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1. 悪役令嬢は国外追放される
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「クラウディア・サウザンテ! お前を国外追放に処す!」
ラインハルト王太子殿下にそう言われて、サウザンテ公爵家の長女クラウディアは思わず笑みを浮かべそうになった。
大量の仕事を押し付けれる地獄のような日々から離れられると思うと嬉しくて仕方なかった。
ついさっき、王太子殿下に婚約破棄されたばかりなのにも関わらず。
「ありがとうございますっ!」
すらりとした身体に凛とした顔立ちの彼女が喜ぶ様は、このような場でなければ絵になっただろう。
「いくら妹でも、私の婚約者を虐めたのが運の尽きだったな。ショックだとは思うが、生き延びられることを祈っているよ。
……ん? 今、なんと言った?」
「ですから、国外追放にしてくれてありがとうございます、と言いました」
「驚かないのか⁉︎ 重罪だぞ⁉︎」
驚いたりはしない。婚約破棄される日のうちに、国外追放を言い渡されることは分かっていたから。
王太子はこの日の計画を周囲に誇らしげに話していたのだ。クラウディアの耳に入らないことがない。
「ええ、むしろ嬉しいくらいですわ」
きっと私への嫌がらせのつもりで国外追放にしたのだろう。それほど殿下に嫌われていたのなら、少し悲しい。
もちろん、悲しい気持ちは表に出すことはない。そうすれば彼らを喜ばせてしまうから。
「なっ……。まあいい、お前はもうここには居られないのだからな」
「そうですわね。せめて後悔のないように生きてくださいませ」
「苦し紛れか? もうよい、連れて行け」
間もなくやってきた騎士達に手を拘束され、パーティー会場から引きずり出されるクラウディア。
無抵抗に運ばれる彼女を見て、良く思っていなかった者は愉悦に頬を緩めた。
その時に、王太子に寄り添う妹のクラリスが怪しい笑みを浮かべながら「ざまぁみろ」と口を動かしていることに気が付いたクラウディアだったが、全く気に留めなかった。
何故なら、彼女にはこれから地獄のような日々が訪れるのだから。
王太子の婚約者は楽じゃないのだ。
ちなみに、両親も会場にはいたものの、クラウディアのことを見向きもしなかった。
明るい赤い色の髪と同じ色の瞳を持つ彼女を「血の色みたいで気色悪い」と言って忌避していたから。
でも、そんな理由で嫌がらせされるのも今日が最後。
そのまま馬車に乗せられ、あっという間に会場になっている王城から離れていった。
それからどれくらい経ったのか。国境にある関所に着くと、隣国側に放り出されてしまう。
国外追放とは言っても、本来は追い出されるだけではない。街まで送り届けるのが任務だった。
この時の刑を執行する騎士団は、かなり適当だった。
「どうやって街まで移動すればいいのかしら……」
見渡す限りの山を見るクラウディアの表情は、少しばかり絶望に染まっていた。
愚かな者達はまだ知らない。悪役に仕立て上げた相手が、どれほど大きな物を持っていたのかを。
そして、それを失ったことが自身の破滅へと繋がることを。
ラインハルト王太子殿下にそう言われて、サウザンテ公爵家の長女クラウディアは思わず笑みを浮かべそうになった。
大量の仕事を押し付けれる地獄のような日々から離れられると思うと嬉しくて仕方なかった。
ついさっき、王太子殿下に婚約破棄されたばかりなのにも関わらず。
「ありがとうございますっ!」
すらりとした身体に凛とした顔立ちの彼女が喜ぶ様は、このような場でなければ絵になっただろう。
「いくら妹でも、私の婚約者を虐めたのが運の尽きだったな。ショックだとは思うが、生き延びられることを祈っているよ。
……ん? 今、なんと言った?」
「ですから、国外追放にしてくれてありがとうございます、と言いました」
「驚かないのか⁉︎ 重罪だぞ⁉︎」
驚いたりはしない。婚約破棄される日のうちに、国外追放を言い渡されることは分かっていたから。
王太子はこの日の計画を周囲に誇らしげに話していたのだ。クラウディアの耳に入らないことがない。
「ええ、むしろ嬉しいくらいですわ」
きっと私への嫌がらせのつもりで国外追放にしたのだろう。それほど殿下に嫌われていたのなら、少し悲しい。
もちろん、悲しい気持ちは表に出すことはない。そうすれば彼らを喜ばせてしまうから。
「なっ……。まあいい、お前はもうここには居られないのだからな」
「そうですわね。せめて後悔のないように生きてくださいませ」
「苦し紛れか? もうよい、連れて行け」
間もなくやってきた騎士達に手を拘束され、パーティー会場から引きずり出されるクラウディア。
無抵抗に運ばれる彼女を見て、良く思っていなかった者は愉悦に頬を緩めた。
その時に、王太子に寄り添う妹のクラリスが怪しい笑みを浮かべながら「ざまぁみろ」と口を動かしていることに気が付いたクラウディアだったが、全く気に留めなかった。
何故なら、彼女にはこれから地獄のような日々が訪れるのだから。
王太子の婚約者は楽じゃないのだ。
ちなみに、両親も会場にはいたものの、クラウディアのことを見向きもしなかった。
明るい赤い色の髪と同じ色の瞳を持つ彼女を「血の色みたいで気色悪い」と言って忌避していたから。
でも、そんな理由で嫌がらせされるのも今日が最後。
そのまま馬車に乗せられ、あっという間に会場になっている王城から離れていった。
それからどれくらい経ったのか。国境にある関所に着くと、隣国側に放り出されてしまう。
国外追放とは言っても、本来は追い出されるだけではない。街まで送り届けるのが任務だった。
この時の刑を執行する騎士団は、かなり適当だった。
「どうやって街まで移動すればいいのかしら……」
見渡す限りの山を見るクラウディアの表情は、少しばかり絶望に染まっていた。
愚かな者達はまだ知らない。悪役に仕立て上げた相手が、どれほど大きな物を持っていたのかを。
そして、それを失ったことが自身の破滅へと繋がることを。
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