欲にまみれた楽しい冒険者生活

293土産

変な冒険者に絡まれたが、拓は呪いの実験が成功したことに機嫌を良くして登城すると、直ぐにオリバー隊長が対応してくれた。

「拓殿、何か私の顔に付いていますか？」

絡んで来た冒険者を見た後だけに、何時も以上にオリバー隊長が輝いて見える。
思わず目の保養をしてしまい、

「オリバーさんの顔を見ると、城に来たんだと思いまして。」

と誤魔化すと、オリバー隊長が笑っていた。
拓は直ぐに調理場へ向かうと、アイテムボックスにしまっておいた食材を取り出す。

「おぉ、これはなかなか良い品だ。よくここまでの品を買えましたね。」

ルドルフ料理長が驚くので、拓が今回特別に生産者の所で購入した話をすると

「成程、これだけの食材は滅多な事では手に入りませんよ。これは腕が鳴るな。
　拓殿、昼食は食べられましたか？
　拓殿から教わった料理を色々とアレンジしてみたので食べて行きませんか？」

昼食は未だなので、オリバー隊長と一緒に料理を食べさせてもらう事に

「凄く美味しいです。こんな風にアレンジするとは思いませんでした。」
「良かったです。後で家庭用に簡略化したレシピを渡すので試してみてください。」
「良いのですか？」

拓のレシピは買ってもらったのに、ルドルフ料理長のレシピをタダで貰うのは問題にならないか気になったが

「拓殿にはこんなに食材を調達してもらっているのです。
　その程度、問題ないですよ。国王様にも話は通してありますので。」

ルドルフ料理長は、笑いながらアレンジ料理を色々と出してくれた。
どれも美味しく、拓は改めてプロの料理人の腕前を知る事となった。

食後に魔道具の制御方法について話しを伺いたかったが
渡された資料についての確認ですら国王の許可が必要になっていた。
拓は自分が試した配線や、その結果について資料にまとめ、オリバー隊長に託すことにした。
思ったより時間が掛かり、書き上げた時には夕方になっていた。

「すみませんが、宜しくお願いします。」
「確かに預かりました。では姫様や勇者も待っていますので、移動をしましょうか。」

オリバー隊長は皆が待っている部屋まで拓を案内すると、拓がまとめた資料を持って席を外した。
拓が皆と挨拶をすると、女性陣が何か聞きたそうにしているので

「美容に効く食材はルドルフ料理長に渡しておいたよ。
　多分、今夜の食事か明日には食べれると思う。」

拓が話すと「キャ～」「やった～」「ありがとう」と喜びの声が上がる。
拓と浩司は、何でここまで喜ぶのか理解できず、女性陣が落ち着くまで黙ってお茶を飲んでいた。

最近の話を聞いたが、魔獣の大量移動が起きた後は元に戻り、今までと同じ様な生活をしていた。
色々と変化が大きいのは拓だけみたいだ。

「そういえば、今度の年明けには地方の貴族の子供も多く集めて舞踏会を行なおうと検討しているみたいですよ。」
「拓さんが休憩所を作ったから地方の貴族の子供も来れる様になったって。マジで楽しみ。」

嬉しそうに由美と里香が話す。
勇者の３人は一応ダンスの練習もしていた。
女の子が好きそうな話なので、拓にもその気持ちは分かる。

「良かったね。今まで魔獣との戦いを頑張って来たんだから楽しんだら良いよ。」
「もし開催されることになったら、当然　拓も参加よ。」

サリナ姫の言葉に、思わず固まる拓。

「安全な休憩所を作った当事者で、免責札を持つ拓が出ないで良いわけ無いじゃない。
　開くとしたら、拓への感謝を込めた舞踏会になるはずだから顔は見せないと。」

そう言われてしまうと、確かに顔を出さない訳にはいかないだろう。
拓は、少し顔を出したら直ぐに抜け出してしまえば良いと考えながら、楽しく話す由美と里香を見ていた。