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212貴族パーティ

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貴族のパーティ当日、屋敷の中は戦場と化していた。皆さん最終チェックに余念が無い。
午後になると、館の前には続々と馬車が到着し綺麗な身なりの貴族がやって来る。
ブルネリ公爵に誘って頂けたので、パーティ料理を食べる為に俺もタキシードに着替えた。
今回の為に、何時もの服屋で用意した。


「タキシードを着るなんて一人前ね。
 しかし、本当に私で良いの。礼装ならもっと良い店が有るわよ。
 正直、私は一般服しか作ってないし。」

タキシードを依頼した時の服屋の店主の言葉。

「無理ならあきらめますが、出来れば作ってもらいたいです。
 この店の服、本当に気に入っているんですよね。」

「そこまで言われてやらなきゃ、女が廃るわね。
 誠心誠意を込めて作らせて貰うわ。ただ、他は良いとして、問題は貴方ね。」

店主が俺を見て考え込む。

「今は成長期だから、直ぐに着れなくなってしまうわ。
 生地は見栄えは良いけど安い生地を使ったらどう。」

色々と気を使ってもらい、出来上がった服は十分満足できる出来だった。


ウェスト周りは緩めにし、昼食も少しにして準備万端だ。

「おっ、拓ちゃんのそういう格好も可愛いな。」

そう言って、浩司が俺に抱きついて来る。

「浩司はカッコよく決まっているよね。」

「おっ、そうか。こんな格好をしたのは初めてだよ。」

まんざらでも無い感じで、ポーズをとっている。

「どう、準備は出来た。開けるわよ。」

入ってきたのはサリナ姫とバラン将軍だった。
サリナ姫、本当に奇麗だ。
軍の礼服姿のバラン将軍もカッコいい。

「2人とも、凄く似合っている。何時もの姿とは全く違うね。
 こうして見ると姫と将軍の雰囲気があるよ。」

「これが本気の私よ。見直したかしら。
 浩司さんも、拓ちゃんも似合っているわね。拓ちゃんは話さなければ凄く可愛いわよ。」

話さなければって、それはお互い様だろう。
でも、褒められて素直に嬉しい。改めて2人の姿を見ると

「あっ、2人とも俺が作ったブローチを付けてくれているんですね。
 サリナお姉さんは香水も使ってくれているんだ。
 実際に付けている所を見ると嬉しいです。」

「何を言っている。このブローチは自慢なんだぞ。
 部下達も、全員ブローチを付けて警護にあたっている。」

バラン将軍の部隊の人達も付けてくれているのか。嬉しいけど、あのレベルのブローチがトレードマークになるのは考え物だな。

「私達は、先に行くわ。せっかくのパーティなんだから、美味しい物を食べてね。」

そう言って、2人は部屋を出て行くと、入れ替わりにタキシード姿のエチゴさんが入ってきた。
初めてパーティに出るのでエチゴさんにお願いして付いてきてもらう。
他のメンバーは興味が無いみたいで、カイとレムは部屋で勉強、レオは料理の勉強がてら手伝い、他は訓練を行っている。

こっそりと入ったパーティはきらびやかで色々な料理が並んでいた。
貴族の会話も気になり聞き耳を立てていると、政治、経済の話から、他の貴族のゴシップ。
サリナ姫達が付けているブローチの話や治療で使っている水晶の玉の話も出てきている。
色々有る中で、これから見るイルミネーションの話題が一番多いみたいだ。
貴族の子供も居るが、イルミネーションを待ち切れずに窓の外をずっと気にしている。
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