すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第八話

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茉理は絢斗に腕枕をされていた。
絢斗は茉理の髪を撫でながら、少しだけ機嫌が直ってきた。

「絢斗。気持ち良くて眠くなってきちゃう」

安心し切っている仔猫に、狼は牙を隠して微笑む。

「寝てもいーよ。って言うか、おばさん何時に帰ってくる?」

茉理の家に帰ってきたのも夕方だったが、茉理の母親の姿はなかった。

「分かんない。今日、絢斗たちと出掛けるって言ったから、夕飯まで食べてくるって思って、お母さんもゆっくりしてくるんじゃない?」

ウトウトしながら茉理は言う。

「お母さんも友達と会うって言ってたし」

「そっか。じゃあ、夕飯は一緒に何か食いに行く?」

「良いの?」

もうまぶたが閉じかかってる茉理。絢斗はその顔が可愛くて、指先で頬を撫でる。

「うん。だからそれまで少し寝なよ」

「う、ん……………」

スピーと寝息を立てて茉理は眠ってしまった。


起きてると、恥ずかしいんだろ?
じゃあ、寝てる間に、いただきまーす。


ニヤリと笑って絢斗は茉理の唇を見つめて、静かに唇を重ねようと顔を近づける。

「茉理!帰ってんのー?」

遠くから茉理の母親の声が聞こえて、絢斗はビクッとして茉理から顔を離した。
茉理は、うーんと少し声を出すと、眠そうな顔で絢斗を見る。

「あれ?お母さん、帰ってきたのかな?」

茉理が言うと、絢斗はドキドキしながら頷く。
茉理はベッドから起き上がり部屋を出て行った。

「お母さん?帰ってたのー?俺、2階に絢斗といるよー」

ドアの外から茉理の声が聞こえてくる。
絢斗の心臓はバクバクしている。


っとによー!
良いところだったと言うのに!
おばさん!
息子の貞操の危機が分かったんか!


項垂れる絢斗。
茉理が部屋に戻ってきた。

「お母さんが菱越のデパ地下でなんか買ってきたんだって。絢斗も食べていく?」

何も知らない天使の笑顔の茉理。

「あ、ううん。俺も家で食うわ。そろそろ帰るよ」

絢斗もベッドから起き上がる。

「寝そうになってごめんね」

申し訳ない顔で茉理が言う。


ううん。
寝てくれてチャンスだった。


と言いそうになって絢斗は笑ってごまかす。
絢斗がニコニコして機嫌が良さそうなので、自分の気持ちを告白して良かったと思った茉理だった。
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