効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

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3巻

3-1

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 1


 ――ワナルタ都市遺跡。
 ベルタの街からテレポートで一時間ほどの場所にある、高レベルのアンデッド系の魔物が出没するダンジョンである。
 このダンジョンの二階層に、ワシ――ゼフ=アインシュタインは、仲間たちと共にいた。
 ワシは時間をさかのぼる魔導タイムリープで少年時代に戻り、ミリィ、クロード、レディアと出会った。
 ミリィに誘われるまま、ワシらはギルド「そうきゅう狩人かりゅうど」に加入し、今回はレベル上げのためにワナルタ都市遺跡に来ていたのである。
 魔物との戦闘をひとしきり終えて休憩することにし、ワシはサモンサーバントで呼び出した使い魔のアインにジェムストーンを食べさせているところだった。
 ふと、仲間の一人、武器商人のレディアが道の奥を見ながら言った。

「……皆、あっちから何か聞こえない?」

 入り組んだ地形のためよく見えないが、確かに遠くから戦闘音が聞こえる。別の誰かが魔物と戦っているのだろう。それ自体は珍しいことではない。
 しかし、妙な胸騒ぎを覚えたワシは、皆を連れて音のする方へ確かめにいくことにした。
 そして辿り着いた先にいたのは――
 魔物と相対する派遣魔導師、グレインであった。
 だが魔物と戦っているのはグレイン本人ではなく、どこか神秘的なふうぼうをした二人の少女。
 槍を振り回している赤色の長髪の少女と、両手剣を振るう青いショートヘアの少女だ。
 羽を生やした少女たちの姿は、どこかアインに似ていた。

「……あのひとたち、あたしとおなじ……?」

 アインがクロードのよろいから顔を出してつぶやく。
 アインも少女たちに、自分と同じ雰囲気を感じているようである。

「おお? 誰かと思えば、この間のガキ共じゃねぇか」

 ワシらに気づいたのか、グレインはニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
 思わず身構えるワシらを見て、グレインはさらに口角をゆがめた。

「ハッ、そんなにビビんなくてもいいじゃねえか。何もしやしねーよ」
「派遣魔導師は協会にあだなす者にしか攻撃できぬものな」
「ほぉ……中々物知りじゃねーか」
「それほどでもないさ。そこにいるのはサモンサーバントで呼び出した使い魔なのか?」

 グレインの使い魔であろう少女二人は、霧の魔物ミストレイスと戦っている。
 よく見ると、大量のレイスマスターがブルーウォールに封じ込められていた。
 レイスマスターは、コールスレイブという技でミストレイスを呼び出し、それを使役して戦う魔物である。
 どうやら少女たちはミストレイスだけを倒し、レイスマスターに再度呼び出させてはまた倒す、ということを繰り返しているらしい。
 これはため込みと呼ばれる戦法の一種で、取り巻きを召喚する魔物を一ヶ所に集め、取り巻きのみを倒し続けるというものだ。索敵さくてきの必要もなく、非常に楽に経験値を稼げる戦法である。
 ただしこれは、ダンジョン内の大量の魔物を一ヶ所に集めて独り占めすることになるため、他の冒険者が魔物にありつけなくなるというかなりグレーな手段だ。少なくとも協会の人間である派遣魔導師がやることではないな。

「……派遣魔導師ってのは、特例でさまざまな魔導のスクロールを読めるが、そのぶん色々ときゅうくつでな。私的な理由じゃ戦えないっつーめんどくせぇルールがあるんだわ。だから、俺の代わりに戦うことになるこいつら使い魔をこうして鍛えてるってわけさ」

 なるほど、確かに直接力を振るえない派遣魔導師にとって、使い魔は便利な存在だ。
 それにこの二人の使い魔、かなり強いな。二対一とはいえ、ミストレイスを次々に瞬殺している。
 アインもいつかこんな風に戦ってくれる日が来るのであろうか。
 アインと目が合うと、きょとんとした顔で首をかしげている。……ま、あまり期待はするまい。

「おお? お前も使い魔を持ってるじゃねーか。……まぁ、お世辞にも強そうとは言えねーがなぁ! ひゃっはっはあ!」

 ゲラゲラ笑いながら、グレインは挑発を続ける。

「使い魔の能力は術者の魔力の質に左右される。そんなチビを呼び出したってことは、お前さんのレベルが知れるってもんだなぁ?」
「……あんた、いい加減に……っ!」

 グレインにつかみかかろうとするミリィを、ワシは右手で制する。

「ゼフっ! 何で止めるのよっ!」
「構うなミリィ。……おい、ワシらはもう行かせてもらうぞ」
「おう行け行け、こっちもてめーらにゃ用はねぇよ」

 追い払うような口調のグレイン。
 ワシは去り際にぽつりと言う。

「派遣魔導師は、協会の看板を背負っているのだ。品格を疑われるような狩り方はよしたほうがいいだろうな」
「ッ! ……テメェ……!!」

 奴の先輩にあたる派遣魔導師アゼリアの口調を真似たワシの言葉に、グレインはピクリと眉を動かす。どうやらブチ切れているようだ。
 とはいえ、派遣魔導師のルールがあるのでワシらに手を出すことはできないだろう。
 今度は、こっちが挑発してやる。

「まだ何か用か?」
「……別に? テメェのつらをよく覚えておこうと思っただけさ」
「しっかり覚えろ。ついでに名前もな。ワシの名はゼフ=アインシュタインだ」
「あぁ、覚えておくぜ。ゼフ……!」

 殺意のこもった目でワシをにらむグレイン。
 一触即発の空気に、ミリィがぶるりと身体を震わせ、ワシの手を取って駆けだした。

「は、早く行こっ、ゼフ!」
「……ハッ。せいぜい気をつけて狩りを楽しむんだな」

 そう言うと、グレインは身をひるがえし壁にもたれかかり、使い魔たちの戦闘に目を戻すのであった。


「ゼフ君、わざとあの人を怒らせましたね?」

 ベルタの街に戻る途中、クロードが話しかけてきた。

「ちょっとムカついたからな」
「……あいつの怒りが、ゼフ君だけに向かうように、ですか?」
「馬鹿者、考え過ぎだ」

 そう言ってクロードの頭をぽんとでると、複雑そうな顔でワシを見つめてきた。


 まったく、カンの鋭いことだな。
 先刻、スカウトスコープでグレインを見たが、奴の所持魔導はアゼリアより多そうだった。
 少し話してわかったが、グレインは強さを求めている節があり、派遣魔導師になったのもおそらくそのためだろう。
 ああいうタイプは、敵に回すと厄介やっかいだ。できるだけ関わらないほうがいい。それに、ミリィたちが戦うのにはまだ早い相手である。
 ……もしもの時は、ワシが奴を何とかしなければならんな。


 ワナルタ都市遺跡からかんしたワシらは、ベルタの街で食事を取りながら、本日の狩りを振り返っていた。

「ゼフ君が拾ってきたスクロール、すごいですよね。レベルがすぐ上がります」
「グロウスだっけ? 本当だよね~、私は二つも上がっちゃった♪」

 クロードとミリィが言った。
 グロウスは、習得した者の能力の成長が格段に早くなる魔導である。
 皆には言っていないが、実はグロウスのスクロールはセルベリエが魔導師協会からくすねてきたものだ。
 セルベリエは前世ではワシの師匠だったのだが、まさか魔導師協会を相手にこんな大胆なことをやるとは思わなかったな。
 本人いわく、スクロールは借りただけで後で返そうと思っていたらしいが、協会の警備が厳重になり、派遣魔導師にまで追われて、結局返すことができていなかった。
 そこで、代わりにワシがスクロールを拾ったことにして協会に返す、とセルベリエと約束したのである。
 そのついでにワシらがスクロールを読んで有効活用したとしても、問題はなかろう。
 実はワシも今日、レベルが上がった。昨日上がったばかりなのだがな……恐るべし、グロウス。
 これまで、レベルが上がるのはせいぜい三、四日に一つであった。
 そう考えると、獲得する経験値が数倍になっているのだろうか。とてつもない効果である。

「えっ、そうなの? 私、全然上がらなかったんだけど……」

 レディアの言葉を聞いて、ミリィが目を丸くする。

「うそ……レディアって、私たちの中で一番レベル低くなかったっけ?」

 ミリィの言う通りだ。むしろ一番伸びてもおかしくないハズだが……もしや。

「ちょっと待っていろ」

 ワシはそう言って、スカウトスコープでレディアを見た。
 グロウスレベル1。そう刻まれている。
 レベル1ということは……まさか。
 スカウトスコープで全員を順に見てみると、グロウスのレベルは、ミリィが92、クロードは22、そしてワシは75だった。
 そういえば、ミリィは今日だけで二つも上がったと言っていた。きっとグロウスは、そのレベルの高低によって成長速度が変わる魔導なのだ。
 ……これはかつだったな。

「どうやらグロウスは、魔導師にこそおんけいがある魔導のようだな。スカウトスコープで見ると、ワシらに比べ、レディアのそれは極端にレベルが低い。恐らくこれがレベルの上昇速度に影響しているのだろう」
「あちゃ~、そうなのかぁ……」

 軽い口調とは裏腹に、レディアは珍しく沈んだ顔をしている。
 だがすぐ、いつものように笑いながら言った。

「あっははは……ねぇみんな、私が足手まといになっても見捨てないでね~」
「馬鹿者、当然だ!」

 ワシの強い口調に驚いたのか、レディアは目を丸くする。
 驚かせてしまったようだ。少し声を抑えて、ワシは続けた。

「……冗談でも、そんなことを言うな。足手まといなどと思うわけないだろう」
「そうですよ! それにレディアさんはボクより断然強いですし!」
「うんうん! だから気にしちゃだめよ、レディアっ!」
「……あの、ミリィさん。そこ同意されるとボク、ヘコむんですけど……」
「あ……えへへ、ごめんね、クロード」

 レディアはミリィとクロードの漫才を見ながら、じわりと目をうるませる。

「……もう、みんな生意気なんだから……私のほうが年上なのにさ」

 レディアは溢れそうになる涙をすように、ワシらを抱きすくめる。
 普段はすぐ逃げようとするが、今日だけは、誰もそれを振りほどこうとはしなかった。


     ◆ ◆ ◆


 ――深夜、ワシは単身ワナルタ都市遺跡を訪れた。
 この前はアインを長時間呼び出すことができた。
 アインの力を使えば、恐らく一人でも狩りが可能だろう。入り口付近なら、すぐに逃げ出せるしな。
 サモンサーバントを念じると、光の中からアインがあらわれる。

「おじい、よんだ~?」
「あぁ、少し付き合ってもらうぞ」
「ん~、いいよ~」

 ねむそうに答えるアインを連れ、遺跡内部を進む。
 今日は一人で戦わなければならないため、魔力に余裕はない。隠れているミストレイスも目を凝らせば何とか姿を捉えることは可能なので、ブルーウェーブでの索敵は行わないことにする。
 ワシ一人なら防御魔導のセイフトプロテクションを張っておけば敵に襲われても致命傷にはならないだろうしな。
 瞑想めいそうを行いつつ、先へ進む。
 高レベルの狩場でのソロ狩りは、やはり緊張感があるな。
 ピリピリとした感じを楽しみながら、集中力を高めていく……

「おじい、ごはん~」

 ……気の抜けた声に、ずっこけてしまった。
 アインはワシの頭の上で腹いになり、ぽこぽこと頭を蹴ってくる。痛いではないか。

「わかったわかった……ほら」
「わ~いっ」

 ポケットにめておいたジェムストーンを一つ渡し、また周囲に意識を向ける。
 アインがジェムストーンをかじる音に混じって、低い、かすかなざわめきが聞こえてきた。
 音の方を見やると、空気の揺らめきが、建物の影から近づいてくるのが見えた。
 ミストレイスがひんようするブラックコートは、風の衣をまとうことで光の屈折を利用して姿を隠す魔導。
 静止した状態だとその姿は周りから見えないが、動いている時ならば視認が可能だ。

「今日ははく魔導の合成を試してみるとするか」

 こちらに近づこうとするミストレイスを確認しつつ、タイムスクエアを念じる。
 時間停止中に念じるのはブラッククラッシュとホワイトクラッシュ。
 タイムスクエアの解除と同時に、激しく渦巻く白と黒の魔導球が解き放たれ、まだら模様のせん球がミストレイスに直撃した。
 ……が、渦に削られてなお、ミストレイスはピンピンしている。

「……うーむ、やはり相性はよくないか」

 予想はついていたが、以外の魔導ははくと合成しても効果の上昇はかんばしくない。
 異界に働きかける魄魔導は五系統の魔導の中でも特殊であり、合成のベースとして向いていないのだ。
 緋系統との合成、ノヴァースフィアにしても霊体系の魔物以外には効果が微妙だしな。
 ワシの魔導を受けたことでブラックコートが解除され、ミストレイスが反撃を仕掛けてくる。

「おっと、そんなものに当たってやるかよ」

 攻撃をかわしながら、ワシはホワイトクラッシュを放つ。
 ――よし、動けるな。
 レディアとの体術訓練の成果は確実に出ているようだ。この程度の相手であれば簡単に攻撃を躱せるようになってきた。
 カウンターにホワイトクラッシュを何度か繰り返して、ミストレイスを撃破げきはした。

「ふぅ、少し休憩するか」

 一人で戦うと魔力の消耗が激しい。
 ワシのそばを飛び回るアインを眺めながら、ぼんやり考える。
 そういえば、グレインは使い魔を魔物と戦わせていたな。
 あの使い魔の二人が持っていた武器には見覚えがある……確か、首都の武器屋で売っていた中でも最高級のものだ。
 派遣魔導師は、基本的に専守防衛。戦闘が許されるのは、正当防衛であること、相手が犯罪者であることなど、限定的な場面のみである。
 派遣魔導師になれば協会の固有魔導が得られるとはいえ、自由にそれを振るえぬなら意味はないと思うのだがな。
 それとも何か目的があるのだろうか。
 どちらにせよ、グレインは警戒すべき相手である。

「なぁアイン」
「ねもい……」

 何気なく話しかけると、アインは光と共に消えていった。
 おい、まだ呼び出したばかりだぞ。
 先日は一時間以上しょうかんできていたのに……そういえば以前、夜にアインを呼び出した時も「ねもい」と言って消えていた。
 まさか夜だから長時間召喚できないのか?
 ふーむ……まあ朝にでも、また試してみるか。
 とりあえず今日はもう呼び出せない。仕方ないか。
 しばらくミストレイスとの戦闘を繰り返し、朝日が昇り始めたところで、ワシはベルタの街に帰るのだった。


「やはり一人では倒せる数が少ないな……ドロップアイテムも大したものを拾えなかったし……ん?」

 袋の中の戦利品を確認していると、セルベリエの手紙を挟んであるグロウスのスクロールに気づく。
 そういえばこれをクレア先生に渡さねばならぬのだったな。
 クレア先生に落とし物として届けて、それを先生の妹であるアゼリアに渡してもらうという計画だったのだ。
 皆のところに戻る前に届けてしまうか。

「クレア先生の家は、確か街の中心部だったかな……」

 一度だけ、ミリィがやり忘れた宿題を先生の家まで出しにいくのに付き合ったことがある。
 繁華街を抜けた住宅街の一画、赤い屋根の小さな家。ここがクレア先生の家だ。
 ……いや待てよ、ひょっとしたら、アゼリアも一緒に住んでいるかもしれない。そうなると面倒だな……
 どうしたものかと考えていると、いきなりドアが開いてクレア先生が出てきた。

「ひゃっ! ぜ、ゼフ君っ!? どうしてここに!?」
「久しぶりだな、クレア先生。近くに寄ったので少しな」
「あらうれしい! いや~ほんと久しぶりねぇ! 先生いきなりだからびっくりしちゃった」

 クレア先生はワシの手をつかみ、ぶんぶんと振る。
 相変わらずのマイペースである。まったく、この人と話していると調子が狂うな。

「立派な冒険者として頑張ってる? ミリィちゃんは一緒じゃないの? 他のお友達はできた?」

 キラキラと目を輝かせながら、色々聞いてくるクレア先生。
 この人と話していたら昼を過ぎてしまいそうだ。とっとと用事を済ませて逃げよう。

「ああ、いや、実は落し物を届けに来ただけなんだ。なので、すぐ帰らせてもらう」
「なぁんだ、でも落し物を届けてくれたのね。いい子いい子♪」

 そう言って、クレア先生はワシの頭をぐりぐりとでてくる。
 ……本当に調子が狂ってしまうな。
 ワシは袋からグロウスのスクロールを取り出し、クレア先生に渡した。

「これは?」
「アゼリア……この間クレア先生の妹さんに会ったのだが、このスクロールを探しているらしくてな。先生から渡してやって欲しいのだ」
「へぇ、アゼリアに会ったんだ。どう彼女、何か言ってなかった?」

 ニヤニヤしながら、ひじでつついてくる。
 何か、というのはワシがミリィと付き合ってるとかどうとかだろう。ワシの反応を見て楽しんでいるようだ。

「……あまり、根も葉もないことは言わないでほしいのだが」
「またまた~、根も葉もあるくせにぃ~」

 すごく楽しそうなクレア先生だが、いつまでも相手をしているひまはない。
 とっとと帰らせてもらうとするか。

「……先生、そんなことより学校に行かなくていいのか?」
「きゃっ、そうだった! ごめんねゼフ君、またゆっくりねっ! 次はミリィちゃんも一緒に♪」

 ワシの言葉にあわてたクレア先生は、道行く人とあいさつを交わしながら小走りに去っていくのだった。
 慌ただしい人である。
 さて、用事も済んだし、帰るとするかな。

 宿へ帰ろうとすると、頭の中に声が聞こえてきた。

《あーゼフ、聞こえるか? 私だ》

 セルベリエからの念話だ。はかったようなタイミングである。

《セルベリエではないか。どうかしたか?》
《あぁ、今日の昼頃サニーレイヴンがくので、それを狩って欲しいのだ》

 サンレイ山脈のボス、サニーレイヴン。
 以前ワシとクロードが二人で戦ったことのあるボスである。
 あの時、実はセルベリエが先にサニーレイヴンと戦っていたらしく、ドロップアイテムは彼女のものになったのだった。
 一人で倒せるはずのボスを、ワシらに回してくるとは珍しいな。

《何か他の用事があるのか?》
《丁度、別のボスと時間が被っていてな……》

 悔しそうに呟くセルベリエ。
 筋金入りのボスちゅうである。
 しかし……ふむ、サニーレイヴンとの再戦か。
 以前戦った時はギリギリだったが、皆でやればもっと楽に戦えるかもしれない。
 考え込んでいると、セルベリエが言った。

《では頼む》

 セルベリエの声の後、プツリと念話が途切れる音がした。
 おい待て、こちらは返事をしていないぞ。

《セルベリエ? おいセルベリエ!》

 何度念じても返事はない。
 円環の水晶は、そのけらを渡した相手と念話することができるが、欠片を持つ者からは念話をかけることはできない。
 それをセルベリエに教えてやろうと思っていたのだが……まさかその前に念話を切られるとは。
 全く、この人もマイペースだな。
 まぁ、サニーレイヴンと戦ってみて無理だと思ったら逃げればいいだろう。
 とりあえず皆を誘って行ってみるとするか。
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