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030風邪薬

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しばらく経ち、薬の効果を報告にエチゴさんがやってきた。

「この家はどうされたのですか。」

この2ヶ月間で倉庫は間取りの変更が終わり、外観は同じだが中は全く違っている。
エチゴさんは、以前の状態を知っているだけに驚きも大きいみたいだ。
入口は、何も飾りは無いが、吹き抜けの広いエントランスになっている。
護衛の2人はエントランスで待機すると言うので、エチゴさんだけをリビングに通して話しを伺う事にした。

「何とも、凄い。素晴らしい家ですね。」

エチゴさんは部屋を眺めて誉めてくれるが、部屋の間仕切りが出来ているだけで壁は灰色の面が露出し、未だ必要最低限の家具しか無い。
自分の欲望を満たす為、キッチンと風呂に力を入れ過ぎて手が回らなかった。
魔道具を装備したゆとりのあるシステムキッチン。大理石の天板で小麦粉をこねたりするのも問題なく出来る。
一日の疲れを癒すための、10人でもゆったり入れる広い浴槽。
俺の最優先事項だった。

「あっ、申し訳ありません。早速、本題に入らせてもらいます。
 拓さんの薬を人、獣人合わせて50名に使って頂きました。」

その結果、重病人に対しては効果は無かったが、初期であれば数日で完治するのを確認出来た。
重病人に関しては、薬の効果確認のお礼として効果の高い薬を渡したらしい。

「以前にも質問をさせて頂きましたが、拓さんはこの薬を今後どうするか考えられましたか?」

薬の知識はグリムの物で、俺の物では無い。

『昔は一般的な知識で、儂が開発したわけでは無い。
 どうせ、拓が居なければ廃れた知識じゃ。拓が一番良いと思った対応をすれば良い。』

浩司にも同じ事を言われ、ガラとレオには、

「それは拓の技術だ。自分で納得のいく考えを出してくれ。知りたい事があれば分かる範囲で教える。」

と言われている。
俺は、この2ヶ月間考えていた事をエチゴさんに話した。

翌日、俺達は孤児院でエチゴさんと一緒に、院長の元を訪れた。

「チコの実とトドリの実を材料に、風邪薬を作る事が出来ます。エチゴさんに効果も確認して頂きました。」

「あの実を使って薬が出来るとは驚きです。で、今回はどの様なお話で?」

その後の話はエチゴさんが引き受けてくれた。大まかな話としては

・孤児院でチコの実とトドリの実をすり潰して天日干しをしたものをエチゴさんに供給する。
・エチゴさんの所で、薬にし販売を行う
・売れた代金の3割をエチゴさん、1割を技術料として俺、残りの6割を孤児院で受け取る。
・販売は10粒で銀貨2枚。製造と売れ行きに合わせて価格を調整する。

といった所だ。ちなみに町で出ている薬は効果は高いが銀貨20枚程になるらしい。

「有りがたい話ですが、粉状に磨り潰すとなると我々では量を作れるとは思いません。」

「そう思い、こちらで石臼を用意しました。
 回すのに多少力が要りますが、年上の獣人の子なら大丈夫でしょう。」

エチゴさんが用意してくれたものだ。
俺の考えを聞いて、足らない点に対しアドバイスをしてくれ、準備を手伝ってくれた。
この世界では販売3割、技術2割、製造5割というのが一般的らしいが、技術料は1割にした。
俺はグリムの知識を伝えただけで何もしていないので、少し小遣いが入るだけで十分だった。

製造に関しては、売れた時 獣人の子供が人間に襲われる可能性があるため、素材を提供するだけにし最終工程はエチゴさんの所で行う事になっている。
エチゴさんの所で一部製造を行う事を考えてると、エチゴさんの取り分3割は安いが利益がでれば問題ないと笑っていた。

院長と契約を交してから1週間、孤児院とエチゴさんの所に通い作業工程を教えた。
小さい子供も一生懸命作業を手伝い良い薬が出来上がり、事前に効果を確認するために飲んだ人の口コミで出だしの売れ具合は良好。
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