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Act.11 昼食から始まる非日常について。①
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朝から始まった重役会議と言うか、オレの構想を単に発表する会。
反対はおろか意見するヒトも誰も居らず、会社の重役の皆さんはウンウンと感心したかのように肯くだけ。
そんなしょーもない会議が終わると、重役の皆さんは義祖父とオレに挨拶を交わし足早に会議室を退席していく。
「予想通りって言うか――なぁ」
少しガッカリ気味に溜息を吐き呟くオレ。
仮にも世界シェアに名を連ねる大企業の重役の皆さんが、揃いも揃ってイエスマンって……どうなんだろうね?
それだけ義祖父が凄いヒトってことにしておくのが無難なのかな……。
会議室に未だ残っている義祖父にしても、ハンカチで目頭を覆って感涙している始末。
孫のオレの成長振りに、感慨深く思うところでもあったんだろうね。
でもさ、皆んな良いのかそんなで?
「お疲れ様で御座いました、そーぢ様。とても解り易く丁寧な資料に御座いました。それとご説明なさっているそーぢ様に御座いましても、本当にとても凛々しいお姿で……不覚にも私、濡れ――ケホケホ。見惚れて感嘆致した所存に御座います」
唐突にオレの背後に気配なく現れた金髪メイドさんが、そっと耳打ちしてオレの説明を容赦なく褒めてくれた。
不穏当な台詞がチラッと見えた妙な世辞だと解ってても、ちょっと嬉しいのは内緒。
朝の出迎えからずっと引っ付き虫と化していた金髪メイドさん。
耳元で囁かれた所為もあって、とても良い香りが再びオレを包む――。
それは姉さんとはまた違った、とっても安心する優しい香りだった。
「そーぢ様。お食事の用意が整っておりますゆえ、別室にご案内致します」
「有難う。さてと……義祖父も引っ張ってご飯にしようか。――貴女も同席してくれるよね?」
なんとなくだけど、一緒に過ごしたい気分にさせる金髪メイドさん。
如何わしい不埒な気分で一緒に過ごしたいのではなく、なんと言って良いのやら。
近い表現だと家族、それもお母さん。
年齢的に失礼かもしれないけど、そんな気分にさせる不思議な魅力の女性だね。
「畏まりました。――そーぢ様のご命令とあれば。他にもなんなりとお申し付け下さいませ」
「じゃあ……様呼びを止めてく――」
「――却下。に御座います」
言い掛けるオレに被せ、速攻で拒否る金髪メイドさん。
「命令ならとか、なんなりと申し付けろとか、たった今、貴女はそう言ってませんでした?」
「優先順位が御座いますゆえ。そこな爺――ケホケホ。そこの社長にそーぢ様とお呼びするように、私共は厳命されておりますゆえ」
清々しいほどに無邪気な悪戯っ子な笑みを浮かべて、真隣に立つ金髪メイドさんだった。
強要されて言わされてるって感じしないんだけど?
どっちかと言うと好んで態と言ってるって感じがするんだけど?
「さよか――ま、良いや。お腹が空いたし行きましょう」
「――畏まりました」
そして別室――昼食を用意してくれている部屋に案内されるオレ。
扉を開けてくれて中に誘う金髪メイドさん。
「――にゃ⁉︎」
目に飛び込む風景を見やって余りの事に舌が回らず素っ頓狂な声を上げてビックリした!
其処はオレにとって、正に異世界に等しかった――。
煌びやかなシャンデリアに上品な調度品で装飾され、美しいレリーフで彩られた部屋。
レストラン特有の静かなクラシック音楽がまったりと流れ、優しい雰囲気を醸し出している。
真珠の輝きに等しい真っ白なテーブルクロスで覆われた長い食卓には、一目で高級品と解る食器の数々があしらわられていた。
食器に負けず劣らずに豪華過ぎる料理の数々が盛り付けられ、食卓を埋めるかの如くこれでもかと並べられていた。
そして数十人もの由緒正しきメイド服を身に纏った美しい女性達が忙しなく配膳、給仕を行っていた――。
オレを目にするなり全員が手を止めて、姿勢を正して礼を尽くした挨拶を皆が振る舞う。
まるで中世の貴族か宮殿の食卓風景を見せられて、ナニ事かと呆気にとられ茫然自失になっていたオレ。
「ささ、そーぢ様もこちらへ」
義祖父の前に傅く社長室前に居た片割れの黒髪メイドさんが出迎えてくれた。
俺の手を引き部屋の中に誘われ、席の方へと誘導されるオレ。
そして黒髪メイドさんが椅子を引き、長い食卓の義祖父の差し向かい――下座席に座らせてくれる。
着席した瞬間、忙しなく動いていたメイドさん達が一斉に壁際に集まり整列した――。
「お召し物が汚れてしまいますゆえ」
一緒に来ていた金髪メイドさんが、オレの首に汚れ避けのナプキンを甲斐甲斐しく巻いてくれた。
その後、やや左後ろに下がって再び気配なく佇み静かに控える。
表現としては闇夜に紛れ溶け込む。
そんな側に居るのが全く認識できないほどの気配の消し方でね。
やっぱり貴女は忍者の末裔ですか?
それとも暗殺者かナニかですか?
「そーぢよ、私のお抱えシェフ達に腕を振るわせ、そーぢの為だけに用意させた本日の昼食である! 好みを聴き及び作らせた料理だが、もしも口に合わない料理が混ざっておったら不勉強な私を許して欲しい。――さぁ、心ゆくまで堪能してくれたまへよ!」
大袈裟な身振り手振りと堂々とした態度で宣言する義祖父。
そして、壁際に控えていた美しいメイドさん達が一斉に傅いた!
「――あのさ、義祖父」
「何ぞ、そーぢよ! なんなりと申してみよ!」
「その王様風の喋りと態度は良いけども……こんな量、オレ一人で食べ切れるわけがないんだけど?」
「――なんと⁉︎ そのような些細な心配をしておったか! 当然、構わぬよ、そーぢよ。好きな料理を好きなだけ食べれば良いだ」
「――あのね、限度って言葉知ってる? あとさ、勿体ないって言葉も」
「そーぢよ、馬鹿にするでないわ! 勿論、知っておるに決まっておる! 普段はもうほんの少し僅かにちょっぴりだけ質素に抑えておるわ! ――久しぶりのそーぢとの食事だったので、私もはしゃぎ過ぎた感は否めないが……次回からは更にもうほんの少し僅かにちょっぴりだけ質素に振る舞うとしよう」
「――さよか。言うだけ無駄か……だったら良いよ、義祖父」
オレと会えるのが嬉し過ぎて暴走したのは理解できるけどね、長机でも並び切らないこの量は流石にないでしょ?
――あ、良い事を思いついた!
―――――――――― つづく。
反対はおろか意見するヒトも誰も居らず、会社の重役の皆さんはウンウンと感心したかのように肯くだけ。
そんなしょーもない会議が終わると、重役の皆さんは義祖父とオレに挨拶を交わし足早に会議室を退席していく。
「予想通りって言うか――なぁ」
少しガッカリ気味に溜息を吐き呟くオレ。
仮にも世界シェアに名を連ねる大企業の重役の皆さんが、揃いも揃ってイエスマンって……どうなんだろうね?
それだけ義祖父が凄いヒトってことにしておくのが無難なのかな……。
会議室に未だ残っている義祖父にしても、ハンカチで目頭を覆って感涙している始末。
孫のオレの成長振りに、感慨深く思うところでもあったんだろうね。
でもさ、皆んな良いのかそんなで?
「お疲れ様で御座いました、そーぢ様。とても解り易く丁寧な資料に御座いました。それとご説明なさっているそーぢ様に御座いましても、本当にとても凛々しいお姿で……不覚にも私、濡れ――ケホケホ。見惚れて感嘆致した所存に御座います」
唐突にオレの背後に気配なく現れた金髪メイドさんが、そっと耳打ちしてオレの説明を容赦なく褒めてくれた。
不穏当な台詞がチラッと見えた妙な世辞だと解ってても、ちょっと嬉しいのは内緒。
朝の出迎えからずっと引っ付き虫と化していた金髪メイドさん。
耳元で囁かれた所為もあって、とても良い香りが再びオレを包む――。
それは姉さんとはまた違った、とっても安心する優しい香りだった。
「そーぢ様。お食事の用意が整っておりますゆえ、別室にご案内致します」
「有難う。さてと……義祖父も引っ張ってご飯にしようか。――貴女も同席してくれるよね?」
なんとなくだけど、一緒に過ごしたい気分にさせる金髪メイドさん。
如何わしい不埒な気分で一緒に過ごしたいのではなく、なんと言って良いのやら。
近い表現だと家族、それもお母さん。
年齢的に失礼かもしれないけど、そんな気分にさせる不思議な魅力の女性だね。
「畏まりました。――そーぢ様のご命令とあれば。他にもなんなりとお申し付け下さいませ」
「じゃあ……様呼びを止めてく――」
「――却下。に御座います」
言い掛けるオレに被せ、速攻で拒否る金髪メイドさん。
「命令ならとか、なんなりと申し付けろとか、たった今、貴女はそう言ってませんでした?」
「優先順位が御座いますゆえ。そこな爺――ケホケホ。そこの社長にそーぢ様とお呼びするように、私共は厳命されておりますゆえ」
清々しいほどに無邪気な悪戯っ子な笑みを浮かべて、真隣に立つ金髪メイドさんだった。
強要されて言わされてるって感じしないんだけど?
どっちかと言うと好んで態と言ってるって感じがするんだけど?
「さよか――ま、良いや。お腹が空いたし行きましょう」
「――畏まりました」
そして別室――昼食を用意してくれている部屋に案内されるオレ。
扉を開けてくれて中に誘う金髪メイドさん。
「――にゃ⁉︎」
目に飛び込む風景を見やって余りの事に舌が回らず素っ頓狂な声を上げてビックリした!
其処はオレにとって、正に異世界に等しかった――。
煌びやかなシャンデリアに上品な調度品で装飾され、美しいレリーフで彩られた部屋。
レストラン特有の静かなクラシック音楽がまったりと流れ、優しい雰囲気を醸し出している。
真珠の輝きに等しい真っ白なテーブルクロスで覆われた長い食卓には、一目で高級品と解る食器の数々があしらわられていた。
食器に負けず劣らずに豪華過ぎる料理の数々が盛り付けられ、食卓を埋めるかの如くこれでもかと並べられていた。
そして数十人もの由緒正しきメイド服を身に纏った美しい女性達が忙しなく配膳、給仕を行っていた――。
オレを目にするなり全員が手を止めて、姿勢を正して礼を尽くした挨拶を皆が振る舞う。
まるで中世の貴族か宮殿の食卓風景を見せられて、ナニ事かと呆気にとられ茫然自失になっていたオレ。
「ささ、そーぢ様もこちらへ」
義祖父の前に傅く社長室前に居た片割れの黒髪メイドさんが出迎えてくれた。
俺の手を引き部屋の中に誘われ、席の方へと誘導されるオレ。
そして黒髪メイドさんが椅子を引き、長い食卓の義祖父の差し向かい――下座席に座らせてくれる。
着席した瞬間、忙しなく動いていたメイドさん達が一斉に壁際に集まり整列した――。
「お召し物が汚れてしまいますゆえ」
一緒に来ていた金髪メイドさんが、オレの首に汚れ避けのナプキンを甲斐甲斐しく巻いてくれた。
その後、やや左後ろに下がって再び気配なく佇み静かに控える。
表現としては闇夜に紛れ溶け込む。
そんな側に居るのが全く認識できないほどの気配の消し方でね。
やっぱり貴女は忍者の末裔ですか?
それとも暗殺者かナニかですか?
「そーぢよ、私のお抱えシェフ達に腕を振るわせ、そーぢの為だけに用意させた本日の昼食である! 好みを聴き及び作らせた料理だが、もしも口に合わない料理が混ざっておったら不勉強な私を許して欲しい。――さぁ、心ゆくまで堪能してくれたまへよ!」
大袈裟な身振り手振りと堂々とした態度で宣言する義祖父。
そして、壁際に控えていた美しいメイドさん達が一斉に傅いた!
「――あのさ、義祖父」
「何ぞ、そーぢよ! なんなりと申してみよ!」
「その王様風の喋りと態度は良いけども……こんな量、オレ一人で食べ切れるわけがないんだけど?」
「――なんと⁉︎ そのような些細な心配をしておったか! 当然、構わぬよ、そーぢよ。好きな料理を好きなだけ食べれば良いだ」
「――あのね、限度って言葉知ってる? あとさ、勿体ないって言葉も」
「そーぢよ、馬鹿にするでないわ! 勿論、知っておるに決まっておる! 普段はもうほんの少し僅かにちょっぴりだけ質素に抑えておるわ! ――久しぶりのそーぢとの食事だったので、私もはしゃぎ過ぎた感は否めないが……次回からは更にもうほんの少し僅かにちょっぴりだけ質素に振る舞うとしよう」
「――さよか。言うだけ無駄か……だったら良いよ、義祖父」
オレと会えるのが嬉し過ぎて暴走したのは理解できるけどね、長机でも並び切らないこの量は流石にないでしょ?
――あ、良い事を思いついた!
―――――――――― つづく。
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