異世界遺跡巡り ～ロマンを求めて異世界冒険～

464帰還

帰りの航海は快調だった。
カミーラ船長の船に海賊船を繋げ、海賊船の牢に海賊を繋いでいるので俺達は海賊船側に移っている。
直接の見張りは兵士の方々が交代で行ってくれるので、俺達は甲板で過ごしていた。
今回の海賊退治で気を良くしたレオとアルは船の上だと言うのに激しい訓練を行い、頻繁に俺の治療を受けている。
俺の方は旅の間、兵士や船員相手に魔力同調を続けてきた事もあり、２人の治療を行っても問題無い程度の余裕がある。
自分ではなかなかの上達だと思っていたが、ヤマトが伝えるリッチの見解は

『この短時間でなかなかの上達で目標の半分には届いたとリッチが言っているにゃ。
　この調子で行けば、秘薬を使わずに重症患者を治すだけの腕を身に付けられるのも近いそうにゃ。』

現在の俺の技術は、一流の医療技術に対して半分位だそうだ。
まだまだ、先が長い道のりだ。

『何を落ち込んでいるにゃ。
　これは何十年も掛けて習得する技術で、今の拓は凄い進歩なのにゃ。
　持っている大量の魔力と今までのグリムの指導に感謝だとリッチは言っているにゃ。』

他の人より続けて訓練することで、上達が速いのだから良しとした方が良いだろう。
そして、確かに今の魔力操作技術はグリムのお蔭だ。グリム、リッチに素直に礼を伝えた。

今回海賊達を相手にして、魔力同調をしながらの治療を実感する事が出来た。
魔力同調使った治療は、体が自分の魔力で治していると感じる。
普通の治療の場合、外部から与えられる魔法の影響が強すぎると、体が異物として拒否反応を起こしてしまう。
それに対し魔力同調を行なった治療は、体が自己治癒として捉える為、この拒否反応が少ない。
魔力同調の精度が上がればより拒否反応を無くす事が出来るらしい。

魔力同調のの訓練を始めてから周囲に大怪我をした人が居なかったので、海賊の治療は役に立った。
リッチの計画では、まだ魔力同調の訓練を中心に行い、治療に取り入れるのは先になっている。
今でも十分な効果が得られるが、更に先を目指すなら魔力同調のレベルを上げてからの方が効率が良いらしい。
この魔獣が多くいる世界で生きていくのなら、強力な治癒魔法を身に付けるのは絶対必要だ。

今は、兵士や船員が魔力同調の訓練相手をしてくれているが、ラグテルの町に戻ったらどうしたものか。
アークやクリームのメンバーだと魔力同調が簡単で訓練にならない。
訓練相手を探さないと上達を望む事は出来なくなってしまう。
戻るまでに何処で行うかを考えておかないといけないな。


船が港に着くと、俺達は大勢の人に迎えられた。
俺達と言うより、カミーラ船長と言った方が正しい所かも知れない。
相変わらず凄い人気だ。

直ぐに俺達が居る海賊船の方へ兵士達が来て海賊の引き渡された。
海賊の金や貴金属はブルネリ公爵から借りていることにした拡張バッグに収納した
そして、カミーラ船長やポトリ教授は兵士、船員に海賊退治、品物については口止めしてくれていた。

残りの発掘品の運び出しや、港の人夫が行うので俺達の仕事はこれで終わりだった。
俺達に必要のない海賊の品については、カミーラ船長が売却の手配をしてくれる事になっている。

「ＯＺの皆さん、お帰りなさい。
　海賊に襲われたと聞いたけど、大丈夫でしたか。」

船を降りるとエリックとサーシャが迎えてくれた。
海賊を連行していたので俺達の事を気にしてくれていたみたいで、全員無事だと知って安心してくれた。

２人は俺達を少し離れた海岸の方へ連れて行くと、網を掛けた生簀の様な場所が有った。
そして中には

「もしかして、捕まえたタコをここに入れているのか。」

「えぇ、ＯＺの皆さんがタコを好きだったので。
　海岸での美味しい食べ物のお礼です。」

時間を作って捕まえてくれたらしい。
２人の前でアイテムボックスや拡張バッグを使う訳にはいかず、この場で処理をし籠を借りて宿へ運んだ。
ただ、大量のタコを見た兵士や船員は何も言わないが、ゲテモノ扱いをしているのが良く分かる。


******（カミーラ船長）

「王国からの連絡が途絶えているとはどういう事だ。」

「２週間前に商人が来てから、途絶えています。
　山賊や魔獣の可能性を考え、５日前に兵士と冒険者からなる部隊を組んで街道の確認を行っています。」

未だ、原因は分かっていないか。
ポトリ教授や、ＯＺの皆には暫く留まってもらった方が良いだろう。