81 / 111
Episode08:I don't know own feeling
10
しおりを挟む
明け方に目が覚めた。
きっとひどい顔をしているだろう。
こっそり部屋を抜け出して、洗面所へと足を運ぶ。
案の定、目が思い切り腫れていた。
「……ひどい顔」
もう涙は出てこなかった。
前の恋人と別れた時でも、これほどまで涙は溢れてこなかった。
独りよがりだったとはいえ、こんなにも想える相手がいたということは、いいことなのかもしれない。
このまま大人しくしていれば、ジャンと結婚をすることができる。
こんなに好きになれた人と、一緒に生涯を共にできるのだから、それでいいではないか。
萌衣は、心の中でそっと自分に言い聞かせた。
いいんだ。
これで、いい。
きっと、萌衣さえ我慢していれば、いつかジャンは萌衣の方を向いてくれるかもしれない。
だから、それまでジャンの望むいい妻を演じよう。
新しいタオルを取り出して、熱いお湯で濡らして瞳にあてる。
明日の朝一で会議があるのだ。
真っ赤に腫らした瞳のまま仕事に行くわけにはいかない。
いや、休んでしまうのもいいかもしれない。
有給だってまだたくさん残っているし、気持ちを切り替えたといっても、仕事中とはいえ、ジャンの顔を見るのは今はつらい。
ずっと勤勉に働いてきたではないか。
一日くらい休んだところで、クビにはならないだろう。
クビになっても、もうどうでもいいが。
時計を見ると、もう始発は動き出している。
どこかに一人で出かけてしまうのもいいかもしれない。
ジャンのいないどこかの場所へ。
気持ちが落ち着いたら、明るく元気な姿で、積極的に結婚式のことも決めて、TOMOKAとだって、笑顔で……。
「ううっ……」
思い出したくないのに。
昨日のことなんか思い出したくない。
溢れ出そうになる涙を、ホットタオルでぐっと抑え込み、涙が引っ込んだと確認したと同時に萌衣は、スマートフォンで行きたい場所を検索した。
しかし、特になにも見つからない。
こんな時まで、自分の気持ちが分からないなんて逆に笑えてくる。
このままもたもたしていたら、ジャンが目覚めて起きてきてしまう。
その前に家を出たかった。
まだ目が腫れているが、サングラスをしてしまえばいいだろう。
萌衣は、ホットタオルを洗濯機の中に入れて、自室に戻って出かける準備をした。
化粧もせず、サングラスで瞳を隠して、萌衣は家をそっと出る。
明け方の空は、太陽が赤紫色に照らしていた。
「綺麗……」
朝焼けなんて見たのはいつぶりだろうか。
高層マンションから見える東京の景色は、萌衣のこれからの人生を照らしてくれているように思えた。
きっとひどい顔をしているだろう。
こっそり部屋を抜け出して、洗面所へと足を運ぶ。
案の定、目が思い切り腫れていた。
「……ひどい顔」
もう涙は出てこなかった。
前の恋人と別れた時でも、これほどまで涙は溢れてこなかった。
独りよがりだったとはいえ、こんなにも想える相手がいたということは、いいことなのかもしれない。
このまま大人しくしていれば、ジャンと結婚をすることができる。
こんなに好きになれた人と、一緒に生涯を共にできるのだから、それでいいではないか。
萌衣は、心の中でそっと自分に言い聞かせた。
いいんだ。
これで、いい。
きっと、萌衣さえ我慢していれば、いつかジャンは萌衣の方を向いてくれるかもしれない。
だから、それまでジャンの望むいい妻を演じよう。
新しいタオルを取り出して、熱いお湯で濡らして瞳にあてる。
明日の朝一で会議があるのだ。
真っ赤に腫らした瞳のまま仕事に行くわけにはいかない。
いや、休んでしまうのもいいかもしれない。
有給だってまだたくさん残っているし、気持ちを切り替えたといっても、仕事中とはいえ、ジャンの顔を見るのは今はつらい。
ずっと勤勉に働いてきたではないか。
一日くらい休んだところで、クビにはならないだろう。
クビになっても、もうどうでもいいが。
時計を見ると、もう始発は動き出している。
どこかに一人で出かけてしまうのもいいかもしれない。
ジャンのいないどこかの場所へ。
気持ちが落ち着いたら、明るく元気な姿で、積極的に結婚式のことも決めて、TOMOKAとだって、笑顔で……。
「ううっ……」
思い出したくないのに。
昨日のことなんか思い出したくない。
溢れ出そうになる涙を、ホットタオルでぐっと抑え込み、涙が引っ込んだと確認したと同時に萌衣は、スマートフォンで行きたい場所を検索した。
しかし、特になにも見つからない。
こんな時まで、自分の気持ちが分からないなんて逆に笑えてくる。
このままもたもたしていたら、ジャンが目覚めて起きてきてしまう。
その前に家を出たかった。
まだ目が腫れているが、サングラスをしてしまえばいいだろう。
萌衣は、ホットタオルを洗濯機の中に入れて、自室に戻って出かける準備をした。
化粧もせず、サングラスで瞳を隠して、萌衣は家をそっと出る。
明け方の空は、太陽が赤紫色に照らしていた。
「綺麗……」
朝焼けなんて見たのはいつぶりだろうか。
高層マンションから見える東京の景色は、萌衣のこれからの人生を照らしてくれているように思えた。
1
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる