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031パーティ

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薬の販売が始まった所で、今日は孤児院でお祝いだ。
食べ物の持ち込みの立食パーティで、俺達も料理を用意する為、朝からドタバタしている。
スパゲティやサンドイッチ、スープ、そしてデザート…
エチゴ屋の人達も来るので量重視。


孤児院では、部屋の周りのテーブルの上には料理が並んでいる。

「風邪薬が好調に販売され、この様な場を設けられた事を嬉しく思っています。
 今後の発展を願い乾杯。」

乾杯の合図と共にエチゴさんが持ってきた料理に向かったのだが、孤児院の子供が群がり料理に辿りつく事も出来ない。
流石に、子供を押し退けて取る訳にもいかず、後ろから眺めていると

「拓ちゃん、色々と料理を取っておいたぞ。」
「さすが浩司。俺の事を分ってるよな。ありがとう。」
「拓ちゃんって分りやすいぞ。ほら、ガラとレオも来た。」

2人が、皿に色々と盛って戻ってきた。

「拓、これは取ってないだろ。ほら食べろよ。」
「拓ちゃん、向こうに有った珍しそうなのを取って来たよ」
「・・・」

『食べ物に対する 拓の考えは分りやすい様じゃな。』

大笑いするグリムにめげず、全ての料理を味見させてもらった。
味付けは塩が基本になっているだけだが、色々な素材の味が楽しめる。
俺達が用意した料理もエチゴさん達に好評みたいだ。
少し落ち着いた所で、エチゴさんと院長が来ると

「この度は、この様な提案をして頂いて改めてありがとうございます。」
「こちらも技術料が手に入るので有り難いと思っています。」

雑談をしていると料理の話になり、エチゴさんが前のめりになって来た。

「スパゲティは、凄く美味しいですね。パンの形も独特で挟んでいる具も美味しい。
 あのスープは味に深みがあって、子供達が居なければ飲み続けてしまいそうでしたよ。
 うちの者たちも、喜んで食べさせて頂いています。
 ところで、今日はデザートは無いのですか?」

そう言えば、浩司が作ったデザートの事を忘れていた。
言われて浩司も思い出したのか、浩司が急いで取り出すと

「おぉ、これは柿を使ったケーキですか?」

エチゴさんが浩司に詰め寄る。

「そうです。こちらで貰ったのを使った、柿のタルトタタンです。」

少し引き気味の浩司が説明をすると

「あの渋いのを使ったのですか?」

院長が驚いていた。
確かに渋みだけで美味しさなんて何も感じない元の状態を知っていればそうなるだろう。

「これは美味しくなっていますよ。食べてみてください。」

浩司が2人に柿のタルトタタンを進めると、エチゴさんは楽しそうに、院長はためらいがちに口に入れた。

「これは、柿が柔らかく甘い。上にかかっているほろ苦いソースが、柿に良く合う。」

「美味しい。あの柿がこんなに美味しく食べれるなんて。いったいどうやって」

元の世界と同じ様に、アルコールに漬けて渋みを取る事が出来た。
エチゴさんと院長がケーキを食べるのを見ていた子供達や店の人達もケーキに群がってきた。
子供はケーキの様な甘い物を食べるのは初めてみたいで、凄いはしゃぎ方だ。

「ケーキはカットしてあるから、1人1つづつだ。全員の分が有るから順番に並んだ、並んだ。」

浩司大声で子供達を並ばせて、1人1人に取り分けていく。
子供の相手は浩司とガラに任せて、エチゴさんと院長に酒で渋みを取った柿と練成術で作り上げた干し柿を食べてもらうと、その甘さに驚いていた。

「院長、渋みを取る技術を教える代わりに、毎年渋みを取った柿と干し柿を20個づつ貰うというのはどうでしょう。
 材料が必要ですが、安いですし売れば収益にもなりますよ。」
「その様な技術まで教えて頂いて本当に良いのですか。」
「それは問題ありません。やる事は簡単ですが、冒険者をやっていると作業が出来ないのでお互いにメリットがあります。」

その場でエチゴ屋で販売する事が決まり、後日 契約を交わす事となった。


風邪薬の件も落ち着き、ついに遺跡観光を実行する。
ガラとレオに、作り上げたばかりの観光旅行セットとして、浩司のと同じ形状の拡張バッグを渡した。
ガラは光魔法を使うので白、レオは水の魔力を感じるので青のワンポイントを付けてある。
中にはテント、折り畳みの椅子、テーブル、寝袋の宿泊セット一式と俺が作ったポーションが数本。
そして、魔力結界を張る水晶のペンダントも用意した。

「バカ野郎、こんなのを簡単に人に渡すんじゃない。」
「嬉しいけど、確かに高価過ぎる。」

ガラとレオには、一般常識を分かっていないと怒られたが、浩司が諭して所有者縛りをさせてもらった。


準備が終わり、いよいよ遺跡に向けて旅立つ日が来た。
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