁ……ぅ……それがまだ……その……》
昨日のことを思い出して恥ずかしくなったのか、消え入るような声のクロード。
《シルシュはまだ寝ているのか?》
《はい。シルシュさんは、あの後ベッドに運ぼうとしたらボクに襲いかかってきて……な、何笑ってるんですか! 大変だったんですから、もぉ~っ!》
《くっくっ……すまんすまん》
我慢できず、つい噴き出してしまう。
そう言えば以前、発情したシルシュがクロードに襲いかかってきて、引き剥がすのに苦労したっけか。
《それで、身体は大丈夫か?》
《ん~そうですね……まだ少し痛みますけど、大丈夫だと思います》
声の感じからして、そこまで問題はなさそうだ。
少し加減はしたのだが、一方でクロードの耐性も上がってきているのだろう。
《もう昼過ぎだし、狩りは明日からにしておこう。今日はゆっくり休んでおけ》
《はい》
クロードとシルシュか。二人の仲が良いのはいいことだが、やはり魔力線を弄る際には少し注意が必要かもしれない。
といっても仲良しの二人を引き離すのも可哀想だ。
そうだな……シルシュは限界までいったらスリープコードで眠らせるか。
まぁ今日の夜、色々試してみるとしよう。
「クロード達は今日は休みだ」
「あっはは、前やったときは何日か足腰立たなかったもんねぇ……じゃ、今日はゼフっちとミリィちゃんには私の買い物に付き合ってもらいますか~」
「私の袋、パンパンでもう入らないんだけど……」
「これ以上入らないのなら、ミリィが不要品を溜め込むこともないだろう?」
「うっ……」
「あっはは♪」
レディアは口をつぐんだミリィの頭をぽんぽんと撫でると、ワシらに紙を手渡した。
紙にはアイテムの名称と、値段が書いてある。
「これ以下で売ってるのがあったら、買っておいてね。お金は後で渡すから」
「うん」
「ワシはミリィと一緒に行くよ。これだけ人がいると迷子になるだろうしな」
「な、ならないしっ!」
「おっけーわかった。じゃあ手分けして、ね」
文句を言うミリィの手を引き、ワシはレディアに手を振って一旦別れた。
クジアイテムの相場は昨日より若干落ちており、思った以上に安く、かつ大量に仕入れることができた。レディアが所持金の半分を残しておいてよかったな。
昔、露店を駆け回って転売をしていた頃の経験が生きたか。
結局本日は、所持金の三割を使い、転売品を仕入れることができたのである。
2
昼頃になり、ワシらは昼食を食べながら話し合っていた。
「これからしばらくは、相場が安定するでしょうね~」
「経験上、か?」
「そんな大層なもんじゃないわよ。運次第なとこも大きいし……ダメだったらゴメンね」
「失敗したらまた稼げばいいだけの話だ。レディアに任せたのだから文句は言わんさ」
レディアの方を見て笑うと、照れ臭そうにはにかむ。
「怖いね~ゼフっち。失敗したら何をやらされるやら……」
「ゼフ、変なことしちゃダメだからね!」
まだ何も言っていないというのに……
理不尽な扱いにため息をつきながら宿へと向かう。
まあこれで、あとは値上がりするのを待つだけである。
今度は狩りで金を稼がねばなるまいな。
「明日は狩りだ。稼ぎまくるぞ」
「うんっ! なんか久しぶりだね!」
「この前は私らお留守番だったからねぇ」
大きく伸びをするミリィとレディア。二人ともやる気満々といった感じだ。
「クロード、シルシュ、二人とも大丈夫か?」
宿の客室の扉を開けるなり、ワシは声をかける。
「えーとその……はい」
「で、ですね……あはは……」
真っ赤な顔で答えるクロードとシルシュ。何はともあれ復活したようだ。
金銭狩りなら、丁度心当たりがある。
こいつを使えば特に、稼ぎやすい場所がな……くっくっ。
先日、ハティベアとの戦闘で手に入れた月光の籠手。
スティールの魔導を使えるこれが役立つ狩場があるのだ。
◆ ◆ ◆
――首都プロレアから南へ一時間ほどテレポートで移動したところに、一つの街がある……いや、あった。
その昔、魔導以外の技術の研究を推進していた街、ティロス。
ここでは魔導を使えぬ者がそれに対抗すべく、様々な技術を学び、発展させてきた。
その中の一つが自動人形である。
金属でできた人形を、まるで意思があるかのように動かすという技術だ。
子供のおもちゃを作るという名目で行われていた自動人形研究は、街の権力者がそれを気に入ったことで一気に技術が進歩した。
最初はお茶運びや機織りくらいしか用をなさなかったが、次第にそれは重火器を装備し、荒れた地でも走り回る兵器となった。
自動人形は進化に進化を続け、高い戦闘能力を持っていった。
そこに目をつけたティロスの権力者は、自動人形を量産して街を要塞化しようとしたのだが、その目論見が魔導師協会に見抜かれて工場と研究所が破壊されたのである。
研究者たちも捕まり、魔導師協会はこれらの技術を闇に葬った。
街の唯一の産業である技術研究が潰され、人のいなくなったこのティロスは、いつしかダンジョンと化したのである。
雪のちらちらと舞い落ちる廃墟となった街、それがワシらの今回の冒険の場だ。
「何か寂しいところね……」
「元々人が住んでいたところですし、人の消えた風景というのは不気味ですよね……」
「あっはは~、ここにお化けは出ないって、ゼフっちが言ってたじゃないさ。クロちゃん」
震えるクロードを背中から抱いてからかうレディア。
さらにクロードの耳に口を近づけ、脅かすように呟く。
「でもそれはゼフっちの嘘でさ……本当は『いる』のかもしれないけどねぇ……?」
「ひっ!?」
レディアの脅かしに、クロードはすっかりビビってしまっている。
まったく、やめてやれよ……。クロードも怖がり過ぎだ。だからレディアが面白がるのだぞ。
ワシはあっははと笑うレディアを小突いた。
「……ティロスの奥にある廃工場が今回の狩場だ。ここの魔物はすべてそこで生産された自動人形のなれの果てで、霊体系のものは全くいない。安心しろクロード」
ワシの言葉に、安堵の息を吐くクロード。
だがここの魔物は霊体型の魔物とは別の意味でやりづらい。安心するのは早いと思うぞ。
寂れた街を歩き、中心にあるティロス廃工場へと向かう。
この工場が一番魔物が湧くポイントであるが、街にも少しは生息している。注意が必要だ。
「シルシュ、物陰から魔物が出てくるかもしれないからな。警戒を頼む」
「は、はい……」
シルシュもちょっとビビッているようだ。先ほどレディアに脅かされたからだろう。索敵のために前に出るも、足どりは鈍い。
レディアをじろりと睨み付けると、目を逸らして口笛を吹く。
まったく困ったものだな……
「街に出る魔物は特殊な遠距離攻撃を仕掛けてくる。銃弾というもので、連射はできんが高い威力を――」
ふと立ち止まったシルシュの背に、ワシはぶつかってしまった。
シルシュは少し身を沈め、辺りを探るように耳をぴこぴこと動かしている。
「魔物、です。一体だと思います」
シルシュの声に従い、レディアとクロードが前方に素早く飛び出す――が、その一瞬の隙を狙い、遠くから銃声が聞こえてきた。
刹那、隣にいたレディアの瞳孔が開き、その手がひゅおと空を切る。
白い残像を残し、シルシュの眼前でレディアの手が止まる。その手が掴んだのは、小さな鉄の塊。
レディアの手に装備されたグローブからは、摩擦によるものか、一筋の煙が立ち上っている。
一連の動作をギリギリ目で捉えられたのはワシだけらしく、他の皆は何が起こったのかわかっていないようだ。
「あっちち」
能天気なレディアの声で、やっと時間が動き出す。
レディアは手にした小さな鉄の塊を手のひらの上で転がしていた。
アレを素手で掴み取るとは……相変わらず凄まじい運動能力だな。
「これがゼフっちの言ってた銃弾ってヤツか。確かに厄介だねぇ~」
「その厄介なものを素手で掴んでしまう者がいるらしい」
「あっはは……人を化け物みたいに言わないでほしいなぁ~」
からからと笑いながら、レディアは銃弾を投げ捨てて大斧を抜き放つ。
レディアの視線の先を見ると、兎の耳が生えた少女の人形が立っていた。兵隊のような格好をしている。
ヤツがこの銃弾を放った魔物だ。
発見と同時に、スカウトスコープを念じる。
ラッキーラビ
レベル68
魔力値
21658/21658
ティロスの魔物、ラッキーラビ。
打ち捨てられた自動人形にダンジョンの魔力が宿り、動き出した魔物である。
その手に持った装飾銃は連射こそできないが、長い射程と高い攻撃力を持つ。
うさ耳の軍服少女という愛らしい外見は相手を油断させるためのモノなのであろうが、当然そんな見た目に惑わされるワシではない。
しかし遠い……! 魔導の射程外だな。
シルシュが感じ取った気配はラッキーラビ一体のみ。
とはいえ、下手にミリィたちがついてくると、敵から攻撃を食らう恐れがある。
銃弾はダメージが大きい。一発なら防御の魔導セイフトプロテクションで防げるが、何度も食らうと危険だ。
「皆はそこにいろ。ワシが何とかする」
走りながらブラックブーツを念じると、ワシの身体が風を纏う。
一気に軽くなった身体で――駆ける。
ラッキーラビはまだ、銃の装填に時間がかかっているようだ。
すでにセイフトプロテクションは展開済み。次の一撃は食らうかもしれないが、その頃には魔導の射程圏内だ。
これで、終わりだ……っ!
ラッキーラビの攻撃を受け、反撃を繰り出そうとした瞬間、ワシの前にはすでにレディアが飛び出していた。
――直後、ガツンという金属を叩く音とともに、ラッキーラビが地面に叩きつけられる。
あの距離を一瞬で詰めたというのか。レディア、恐るべし。
レディアの一撃を食らったラッキーラビは、すぐに起き上がり、銃に取り付けられた剣で応戦する。
だが、そんなものがレディアに当たるはずもなく、彼女はすべての攻撃に強烈なカウンターを決めていた。
がきんがきんと凄まじい音が鳴り続けるが、金属製のラッキーラビには、物理攻撃では大したダメージを与えられない。
こいつら自動人形は魔導でないと効果が薄いのだ。
ワシは宝剣フレイブランドを抜き放ち、レディアのすぐ近くまで駆け寄った。
「離れろ、レディア」
「おっけ~っ!」
ワシの声にレディアが飛び退いたのと同時に、宝剣フレイブランドで敵に斬りつけながらタイムスクエアを念じる。
時間停止中に念じるのはブルーボール、ブラックボール、グリーンボール。それらを、振るう剣から生まれたレッドボールとともに解き放つ。
――四重合成魔導、テトラボール。
金色に輝く剣の軌跡がラッキーラビの胸を貫く。
そしてそのまま、地面へと縫い留めた。
ラッキーラビの魔力はまだ尽きていない。色のない瞳をこちらに向け、銃を探そうとぎこちなく手を動かしている。
かり、と銃のグリップを引っ掻いたラッキーラビの手を踏みつけ、動きを封じた。
「ふん、抵抗などさせるかよ」
「ゼフっち……悪役みたい」
地面に磔にしたままのラッキーラビを見下ろすワシを見て、レディアは引いている。
これが戦いだ。敗者に情けなど無用である。
そして、こいつの出番。
ワシは袋から取り出した月光の籠手を装着する。
「今度は何する気?」
「ちょっとな」
月光の籠手をはめた手をラッキーラビの胸に当て、「スティール」と念じる。
するとラッキーラビの身体の中にワシの手が入っていった。
月光の籠手を装備することで使えるスティールは、魔物の体内からアイテムを盗み出す魔導。
念じることで、マナで構成された魔物の身体を透過し、本来ドロップするはずのアイテムを盗み出すことができるのだ。
「アイテムに変化する魔物の核は、倒した瞬間大きく劣化し、レアアイテムを落としにくくなる。盗んだほうがレアアイテムを手に入れやすいのだ」
ラッキーラビは、高価な装備品であるバニーネックレスをドロップする。
スティールを使うと、それを手に入れやすいのだ。
だが戦闘中にやろうものなら時間がかかる。
こうやって動きを封じていなければ、とてもではないがまともに使えない。
「うーん……なんか可哀想……」
動きを封じられ、ワシに弄られるたびにびくんびくんと震えるラッキーラビを見て、レディアが呟く。
「……む、あった」
ごぽ、とラッキーラビの身体から腕を抜くが、手に入れたものはただのネジ。
外れである。
ドロップアイテムを抜き取られたラッキーラビは、ぐったりと地に伏して消滅していく。
アイテムは魔物の核とも言える高濃度のマナを蓄えた部分が変質して生まれるモノだとされている。詳しい仕組みはわかっていないが、スティールを上手く使うことで、瞬殺も可能であることは確かだ。余程の力の差がなければ不可能だがな。
ラッキーラビがドロップしたネジを袋にしまっていると、ミリィたちが駆けつけてきた。
「大丈夫だった? ゼフ」
「あぁ、レディアのおかげでな」
「いや~ははは……それほどでもないけどにゃ~」
照れ臭そうに両腕を組むレディア。
「今の、銃というヤツでしたっけ? 相当強力だったと思いますが、こんな強い魔物が廃工場の中には一杯いるんですか?」
「遠距離攻撃をしてくるのはこいつくらいだが、ここの魔物は高い攻撃力と防御力を持つ。強敵揃いなのは間違いないぞ」
「だ、大丈夫なんでしょうか……?」
そう言ったクロードとシルシュは少々不安げだが、今のワシらならば大丈夫であろう。
昔に比べると、大分レベルアップしているしな。
「もしヤバくなったらテレポートで逃げればいいしね♪」
「そういうことだ」
ミリィの言葉に頷く。
全員にテレポートピアスを渡しているので、ピンチになっても逃げることは可能だ。
クロードとシルシュはある程度魔力があるし、レディアに関しては……まぁ最近は魔力線を鍛えているし、一回くらいなら大丈夫だろう。
最悪ワシが連れて飛べばいいしな。
街を抜けると、子供の遊び場のような場所に出た。その先には巨大な門が見える。
あれが廃工場。
ところどころ錆びた鉄が剥き出しになった門は、どこかもの悲しさを感じさせる。
「中から沢山の魔物と鉄の匂いがします」
「ティロス廃工場は北の大陸のダンジョンでは魔物の数がダントツに多い。囲まれそうになったらテレポートで逃げるんだ。奥へ行くほど魔力密度は高くなり魔物の数も増えていくが、逆に中の魔物は工場から外には出ようとしない。こっちがばらけてしまったら一旦逃げて、この門の前に集合だ」
「わかりました」
注意を促して中に足を踏み入れると、早速四足の自動人形が見えた。
五体いる。見た目はまるで鋼のクモだ。
ガーディアン
レベル62
魔力値
12109/12109
スカウトスコープを念じると、ガーディアンの機械の目がきゅいんと開く。
丸みを帯びたメタリックなボディは中々に恰好がいい。
ガシャン、ガシャンと駆動音を立てて動くそのさまは、何ともワクワクさせられるものがある。
芸術的ともいえるデザインだ。ここの技術者はきっとワシと気が合ったことだろう。
「ブルーゲイルっ!」
そんなことを考えていると、ミリィが問答無用のブルーゲイルでガーディアン三体を吹き飛ばした。
「何してんのゼフっ! ちゃんとダブルを合わせてよっ!」
「……へいへい、悪かったよ」
芸術のわからぬ奴め。
ま、ミリィの言う通り戦闘に集中しなければな。ここの魔物が強敵揃いだと言ったのはワシだ。
ため息を一つ吐き、ワシも戦闘に加わる。
部屋の中にクロードの声が響く。
ワシはいつもの三倍近い出力で、クロードの魔力線を弄っている。普段は声を押し殺しているクロードも真っ赤な顔で汗を流し、目に涙すら浮かべながら耐え忍んでいた。
枕を両手で抱き締め、シーツを噛みながらできるだけ声を出さぬようにしているのだが、それでも身体は動いてしまうのか、時折ベッドがぎしぎしと揺れる。
「無理するなよ? クロード」
「……っ……は……い……」
玉のような汗を浮かべ、苦悶の表情を隠すように無理に笑おうとするクロード。
やはり相当きついようだ。
ちなみにシルシュはというと、その様子を顔を真っ赤にしながら見ていた。
以前のように暴れ出さぬよう、ロープで緊縛してある。
まずは視覚から慣れさせていかねばならないからな。
これを続けていれば、少しは慣れるはずだ。
「んあっ……!」
クロードが枕に顔を埋めたまま、声を上げた。
ワシが手を動かすたびに身体を大きく震わせている。刺激が強すぎるのだろう。
だからあまり気が乗らなかったのだが。
「クロード、もうやめたほうが……」
「だ、いじょうぶ……ですから……っ! ……最後まで……!」
そうは言うが、シルシュのほうが限界のようだ。
シルシュの顔は熱に浮かされたようにぼんやりとしている。
顔から湯気が出ているぞ。
刺激が強いか。まだシルシュに魔力線の操作はしないほうがいいな。
だがクロードも満足させてやらねばならないだろうし、シルシュの耐性もつけなければならない。今日はちゃんと最後までしてやるとしよう。
縛られたシルシュが見守る中、クロードの声は一晩中響き続けたのであった。
◆ ◆ ◆
――そして朝になり、ワシはミリィ、レディアとともに朝食を取っていたのだが、まだクロードたちが起きてくる気配がない。
ミリィがジト目でワシを見てくる。
「またゼフが何かしたんでしょ……昨日は私の部屋まで声が聞こえて来たわよ」
「クロードがどうしてもと言うからな……」
「へぇ~、どうしても……ねぇ」
疑いの目を向けつつ、ずずずとスープをすするミリィ。
ったく、自分だってどうしてもとか言ってきたくせに。
「あっはは、まぁいいじゃない。食事が済んだら買い物でもして待ってましょうよ」
「そうだな」
ワシはレディアに向かって頷いたのだった。
……結局二人は朝食の間に起きてこなかった。昼頃、ワシがレディアの露店巡りに付き合っていたときに、やっと念話をかけてきたのである。
《す、すみません……おはようございます。ゼフ君……》
《おはようクロード。身体の調子はどうだ?》
《ぁ……ぅ……それがまだ……その……》
昨日のことを思い出して恥ずかしくなったのか、消え入るような声のクロード。
《シルシュはまだ寝ているのか?》
《はい。シルシュさんは、あの後ベッドに運ぼうとしたらボクに襲いかかってきて……な、何笑ってるんですか! 大変だったんですから、もぉ~っ!》
《くっくっ……すまんすまん》
我慢できず、つい噴き出してしまう。
そう言えば以前、発情したシルシュがクロードに襲いかかってきて、引き剥がすのに苦労したっけか。
《それで、身体は大丈夫か?》
《ん~そうですね……まだ少し痛みますけど、大丈夫だと思います》
声の感じからして、そこまで問題はなさそうだ。
少し加減はしたのだが、一方でクロードの耐性も上がってきているのだろう。
《もう昼過ぎだし、狩りは明日からにしておこう。今日はゆっくり休んでおけ》
《はい》
クロードとシルシュか。二人の仲が良いのはいいことだが、やはり魔力線を弄る際には少し注意が必要かもしれない。
といっても仲良しの二人を引き離すのも可哀想だ。
そうだな……シルシュは限界までいったらスリープコードで眠らせるか。
まぁ今日の夜、色々試してみるとしよう。
「クロード達は今日は休みだ」
「あっはは、前やったときは何日か足腰立たなかったもんねぇ……じゃ、今日はゼフっちとミリィちゃんには私の買い物に付き合ってもらいますか~」
「私の袋、パンパンでもう入らないんだけど……」
「これ以上入らないのなら、ミリィが不要品を溜め込むこともないだろう?」
「うっ……」
「あっはは♪」
レディアは口をつぐんだミリィの頭をぽんぽんと撫でると、ワシらに紙を手渡した。
紙にはアイテムの名称と、値段が書いてある。
「これ以下で売ってるのがあったら、買っておいてね。お金は後で渡すから」
「うん」
「ワシはミリィと一緒に行くよ。これだけ人がいると迷子になるだろうしな」
「な、ならないしっ!」
「おっけーわかった。じゃあ手分けして、ね」
文句を言うミリィの手を引き、ワシはレディアに手を振って一旦別れた。
クジアイテムの相場は昨日より若干落ちており、思った以上に安く、かつ大量に仕入れることができた。レディアが所持金の半分を残しておいてよかったな。
昔、露店を駆け回って転売をしていた頃の経験が生きたか。
結局本日は、所持金の三割を使い、転売品を仕入れることができたのである。
2
昼頃になり、ワシらは昼食を食べながら話し合っていた。
「これからしばらくは、相場が安定するでしょうね~」
「経験上、か?」
「そんな大層なもんじゃないわよ。運次第なとこも大きいし……ダメだったらゴメンね」
「失敗したらまた稼げばいいだけの話だ。レディアに任せたのだから文句は言わんさ」
レディアの方を見て笑うと、照れ臭そうにはにかむ。
「怖いね~ゼフっち。失敗したら何をやらされるやら……」
「ゼフ、変なことしちゃダメだからね!」
まだ何も言っていないというのに……
理不尽な扱いにため息をつきながら宿へと向かう。
まあこれで、あとは値上がりするのを待つだけである。
今度は狩りで金を稼がねばなるまいな。
「明日は狩りだ。稼ぎまくるぞ」
「うんっ! なんか久しぶりだね!」
「この前は私らお留守番だったからねぇ」
大きく伸びをするミリィとレディア。二人ともやる気満々といった感じだ。
「クロード、シルシュ、二人とも大丈夫か?」
宿の客室の扉を開けるなり、ワシは声をかける。
「えーとその……はい」
「で、ですね……あはは……」
真っ赤な顔で答えるクロードとシルシュ。何はともあれ復活したようだ。
金銭狩りなら、丁度心当たりがある。
こいつを使えば特に、稼ぎやすい場所がな……くっくっ。
先日、ハティベアとの戦闘で手に入れた月光の籠手。
スティールの魔導を使えるこれが役立つ狩場があるのだ。
◆ ◆ ◆
――首都プロレアから南へ一時間ほどテレポートで移動したところに、一つの街がある……いや、あった。
その昔、魔導以外の技術の研究を推進していた街、ティロス。
ここでは魔導を使えぬ者がそれに対抗すべく、様々な技術を学び、発展させてきた。
その中の一つが自動人形である。
金属でできた人形を、まるで意思があるかのように動かすという技術だ。
子供のおもちゃを作るという名目で行われていた自動人形研究は、街の権力者がそれを気に入ったことで一気に技術が進歩した。
最初はお茶運びや機織りくらいしか用をなさなかったが、次第にそれは重火器を装備し、荒れた地でも走り回る兵器となった。
自動人形は進化に進化を続け、高い戦闘能力を持っていった。
そこに目をつけたティロスの権力者は、自動人形を量産して街を要塞化しようとしたのだが、その目論見が魔導師協会に見抜かれて工場と研究所が破壊されたのである。
研究者たちも捕まり、魔導師協会はこれらの技術を闇に葬った。
街の唯一の産業である技術研究が潰され、人のいなくなったこのティロスは、いつしかダンジョンと化したのである。
雪のちらちらと舞い落ちる廃墟となった街、それがワシらの今回の冒険の場だ。
「何か寂しいところね……」
「元々人が住んでいたところですし、人の消えた風景というのは不気味ですよね……」
「あっはは~、ここにお化けは出ないって、ゼフっちが言ってたじゃないさ。クロちゃん」
震えるクロードを背中から抱いてからかうレディア。
さらにクロードの耳に口を近づけ、脅かすように呟く。
「でもそれはゼフっちの嘘でさ……本当は『いる』のかもしれないけどねぇ……?」
「ひっ!?」
レディアの脅かしに、クロードはすっかりビビってしまっている。
まったく、やめてやれよ……。クロードも怖がり過ぎだ。だからレディアが面白がるのだぞ。
ワシはあっははと笑うレディアを小突いた。
「……ティロスの奥にある廃工場が今回の狩場だ。ここの魔物はすべてそこで生産された自動人形のなれの果てで、霊体系のものは全くいない。安心しろクロード」
ワシの言葉に、安堵の息を吐くクロード。
だがここの魔物は霊体型の魔物とは別の意味でやりづらい。安心するのは早いと思うぞ。
寂れた街を歩き、中心にあるティロス廃工場へと向かう。
この工場が一番魔物が湧くポイントであるが、街にも少しは生息している。注意が必要だ。
「シルシュ、物陰から魔物が出てくるかもしれないからな。警戒を頼む」
「は、はい……」
シルシュもちょっとビビッているようだ。先ほどレディアに脅かされたからだろう。索敵のために前に出るも、足どりは鈍い。
レディアをじろりと睨み付けると、目を逸らして口笛を吹く。
まったく困ったものだな……
「街に出る魔物は特殊な遠距離攻撃を仕掛けてくる。銃弾というもので、連射はできんが高い威力を――」
ふと立ち止まったシルシュの背に、ワシはぶつかってしまった。
シルシュは少し身を沈め、辺りを探るように耳をぴこぴこと動かしている。
「魔物、です。一体だと思います」
シルシュの声に従い、レディアとクロードが前方に素早く飛び出す――が、その一瞬の隙を狙い、遠くから銃声が聞こえてきた。
刹那、隣にいたレディアの瞳孔が開き、その手がひゅおと空を切る。
白い残像を残し、シルシュの眼前でレディアの手が止まる。その手が掴んだのは、小さな鉄の塊。
レディアの手に装備されたグローブからは、摩擦によるものか、一筋の煙が立ち上っている。
一連の動作をギリギリ目で捉えられたのはワシだけらしく、他の皆は何が起こったのかわかっていないようだ。
「あっちち」
能天気なレディアの声で、やっと時間が動き出す。
レディアは手にした小さな鉄の塊を手のひらの上で転がしていた。
アレを素手で掴み取るとは……相変わらず凄まじい運動能力だな。
「これがゼフっちの言ってた銃弾ってヤツか。確かに厄介だねぇ~」
「その厄介なものを素手で掴んでしまう者がいるらしい」
「あっはは……人を化け物みたいに言わないでほしいなぁ~」
からからと笑いながら、レディアは銃弾を投げ捨てて大斧を抜き放つ。
レディアの視線の先を見ると、兎の耳が生えた少女の人形が立っていた。兵隊のような格好をしている。
ヤツがこの銃弾を放った魔物だ。
発見と同時に、スカウトスコープを念じる。
ラッキーラビ
レベル68
魔力値
21658/21658
ティロスの魔物、ラッキーラビ。
打ち捨てられた自動人形にダンジョンの魔力が宿り、動き出した魔物である。
その手に持った装飾銃は連射こそできないが、長い射程と高い攻撃力を持つ。
うさ耳の軍服少女という愛らしい外見は相手を油断させるためのモノなのであろうが、当然そんな見た目に惑わされるワシではない。
しかし遠い……! 魔導の射程外だな。
シルシュが感じ取った気配はラッキーラビ一体のみ。
とはいえ、下手にミリィたちがついてくると、敵から攻撃を食らう恐れがある。
銃弾はダメージが大きい。一発なら防御の魔導セイフトプロテクションで防げるが、何度も食らうと危険だ。
「皆はそこにいろ。ワシが何とかする」
走りながらブラックブーツを念じると、ワシの身体が風を纏う。
一気に軽くなった身体で――駆ける。
ラッキーラビはまだ、銃の装填に時間がかかっているようだ。
すでにセイフトプロテクションは展開済み。次の一撃は食らうかもしれないが、その頃には魔導の射程圏内だ。
これで、終わりだ……っ!
ラッキーラビの攻撃を受け、反撃を繰り出そうとした瞬間、ワシの前にはすでにレディアが飛び出していた。
――直後、ガツンという金属を叩く音とともに、ラッキーラビが地面に叩きつけられる。
あの距離を一瞬で詰めたというのか。レディア、恐るべし。
レディアの一撃を食らったラッキーラビは、すぐに起き上がり、銃に取り付けられた剣で応戦する。
だが、そんなものがレディアに当たるはずもなく、彼女はすべての攻撃に強烈なカウンターを決めていた。
がきんがきんと凄まじい音が鳴り続けるが、金属製のラッキーラビには、物理攻撃では大したダメージを与えられない。
こいつら自動人形は魔導でないと効果が薄いのだ。
ワシは宝剣フレイブランドを抜き放ち、レディアのすぐ近くまで駆け寄った。
「離れろ、レディア」
「おっけ~っ!」
ワシの声にレディアが飛び退いたのと同時に、宝剣フレイブランドで敵に斬りつけながらタイムスクエアを念じる。
時間停止中に念じるのはブルーボール、ブラックボール、グリーンボール。それらを、振るう剣から生まれたレッドボールとともに解き放つ。
――四重合成魔導、テトラボール。
金色に輝く剣の軌跡がラッキーラビの胸を貫く。
そしてそのまま、地面へと縫い留めた。
ラッキーラビの魔力はまだ尽きていない。色のない瞳をこちらに向け、銃を探そうとぎこちなく手を動かしている。
かり、と銃のグリップを引っ掻いたラッキーラビの手を踏みつけ、動きを封じた。
「ふん、抵抗などさせるかよ」
「ゼフっち……悪役みたい」
地面に磔にしたままのラッキーラビを見下ろすワシを見て、レディアは引いている。
これが戦いだ。敗者に情けなど無用である。
そして、こいつの出番。
ワシは袋から取り出した月光の籠手を装着する。
「今度は何する気?」
「ちょっとな」
月光の籠手をはめた手をラッキーラビの胸に当て、「スティール」と念じる。
するとラッキーラビの身体の中にワシの手が入っていった。
月光の籠手を装備することで使えるスティールは、魔物の体内からアイテムを盗み出す魔導。
念じることで、マナで構成された魔物の身体を透過し、本来ドロップするはずのアイテムを盗み出すことができるのだ。
「アイテムに変化する魔物の核は、倒した瞬間大きく劣化し、レアアイテムを落としにくくなる。盗んだほうがレアアイテムを手に入れやすいのだ」
ラッキーラビは、高価な装備品であるバニーネックレスをドロップする。
スティールを使うと、それを手に入れやすいのだ。
だが戦闘中にやろうものなら時間がかかる。
こうやって動きを封じていなければ、とてもではないがまともに使えない。
「うーん……なんか可哀想……」
動きを封じられ、ワシに弄られるたびにびくんびくんと震えるラッキーラビを見て、レディアが呟く。
「……む、あった」
ごぽ、とラッキーラビの身体から腕を抜くが、手に入れたものはただのネジ。
外れである。
ドロップアイテムを抜き取られたラッキーラビは、ぐったりと地に伏して消滅していく。
アイテムは魔物の核とも言える高濃度のマナを蓄えた部分が変質して生まれるモノだとされている。詳しい仕組みはわかっていないが、スティールを上手く使うことで、瞬殺も可能であることは確かだ。余程の力の差がなければ不可能だがな。
ラッキーラビがドロップしたネジを袋にしまっていると、ミリィたちが駆けつけてきた。
「大丈夫だった? ゼフ」
「あぁ、レディアのおかげでな」
「いや~ははは……それほどでもないけどにゃ~」
照れ臭そうに両腕を組むレディア。
「今の、銃というヤツでしたっけ? 相当強力だったと思いますが、こんな強い魔物が廃工場の中には一杯いるんですか?」
「遠距離攻撃をしてくるのはこいつくらいだが、ここの魔物は高い攻撃力と防御力を持つ。強敵揃いなのは間違いないぞ」
「だ、大丈夫なんでしょうか……?」
そう言ったクロードとシルシュは少々不安げだが、今のワシらならば大丈夫であろう。
昔に比べると、大分レベルアップしているしな。
「もしヤバくなったらテレポートで逃げればいいしね♪」
「そういうことだ」
ミリィの言葉に頷く。
全員にテレポートピアスを渡しているので、ピンチになっても逃げることは可能だ。
クロードとシルシュはある程度魔力があるし、レディアに関しては……まぁ最近は魔力線を鍛えているし、一回くらいなら大丈夫だろう。
最悪ワシが連れて飛べばいいしな。
街を抜けると、子供の遊び場のような場所に出た。その先には巨大な門が見える。
あれが廃工場。
ところどころ錆びた鉄が剥き出しになった門は、どこかもの悲しさを感じさせる。
「中から沢山の魔物と鉄の匂いがします」
「ティロス廃工場は北の大陸のダンジョンでは魔物の数がダントツに多い。囲まれそうになったらテレポートで逃げるんだ。奥へ行くほど魔力密度は高くなり魔物の数も増えていくが、逆に中の魔物は工場から外には出ようとしない。こっちがばらけてしまったら一旦逃げて、この門の前に集合だ」
「わかりました」
注意を促して中に足を踏み入れると、早速四足の自動人形が見えた。
五体いる。見た目はまるで鋼のクモだ。
ガーディアン
レベル62
魔力値
12109/12109
スカウトスコープを念じると、ガーディアンの機械の目がきゅいんと開く。
丸みを帯びたメタリックなボディは中々に恰好がいい。
ガシャン、ガシャンと駆動音を立てて動くそのさまは、何ともワクワクさせられるものがある。
芸術的ともいえるデザインだ。ここの技術者はきっとワシと気が合ったことだろう。
「ブルーゲイルっ!」
そんなことを考えていると、ミリィが問答無用のブルーゲイルでガーディアン三体を吹き飛ばした。
「何してんのゼフっ! ちゃんとダブルを合わせてよっ!」
「……へいへい、悪かったよ」
芸術のわからぬ奴め。
ま、ミリィの言う通り戦闘に集中しなければな。ここの魔物が強敵揃いだと言ったのはワシだ。
ため息を一つ吐き、ワシも戦闘に加わる。
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