婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

文字の大きさ
上 下
149 / 155

149. 変化

しおりを挟む
 あれから2週間、すっかり落ち着きを取り戻した私は今までよりも忙しい日々を送っている。
 というのも、結婚に向けた準備を本格的に始めたから。

 今私が暮らしている場所はジーク様が暮らしている場所から離れているけど、お互い毎週のように行き来しているから3日に1回は直接会うことも出来ている。
 貴族の結婚は直前まで前は週に一度も会えないということも珍しくないから、私は幸せなはずなのだけど……。


「あと3日も会えないのね……」


 既に3日間ジーク様に会えていないせいで、早く彼に会いたいという気持ちでいっぱいになっていた。


「3日なんてあっという間ですよ」

「どうしてこういう時に限って暇になるのかしら」

「それはお嬢様がお茶会を断ったからです」

「……」


 王城からの帰りの馬車の中、アンナに何も言い返せない私だった。

 それからは家に着くまで気まずい沈黙が続いてしまった。



「「お帰りなさいませ、お嬢様」」

「ただいま。そこにアトランタ家の馬車が止まっていたけど、ジーク様はまだいるのかしら?」

「ええ、お嬢様に会いたいそうで、今日は泊まられることになりました」

「分かったわ、ありがとう」


 今日ジーク様に会えないはずだったのは、ジーク様が夕方になる前にはアトランタ領に戻らないといけないのに、私が午後から王妃様に呼び出されていたから。
 だから、ジーク様が長くここにいてくれれば、今日会うことが出来るのよね。


 ジーク様がいると知り、少し浮かれながら部屋に向かっている時だった。、


「フィーナ、おかえり」

「ジーク様っ! ただいま戻りました」


 つい抱きついてしまったけど、引かれてないわよね……?

 そんなことを思っていたらジーク様に抱き返され、おまけに軽く口付けまでされていて。
 恥ずかしくてつい視線を逸らしてしまう私だった。


「フィーナ、実は急に泊まることにしたから部屋が用意出来ないみたいなんだ。だから、フィーナの部屋で寝てもいいかな?」

「もちろん良いですわよ」

「それと、俺に対して敬語は使わないようにして欲しい。もうすぐ夫婦になるんだから、距離は作りたくない」

「私も同じ気持ちよ。お客様の前以外は普通に話すようにするわね」


 そんな会話をしていると、侍女が夕食が出来たことを伝えにきて、私達は他愛ない話をしながらダイニングに向かった。


 夕食中はいつも通り雑談をしたり情報交換をしていたのだけど、夕食を終えて部屋に戻ろうとした時にお母様がこんなことを口にした。


「今夜は使用人も近づけないようにするから楽しんでも良いからね?」

「た、楽しむってどういうことですか⁉︎」

「そのままの意味よ」

「遠慮しておきますわ……」


 この後、湯浴みを終えてジーク様とベッドに入ったのだけど、特に何かすることはなくそのまま眠りについてしまう私だった。
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

公爵令嬢は占いがお好き

四宮 あか
恋愛
0時投稿で更新されます。 辺境の爵位だけは立派な公爵令嬢ティアは条件の悪さと特殊な加護を持っているせいで全然婚約者が見つからなかった。 相手探しはとっくに諦めていたティアは王都で行われた仮面パーティーを抜け出し、異国の衣装を身にまとい街の一室で今日も趣味の占い師ごっこをしていた。 そんなティアの下に美しい容姿と物ごとを面白いか面白くないかで判断する性格から、社交界でゴシップネタが絶えない奇人 ノア・ヴィスコッティがやってきて占いを的中させてみせろといいだした。 加護を使って占いを的中させたところまではよかったのだけれど。 彼はティアに興味を持ってしまったから、さぁ大変。 占いの館をつぶしてトンズラしたのはいいものの、それで逃げ切れる相手ではなかった。 ※なろう、カクヨムにも上げてたのですが。 いろいろ書き足したいところ足してあげます。 表紙はイラストは。 フリー素材サイト『illust AC』さまより アイコさんの占い師①の作品を利用規約を確認してお借りしております。

処理中です...