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042発掘品

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今までは何だったのかと言いたくなるほど、穏やかな街道が続く。
森をぬけ、穏やかな丘の道が続いている。
道中、食べられそうなキノコや山野草を見つけると、先ずウルトラアイで食べられるかチェック。
ガラやレオも長年冒険者をやっているだけあり植物の知識が豊富で色々と採取してくれる。
天ぷらにしたり、刻んでソースにしたりと色々と楽しんだ。
また、食材だけでなく、毒になる植物も大量に採取した。
いざと言う時に使える様にとグリムの協力の元、毒薬、眠り薬、しびれ薬、筋肉弛緩剤に麻痺薬等を作っていった。
お勧めは2種類の気化する液体タイプの薬だ。どちらも即効性がある。

1つ目は無味無臭の強力な眠り薬。
それなりに重く地面から2m位を漂うので、風上で使えば広範囲に影響を及ぼす事が出来る。

2つ目は筋肉弛緩剤。
僅かに甘い匂いがするが相手に吸わせると、直ぐに体に力が入らなくなる。
ただし、空気中に拡散しやすく、広範囲での使用はできない。

俺の闇の魔力を強く込めて錬成したので、効果も上がっているはずだ。
他は本当に死に至らしめるほど強力だったり、効果の薄い毒だったりして面白くない。
ただ、解毒剤の材料として使えるので、毒とその素材もアイテムボックスに収納しておく。

「拓ちゃんって、ポーションを作るより、毒薬を作ってる時の方が楽しそうだよな。」

旅の安全の為に用意しているというのに、失礼な事を言う浩司と頷くガラとレオ。
確かに魔獣退治以外の使用方法を考えていたのは事実だが、多分喜んでは無いと思う。
とにかく、これで魔獣に襲われた時に剣や魔法以外の方法で逃げ出す手段が出来た。
後は、解毒剤を作れば準備は整う。

こんな調子で寄り道をしていたので、エバの村に着いたのは予定より5日も遅い10日目の昼だった。
木の柵で囲まれた、人口200人位の小さな村だ。
門番の人に遺跡を見に来たと伝えると、物好きな人だと笑いながら村に入れてくれた。
遺跡はここから10キロほど離れた所にある。
村長の家に伺い、ラグテルで購入しておいたお酒をお土産に
遺跡の側でテントを張るのと、井戸を使用させてもらう許可を頂いた。
全員の水筒に水を満杯まで入れていると、他所からきた人が珍しいのだろう子供が俺に話しかけてきた。

「俺はケーマ。なぁ、お前等これから遺跡に行くんだろ。」
「俺は拓。水を入れたら出発する予定。」
「じゃあ、俺が発見した物を見せてやるよ。遺跡の近くで見つけたんだぜ。」

そう言って、後ろから取り出したのは金属の黒い箱だった。
古めかしいが、特に腐食している様子は無い。
側面にはコネクタが付いていて、裏を見ると色々こびり付いているがネジで止められていた。
この世界に来てから、ネジを見たのは初めてだ。

「この箱を開けた事はあるの?」
「開けようとはしたんだけど、硬くて開かなかったんだよ。」
「もしかすると開けられるかも。少しいじらせてもらっても良いかな。」
「良いけど、壊すなよ。」

ネジの部分を錬成術で綺麗にし、ナイフの先端で回して外した。
上下をスライドさせるようにして箱が開く。
ケーマも興奮して箱の中を覗き込むと、ボロボロの板が入っていた。
部品の様な物が付いていて、回路基板を想像させられる。

「せっかく開いたのにつまんねーの。何だそれ?」

『儂もこんな物は見たことが無い。いったい何じゃ。』

聞かれても、俺にも分からない。ただ、魔法より科学に近い感じがする。

「何だか分らないけど、ロマンを感じるよね。」
「ロマンって何だよ。てっきり魔石とか入っているかと思ってたのに。」

気になったのかOZのメンバーも覗き込んだが、誰も見たことがないそうだ。
何か分からないか色々と考えている俺に

「なぁ拓、そんなに気に入ったのか?条件を呑むならやっても良いぞ。」
「条件って?」
「遺跡の近くでテントを張るんだろ。俺もそこに泊めてくれ。」

OZのメンバーに聞いても、特に問題は無いとの事。
ただ、親に許可をもらえるならとの条件を付けると、親に話に行ったのだろう「ここで待ってて」と言って家に帰って行く。
しばらくすると、30代女性と20歳位の男を連れて戻ってきた。

「まあまあ、うちの子が迷惑な事を言っている様で、すみませんね。」
「いえいえ、こちらも同じ年の子と一緒で楽しそうでしたし。
 ただ、初めて会った人間に付いて行くのも問題かと思いまして。
 私はガラと言います。こちらに居るのはOZという冒険者のパーティーです。」

結局、ケーマに押し切られる形で男の人と一緒に遺跡でキャンプをする事になった。

「やったー!こっちはアドニス兄ちゃん。村で1番の狩人なんだぜ。」

2人は本当の兄弟では無く、1人っ子のケーマがアドニスさんを兄として慕っているそうだ。
アドニスも本当の弟の様に思っているのが見ていて分る。

「無理を言ってすみません。ケーマが何かしでかしたらビシバシ叱ってやって下さい。」

横でケーマが頬を膨らませ、アドニスさんが笑っていた。
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