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150. 準備

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「フィーナ様、お待ちしておりました」


 あれから2日、アトランタ邸に来た私は執事さんに恭しく頭を下げられていた。


「早速で申し訳ないのだけど、案内してもらえる?」

「もちろんでございます。こちらです」


 屋敷の中に向かい始めた執事さんについていく私。
 すると、廊下の向こうからジーク様が慌てた様子で私の方に走ってきた。


「フィーナ、出迎えられなくてごめん!」

「気にしてないから大丈夫よ?」


 ジーク様はアトランタ家の当主だから、忙しくて出迎えられないのは仕方ないもの。


「良かった」


 そう呟き、安堵した様子のジーク様。
 それから少しして、執事さんがとある部屋の前で足を止めてこう口にした。


「こちらになります」


 ゆっくりと扉が開けられると純白のドレスが目に飛び込んできた。

 感動に似たものを感じながら、近付いて一通り見てみる私。
 すると、仕立て屋の奥さんがこう問いかけてきた。


「デザインは問題ありませんか?」

「大丈夫ですわ」
 
「問題ない」


「フィーナ様、早速準備するのでこちらにお願いします!」

「分かったわ」


 これから完成したウェディングドレスの調整をするから、着替えの準備のために一旦別室に移動する私。
 そこで侍女さん達に囲まれて、マッサージにメイクに……本当に必要なのか分からないことまで色々なことをしてくれた。


「まるで本番みたいね?」

「本番と同じようにするのが一番ですから」


 私の呟きにそう答える侍女さん。
 それから間もなく準備が終わり、ドレスを着る時になった。


「では、失礼しますね」

「お願いするわ」


 流石にウェディングドレスを1人で着るのは難しいから侍女さんの手を借りる必要がある。というよりも、ほとんど侍女さん達がしてくれている。
 それなのに、緊張してしまっている私。


「フィーナ様、少し歩いてみてください」

「これでいいかしら?」

「もう少し肩の力を抜いても大丈夫ですよ」

「それは分かってるけど、緊張するのよ……」


 そう呟くと、ジーク様が部屋に入ってきた。


「おぉ……」

「ジーク様?」

「あまりにも綺麗すぎて驚いたよ。想像以上だ」


 そんなことを口にしてから、ゆっくりと私の周りを回るジーク様。
 それに続いて仕立て屋のマダムさんが最終確認を始めた。、


「うん、大丈夫そうだね」

「フィーナ様、キツかったりするところはありませんか?」

「大丈夫ですわ」

「では、これで完成になります。何かあればご連絡ください。すぐに参りますので」

「ありがとう、助かるよ」

「ありがとうございます」


 私達がお礼を終えて少しするとマダムさんが部屋から出ていった。そして……


「では、ジーク様も一旦出てください」

「分かった」


 ……ジーク様は名残惜しそうな表情で部屋の外へ歩いていった。


 この後、元の服装に戻った私はジーク様といつもよりも長めのお茶をしてから帰路についた。

 式は1ヶ月先だけど、本当に結婚すると思うとなんだか不思議な感じだわ。
 この気持ちは一体なんなのかしら……?
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