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247 レオンハルト家⑥●
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――――レオンハルト家の一室。
灯りも消した暗い部屋でオックス=グランベルは大きなため息を吐く。
(はぁ~……何でこんなことになったんだろ……)
グランベル家は騎士の家系、しかし代々魔導師殺しを磨く事にこだわり続ける内、いつの間にか勝つ為には手段を選ばぬ武闘派の家系となっていた。
オックスは幼少期から厳しい訓練を受け続け、その結果心を折られてしまった。
一人旅をして騎士として成長したい、と父親を言いくるめ冒険者として各地を旅したが、結局は魔物や悪漢からは逃げ続け、結局辿り着いた街で人々を騙し、オックスはぬくぬくと怠惰を貪っていたのである。
――――やはり自分は戦いに向いていない、騎士失格です。
家に戻ってそう伝え、勘当でもして貰い田舎で畑でも耕そうと思った矢先のこれである。
父曰く、お前に騎士の適性がない事はとうの昔に気付いていたが、ならばせめて他の優秀な家の血と交わり子を成せ、との事だった。
いつの間にか婚約させられており、無理やり馬車に乗せられてここまで連れてこられたかと思ったら、まさかのゼフ、クロードとの再会だった、というワケである。
(クロードさん、すごく綺麗だったな……)
純白のドレスを着たクロードの姿を思い出し、オックスはだらしなく口元を緩める。
思えば一目惚れだったのかもしれない。
初めてナナミの街で会った時、その凛々しい姿に惚れてしまったオックスは彼女の姿を真似ていたのだ。
勝手に結婚相手を決められ内心では不満なオックスだが、クロードと再開してそんな気持ちは消し飛んでしまった。
ドレス姿の彼女を見た瞬間、心臓が口から飛び出そうになったものである。
(凛々しく、美しく……だがそんな彼女の心は、完全にゼフ君の方に向いている……)
二人と会ったのはほんの少しの間だけなのだが、それだけで十分にわかってしまった。
彼女がゼフ君に向ける笑顔と、他に向ける笑顔は全く違う。
(二人の間に僕が入る隙なんかない……でも……)
胸を締め付けられるような劣情に駆られ、オックスは叫び声を上げるのをぎゅっと我慢した。
ごろんとうつ伏せに寝転がり、枕に顔を埋めて息を止める。
「クロードさんが俺の嫁……だったかもしれなかったのかぁ……」
家の都合で仕方なくとはいえ、もしどこかの歯車が狂っていればそうなっていた可能性もあったのだ。
ゼフ君さえいなければ、クロードに家同士の取り決めに逆らう理由もない。
オックスとクロードは結ばれやがて子を……有り得ない妄想を浮かべてはまた、彼はまた大きなため息を吐いた。
「はぁ~~……」
きっとこんな機会は二度とない。
ゼフ君曰く、魔導師殺しの家系がどこの馬の骨とも知れぬ魔導師に倒されるようでは婿として不適格だという事だ。
確かに、彼の言う事は正論だ。
騎士というものは強さと名誉を重んじる。
ただでさえ有利とされている『魔導師殺し』の使い手が、その魔導師に負けたとあらばその名は地に落ちるだろう。
特に強さに重きを置くグランベル家は引き下がらざるを得ない。
(ゼフ君に勝てば……い、いやっ! 絶対に無理だっ!)
あの黒い魔物の群れをも倒し尽くしてしまう手練。
確かにオックスは魔導師殺しの術を持つが、彼に勝てる見込みは万に一つもないだろう。
(戦って痛い目を見て惨めな思いをするくらいなら……大人しく引き下がった方がマシだ……)
そう自分に言い聞かせて、オックスは布団を被る。
悶々とした思いを堪えているうちに、いつの間にやら彼の意識は闇に落ちていく。
――――そんな彼の首元から、黒い影が這い出て来る。
オックスの背中に潜んでいた黒い影、それは彼の首筋を伝い口の中に潜り込んだ。
「っ!?」
思わず飛び起きるオックスだったが、時すでに遅し。
黒い影は彼の身体に潜り込み、オックスは意識を闇に沈めていくのだった。
(何だ、この気配は!?)
尋常ならざる気配を感じ、ワシはベッドから飛び起きる。
一瞬ではあるが、この家の中から妙な魔力を感じ取ったのだ。
(魔物か侵入者……一瞬だったので判別はつかんが、強烈な悪意を感じた……!)
少なくともこの家の者の魔力ではない。
気配を探るべく周囲に魔力を展開し、ゆっくりとベッドを降りる。
まずはクロードとオックスを起こし、戦えぬクロードの両親を守るべく行動すべきだろう。
扉を開けようと手をかけると、外から何者かの気配を感じた。
(……いる)
微弱ではあるが間違いない。
見つからぬように忍び足で動いているようだ。
ドアノブに手をかけ、ヤツが通り過ぎるのを待つ。
そして背中を向けたところで飛び出して、魔導をぶちかましてやる……!
近づいてきた魔力が遠ざかっていく……丁度こちらに背を向けるタイミングを見計らい、ワシは扉を開け曲者の背後に飛び出した。
暗闇でよく視認出来ぬ影に向け、スカウトスコープを念じる。
「な、なんだよゼフ君じゃあないか……びっくりしたなぁもう……」
「オックス……何をしているのだ?」
「ただのトイレだよ」
「ただのトイレ……ね」
「じゃあ僕は行かせて貰うよ」
そう言って背を向け、進もうとするオックスにワシは続ける。
「……トイレは反対だぞ、オックス」
オックスの進む先にあるのはクロードの部屋のみ。
無言で立ち止まるオックスを睨みつけ、戦闘態勢を取る。
「貴様、何者だ」
「……ふふ、変な事を聞くね……僕はオックスだよ?」
「……ハッ」
ワシに背を向けたまま、オックスは全く動揺する事なく、いつもの調子で軽口を叩く。
完璧な偽装、ワシでなければ違和感すらも感じ取れない程の擬態だがスカウトスコープは誤魔化せない。
オックス=グランベル
レベル25
「緋」魔導値0 限界値0
「蒼」魔導値0 限界値0
「翠」魔導値0 限界値0
「空」魔導値0 限界値0
「魄」魔導値0 限界値0
魔力値163275/163275
「――――もう一度問う、貴様何者だ?」
「…………」
ワシの問いに答える代わりに、オックスの身体に黒い線何本も走っていく。
オックスの身体は強力な魔力に包まれ、目も真紅に輝き始める。
「やっぱりキミは邪魔だなぁ……ゼフ君?」
そう言って、オックスは邪悪に顔を歪ませるのであった。
灯りも消した暗い部屋でオックス=グランベルは大きなため息を吐く。
(はぁ~……何でこんなことになったんだろ……)
グランベル家は騎士の家系、しかし代々魔導師殺しを磨く事にこだわり続ける内、いつの間にか勝つ為には手段を選ばぬ武闘派の家系となっていた。
オックスは幼少期から厳しい訓練を受け続け、その結果心を折られてしまった。
一人旅をして騎士として成長したい、と父親を言いくるめ冒険者として各地を旅したが、結局は魔物や悪漢からは逃げ続け、結局辿り着いた街で人々を騙し、オックスはぬくぬくと怠惰を貪っていたのである。
――――やはり自分は戦いに向いていない、騎士失格です。
家に戻ってそう伝え、勘当でもして貰い田舎で畑でも耕そうと思った矢先のこれである。
父曰く、お前に騎士の適性がない事はとうの昔に気付いていたが、ならばせめて他の優秀な家の血と交わり子を成せ、との事だった。
いつの間にか婚約させられており、無理やり馬車に乗せられてここまで連れてこられたかと思ったら、まさかのゼフ、クロードとの再会だった、というワケである。
(クロードさん、すごく綺麗だったな……)
純白のドレスを着たクロードの姿を思い出し、オックスはだらしなく口元を緩める。
思えば一目惚れだったのかもしれない。
初めてナナミの街で会った時、その凛々しい姿に惚れてしまったオックスは彼女の姿を真似ていたのだ。
勝手に結婚相手を決められ内心では不満なオックスだが、クロードと再開してそんな気持ちは消し飛んでしまった。
ドレス姿の彼女を見た瞬間、心臓が口から飛び出そうになったものである。
(凛々しく、美しく……だがそんな彼女の心は、完全にゼフ君の方に向いている……)
二人と会ったのはほんの少しの間だけなのだが、それだけで十分にわかってしまった。
彼女がゼフ君に向ける笑顔と、他に向ける笑顔は全く違う。
(二人の間に僕が入る隙なんかない……でも……)
胸を締め付けられるような劣情に駆られ、オックスは叫び声を上げるのをぎゅっと我慢した。
ごろんとうつ伏せに寝転がり、枕に顔を埋めて息を止める。
「クロードさんが俺の嫁……だったかもしれなかったのかぁ……」
家の都合で仕方なくとはいえ、もしどこかの歯車が狂っていればそうなっていた可能性もあったのだ。
ゼフ君さえいなければ、クロードに家同士の取り決めに逆らう理由もない。
オックスとクロードは結ばれやがて子を……有り得ない妄想を浮かべてはまた、彼はまた大きなため息を吐いた。
「はぁ~~……」
きっとこんな機会は二度とない。
ゼフ君曰く、魔導師殺しの家系がどこの馬の骨とも知れぬ魔導師に倒されるようでは婿として不適格だという事だ。
確かに、彼の言う事は正論だ。
騎士というものは強さと名誉を重んじる。
ただでさえ有利とされている『魔導師殺し』の使い手が、その魔導師に負けたとあらばその名は地に落ちるだろう。
特に強さに重きを置くグランベル家は引き下がらざるを得ない。
(ゼフ君に勝てば……い、いやっ! 絶対に無理だっ!)
あの黒い魔物の群れをも倒し尽くしてしまう手練。
確かにオックスは魔導師殺しの術を持つが、彼に勝てる見込みは万に一つもないだろう。
(戦って痛い目を見て惨めな思いをするくらいなら……大人しく引き下がった方がマシだ……)
そう自分に言い聞かせて、オックスは布団を被る。
悶々とした思いを堪えているうちに、いつの間にやら彼の意識は闇に落ちていく。
――――そんな彼の首元から、黒い影が這い出て来る。
オックスの背中に潜んでいた黒い影、それは彼の首筋を伝い口の中に潜り込んだ。
「っ!?」
思わず飛び起きるオックスだったが、時すでに遅し。
黒い影は彼の身体に潜り込み、オックスは意識を闇に沈めていくのだった。
(何だ、この気配は!?)
尋常ならざる気配を感じ、ワシはベッドから飛び起きる。
一瞬ではあるが、この家の中から妙な魔力を感じ取ったのだ。
(魔物か侵入者……一瞬だったので判別はつかんが、強烈な悪意を感じた……!)
少なくともこの家の者の魔力ではない。
気配を探るべく周囲に魔力を展開し、ゆっくりとベッドを降りる。
まずはクロードとオックスを起こし、戦えぬクロードの両親を守るべく行動すべきだろう。
扉を開けようと手をかけると、外から何者かの気配を感じた。
(……いる)
微弱ではあるが間違いない。
見つからぬように忍び足で動いているようだ。
ドアノブに手をかけ、ヤツが通り過ぎるのを待つ。
そして背中を向けたところで飛び出して、魔導をぶちかましてやる……!
近づいてきた魔力が遠ざかっていく……丁度こちらに背を向けるタイミングを見計らい、ワシは扉を開け曲者の背後に飛び出した。
暗闇でよく視認出来ぬ影に向け、スカウトスコープを念じる。
「な、なんだよゼフ君じゃあないか……びっくりしたなぁもう……」
「オックス……何をしているのだ?」
「ただのトイレだよ」
「ただのトイレ……ね」
「じゃあ僕は行かせて貰うよ」
そう言って背を向け、進もうとするオックスにワシは続ける。
「……トイレは反対だぞ、オックス」
オックスの進む先にあるのはクロードの部屋のみ。
無言で立ち止まるオックスを睨みつけ、戦闘態勢を取る。
「貴様、何者だ」
「……ふふ、変な事を聞くね……僕はオックスだよ?」
「……ハッ」
ワシに背を向けたまま、オックスは全く動揺する事なく、いつもの調子で軽口を叩く。
完璧な偽装、ワシでなければ違和感すらも感じ取れない程の擬態だがスカウトスコープは誤魔化せない。
オックス=グランベル
レベル25
「緋」魔導値0 限界値0
「蒼」魔導値0 限界値0
「翠」魔導値0 限界値0
「空」魔導値0 限界値0
「魄」魔導値0 限界値0
魔力値163275/163275
「――――もう一度問う、貴様何者だ?」
「…………」
ワシの問いに答える代わりに、オックスの身体に黒い線何本も走っていく。
オックスの身体は強力な魔力に包まれ、目も真紅に輝き始める。
「やっぱりキミは邪魔だなぁ……ゼフ君?」
そう言って、オックスは邪悪に顔を歪ませるのであった。
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