効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

文字の大きさ
134 / 208
連載

247 レオンハルト家⑥●

しおりを挟む
 ――――レオンハルト家の一室。
 灯りも消した暗い部屋でオックス=グランベルは大きなため息を吐く。

(はぁ~……何でこんなことになったんだろ……)

 グランベル家は騎士の家系、しかし代々魔導師殺しを磨く事にこだわり続ける内、いつの間にか勝つ為には手段を選ばぬ武闘派の家系となっていた。
 オックスは幼少期から厳しい訓練を受け続け、その結果心を折られてしまった。
 一人旅をして騎士として成長したい、と父親を言いくるめ冒険者として各地を旅したが、結局は魔物や悪漢からは逃げ続け、結局辿り着いた街で人々を騙し、オックスはぬくぬくと怠惰を貪っていたのである。

 ――――やはり自分は戦いに向いていない、騎士失格です。
 家に戻ってそう伝え、勘当でもして貰い田舎で畑でも耕そうと思った矢先のこれである。

 父曰く、お前に騎士の適性がない事はとうの昔に気付いていたが、ならばせめて他の優秀な家の血と交わり子を成せ、との事だった。
 いつの間にか婚約させられており、無理やり馬車に乗せられてここまで連れてこられたかと思ったら、まさかのゼフ、クロードとの再会だった、というワケである。

(クロードさん、すごく綺麗だったな……)

 純白のドレスを着たクロードの姿を思い出し、オックスはだらしなく口元を緩める。
 思えば一目惚れだったのかもしれない。
 初めてナナミの街で会った時、その凛々しい姿に惚れてしまったオックスは彼女の姿を真似ていたのだ。

 勝手に結婚相手を決められ内心では不満なオックスだが、クロードと再開してそんな気持ちは消し飛んでしまった。
 ドレス姿の彼女を見た瞬間、心臓が口から飛び出そうになったものである。

(凛々しく、美しく……だがそんな彼女の心は、完全にゼフ君の方に向いている……)

 二人と会ったのはほんの少しの間だけなのだが、それだけで十分にわかってしまった。
 彼女がゼフ君に向ける笑顔と、他に向ける笑顔は全く違う。

(二人の間に僕が入る隙なんかない……でも……)

 胸を締め付けられるような劣情に駆られ、オックスは叫び声を上げるのをぎゅっと我慢した。
 ごろんとうつ伏せに寝転がり、枕に顔を埋めて息を止める。

「クロードさんが俺の嫁……だったかもしれなかったのかぁ……」

 家の都合で仕方なくとはいえ、もしどこかの歯車が狂っていればそうなっていた可能性もあったのだ。
 ゼフ君さえいなければ、クロードに家同士の取り決めに逆らう理由もない。
 オックスとクロードは結ばれやがて子を……有り得ない妄想を浮かべてはまた、彼はまた大きなため息を吐いた。

「はぁ~~……」

 きっとこんな機会は二度とない。
 ゼフ君曰く、魔導師殺しの家系がどこの馬の骨とも知れぬ魔導師に倒されるようでは婿として不適格だという事だ。
 確かに、彼の言う事は正論だ。
 騎士というものは強さと名誉を重んじる。
 ただでさえ有利とされている『魔導師殺し』の使い手が、その魔導師に負けたとあらばその名は地に落ちるだろう。
 特に強さに重きを置くグランベル家は引き下がらざるを得ない。

(ゼフ君に勝てば……い、いやっ! 絶対に無理だっ!)

 あの黒い魔物の群れをも倒し尽くしてしまう手練。
 確かにオックスは魔導師殺しの術を持つが、彼に勝てる見込みは万に一つもないだろう。

(戦って痛い目を見て惨めな思いをするくらいなら……大人しく引き下がった方がマシだ……)

 そう自分に言い聞かせて、オックスは布団を被る。
 悶々とした思いを堪えているうちに、いつの間にやら彼の意識は闇に落ちていく。

 ――――そんな彼の首元から、黒い影が這い出て来る。
 オックスの背中に潜んでいた黒い影、それは彼の首筋を伝い口の中に潜り込んだ。

「っ!?」

 思わず飛び起きるオックスだったが、時すでに遅し。
 黒い影は彼の身体に潜り込み、オックスは意識を闇に沈めていくのだった。



(何だ、この気配は!?)

 尋常ならざる気配を感じ、ワシはベッドから飛び起きる。
 一瞬ではあるが、この家の中から妙な魔力を感じ取ったのだ。

(魔物か侵入者……一瞬だったので判別はつかんが、強烈な悪意を感じた……!)

 少なくともこの家の者の魔力ではない。
 気配を探るべく周囲に魔力を展開し、ゆっくりとベッドを降りる。
 まずはクロードとオックスを起こし、戦えぬクロードの両親を守るべく行動すべきだろう。
 扉を開けようと手をかけると、外から何者かの気配を感じた。

(……いる)

 微弱ではあるが間違いない。
 見つからぬように忍び足で動いているようだ。
 ドアノブに手をかけ、ヤツが通り過ぎるのを待つ。
 そして背中を向けたところで飛び出して、魔導をぶちかましてやる……!

 近づいてきた魔力が遠ざかっていく……丁度こちらに背を向けるタイミングを見計らい、ワシは扉を開け曲者の背後に飛び出した。
 暗闇でよく視認出来ぬ影に向け、スカウトスコープを念じる。

「な、なんだよゼフ君じゃあないか……びっくりしたなぁもう……」
「オックス……何をしているのだ?」
「ただのトイレだよ」
「ただのトイレ……ね」
「じゃあ僕は行かせて貰うよ」

 そう言って背を向け、進もうとするオックスにワシは続ける。

「……トイレは反対だぞ、オックス」

 オックスの進む先にあるのはクロードの部屋のみ。
 無言で立ち止まるオックスを睨みつけ、戦闘態勢を取る。

「貴様、何者だ」
「……ふふ、変な事を聞くね……僕はオックスだよ?」
「……ハッ」

 ワシに背を向けたまま、オックスは全く動揺する事なく、いつもの調子で軽口を叩く。
 完璧な偽装、ワシでなければ違和感すらも感じ取れない程の擬態だがスカウトスコープは誤魔化せない。

 オックス=グランベル
 レベル25
「緋」魔導値0 限界値0
「蒼」魔導値0 限界値0
「翠」魔導値0 限界値0
「空」魔導値0 限界値0
「魄」魔導値0 限界値0
 魔力値163275/163275


「――――もう一度問う、貴様何者だ?」
「…………」

 ワシの問いに答える代わりに、オックスの身体に黒い線何本も走っていく。
 オックスの身体は強力な魔力に包まれ、目も真紅に輝き始める。

「やっぱりキミは邪魔だなぁ……ゼフ君?」

 そう言って、オックスは邪悪に顔を歪ませるのであった。

しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。