上 下
515 / 520
第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-73

しおりを挟む
地下格納庫 ジン回想――

 今回のミッションを不審に思ったミモザは、ハルヒを問い詰めた。

「先輩……これは、 『陰謀』ですね?」チャ
「は? 何言ってるんだお前?」

 ミモザに指摘され、何処かソワソワし出すハルヒだった。

「大方ジン様に恨みを持つ者からの嫌がらせでしょう? 体のイイ厄介払い、 とか?」チャ
「ババ、 バカな事を言うな! そんなワケある筈無かろう!?」

 ミモザに追及され、ハルヒは上を向き、目が泳いでいて明らかに動揺していた。
 すると朔也がポツリと呟いた。

「そう言えば昔、 ボクがデビューしてから直ぐに変な嫌がらせが増えたっけ……」
「ちなみにどのような?」
 
 興味津々なミモザは遠慮なく朔也に聞いた。

「先ず、 住所が割れてるのが不思議だったね。 ポストに殺害予告とかは序の口で、 いきなりおっさんが家に来て、『女房が実家に帰ってしまったのはお前のせいだ!』とか言われたり……」
「直接攻撃ですか?」
「そんな事があって、事務所の方針でマネージャーの四郎とホモのフリをしていたんだ……」
「そう言えばあったカモ、 ホモ疑惑……」

 ミモザは顎に手をやり、記憶を探った。

「そうしたら今度はおばさんが家に乗り込んで来て、『アナタのせいで旦那が変な趣味に目覚めてしまった! 離婚するからアタシと結婚して!』って迫って来たんだ……」
「その奥さん、 策士やのう……」

 ハルヒはついうっかり胸の内を吐露してしまう。
 それぞれの言い分はただの言いがかりであり、当然受け入れられる筈もなかった。

「その後もストーカー騒ぎとかが頻発して、 ボクも事務所の人間もほとほと困り果てていた時、 四郎が勝手に魔法で性転換して来たんだ……それで結婚した。 あくまでも『偽装』だけどね……」
「はぇ~!? 裏にそんな事情があったんですか?」

 驚愕したミモザは、イスから飛び上がりそうになった。

「性転換って……マネージャー、 そこまでするか!?」
「ああ。 その時はそれが最善の策だったよ」
  
 ドン引きのハルヒに、朔也は自嘲気味にそう言った。

「発表直後は阿鼻叫喚のカオス状態だった。 ファンたちが早まった事をするんじゃないかとハラハラしたよ……」
「いわゆる『ジン様ロス』ですね?」
「うん。 でもこれを境に嫌がらせはピタッと止んだんだ……」
「事務所も沈静化に奔走したんでしょうね……乙でした」

 ミモザは事務所のスタッフにねぎらいの言葉をかけた。
 ハルヒは興味本位で朔也に聞いた。
 
「で? 結婚生活はどうだったんだ?」
「偽りの結婚生活とは言え、それはそれで実りのあるものだったよ。 演技に幅が広がったって評論家からは褒められたし……」
「さっき今はフリーって言ってましたよね? じゃあその関係は?」
「数年後に解消した。 つまり離婚だね……」

 そこで朔也は黙ってしまった。
 気まずそうなミモザを横目に、ハルヒが声を張り気味に言った。

「過去にそう言う事があったにしても、 それは今回のミッションには関係ないからなっ!」
「言い切れますか先輩? ジン様を逆恨みしている輩が企てた事じゃないって?」ジロ

 開き直りともとれるハルヒの発言に食って掛かるミモザ。 
 朔也はそれを制した。

「仕事に穴を空けなくてイイんだったら、 ボクは行くよ」
「ジン様!? イイんですか? 罠かも知れないんですよ?」
「わかってるさ。 タラレバの話になるけど、 成功時の報酬とか色々考えて、 ボクにとってプラスになると思うから」

 心配そうに朔也を見つめるミモザの横で、ハルヒは満面の笑顔で朔也の肩に手をポンと置いた。

「良く言った! 要はお前がこのミッションを完遂させればイイのだ! ハッハッハ」

 満足げに何度も頷いたハルヒは、最後に朔也に言った。

「作戦開始は三日後だ。 それまでに親しい奴とでも飲みに行ってこい!」

 そして朔也は格納庫を後にした。



              ◆ ◆ ◆ ◆



インベントリ内 特設会場

「とりあえず、 ココまでで質問とかある?」

 ジンはそこで一旦回想を切り、質問コーナーになった。

「聞きたい事は山ほどあるけど……いつか生身のアナタに会った時に洗いざらい聞くわ……」
「シレーヌ……わかった。 その時に全部話す。 約束するよ」

 シレーヌは悲し気にジンにそう言うと、ジンは優しい笑顔でそう言った。
 先に手を挙げたのは、今までナギサに抱かれて黙っていたオシリスだった。

「ちょっと聞きたいんだけど、イイかしら?」 
「これは可愛らしいモフモフちゃんだね? どうぞ?」
「オシリスが朔也さんに質問? 何だろ?」
 
 近くにいた静流が首を傾げている。

「その『ベラ』とか言うアンドロイドに受肉させた精霊族に、 ちょっと心当たりがあるんだけど……」
「そうなの? って事はキミも精霊族なのかい?」
「まぁね。 私の知っている人に、 自分の夫を『ダー様』って呼ぶ人がいたの」
「私も知ってる。 と言うか記憶の中だけど」
 
 オシリスの発言に忍が反応した。

「黒田忍クン、 もしかしてキミは、 前世の記憶が残ってるのかい?」
「残ってる。 私の前世はワタル……『黄昏の君』の第3夫人だから」

 忍の発言に、ジンの目の色が変わった。

「ふぅん。 あの『五十嵐ワタル』のねぇ……実に興味深い」
「私の記憶だと、 その特徴ある口癖は第2夫人だと思う」

 そこでさらに割り込んで来た者がいた。

「うんうん。 確かにシルフィっぽいね♪ 懐かしいなぁ」

 ブラムは身を乗り出してそう言った。
 ジンはブラムに聞いた。

「そう言うキミは?」
「ウチはブラム。 正真正銘の第5夫人だよん♪」
「キミが黒竜ブラムか? こりゃたまげた!」
 
 ジンはオデコに手をやり、興奮気味に言った。

「そだよ。 で、 シルフィで合ってる?」
「ああ。 ベラに受肉させた精霊族は多分シルフィードで合ってると思う。 ボクに古代文字を読むスキルがあったら確実だったね」

 ジンがそう言うと、ブラムの顔がパァッと明るくなった。
  
「だってさオシリスちゃん! 良かったね♪」
「うん……シルフィ様は現在ご一緒なのですね? ジン様?」
「こうなる直前まで一緒だったから、 多分今も近くにいると思う」
「あぁシルフィ様……」

 オシリスは今にも泣きそうな声でそう言った。
 次に手を挙げたのは、アマンダだった。

「ジン様、 私の記憶が正しければ、 なのですが……」
「何だい? アマンダ君?」

 アマンダは少し躊躇していたが、やがて口を開いた。

「軍の『宇宙開発局』に、『篠宮ハルヒ』という者がいますが……旧姓はたしか『綾瀬』だったような……」
「ハルちゃんが宇宙局に? まさか、 あんなにバカにしていたのに……」

 ジンは首を傾げ、困惑していた。
 その様子を見て、ネネがジンに言った。

「転職されててもおかしくはないと思いますよ? かつてアナタたちが所属していた『エルフィンナイツ財団』はとっくに解体されましたから……」

 ネネの発言に数人が反応した。

「なっ!? 『エルフィンナイツ』ですって!?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

クジを引いたら幼馴染と異世界に来て能力身につけた

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:61

斎王君は亡命中

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:2

愚者の狂想曲☆

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:311

召喚勇者の餌として転生させられました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,433pt お気に入り:2,248

イートターンセックス 食事と性的な事が入れ替わった世界

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:47

さようなら旦那様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:46,208pt お気に入り:436

処理中です...