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Episode08:I don't know own feeling
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タクシーで家に帰り、自分の部屋に入った瞬間、大粒の涙が瞳から溢れ出してきた。
静かな部屋の中で、萌衣の嗚咽だけが響き渡る。
あまりにも惨めな気持ちだった。
萌衣が泣いている今も、ジャンとTOMOKAは楽しそうに談笑しているのだと思うと、気持ちが止められなかった。
荒巻の誘いになんか乗らなければよかった。
早く結婚式の会場を決めていれば、早くTOMOKAとの関係を聞いていれば。
自分の行動の中に後悔の種が溢れすぎているのと同時に、ジャンが嘘をついたことに対しての責め立てる感情が交錯する。
どのくらい泣いていただろう。
玄関から、ジャンが帰宅する音が聞こえた。
溢れ出す涙をティッシュで拭きとって、顔を枕に埋めた。
ジャンの足音が近づいてくる気配を感じたので、萌衣は布団を慌ててかぶり、寝たふりをする。
ジャンは、静かに萌衣の部屋の扉を開けて、萌衣が帰ってきているか確認をすると、そっと近づいてきて、萌衣のベッドに腰かけた。
「起きていますか?」
「……」
返事をしなかった。
というよりも、先程のジャンとTOMOKAの笑いあっている姿を思い出すだけで、返事をすることができなかった。
今、無理やりにでもジャンに起こされたら、本当に喧嘩をしてしまいそうだった。
「モエ……I don't know how you feel about me」
小さな声でジャンが言った。
萌衣に聞こえるか聞こえないか程度の小さな声。
布団から少しだけ出た頭を、ジャンの大きな手がゆっくりと撫でた。
ジャンはベッドから立ち上がると、萌衣の頭にキスを落として「おやすみ」と部屋を出て行った。
再び涙が溢れる。
怒りと、悔しさと、切なさと。
ジャンの方こそ、何を考えているのか分からない。
TOMOKAを愛していながら、なぜ萌衣にあんな慈しむような態度をすることができるのだろうか。
こんなに苦しい気持ちになるなんて思ってもいなかった。
このままジャンと結婚してしまったら、苦しくて窒息してしまいそうだ。
どうしてジャンは嘘をついたのか分からない。
いや、分かっている。
答えは一つだ。
しかし、その答えを口にすることも、考えることも、今の萌衣は怖かった。
何も考えたくない。
溢れる涙は、今夜は止めずに溢れさせておこう。
きっと気が済むまで泣き止んだら、明日はジャンと笑いあえる。
笑い合わないといけないんだ。
だってこれは、契約結婚だと最初から分かっていたことなのだから。
静かな部屋の中で、萌衣の嗚咽だけが響き渡る。
あまりにも惨めな気持ちだった。
萌衣が泣いている今も、ジャンとTOMOKAは楽しそうに談笑しているのだと思うと、気持ちが止められなかった。
荒巻の誘いになんか乗らなければよかった。
早く結婚式の会場を決めていれば、早くTOMOKAとの関係を聞いていれば。
自分の行動の中に後悔の種が溢れすぎているのと同時に、ジャンが嘘をついたことに対しての責め立てる感情が交錯する。
どのくらい泣いていただろう。
玄関から、ジャンが帰宅する音が聞こえた。
溢れ出す涙をティッシュで拭きとって、顔を枕に埋めた。
ジャンの足音が近づいてくる気配を感じたので、萌衣は布団を慌ててかぶり、寝たふりをする。
ジャンは、静かに萌衣の部屋の扉を開けて、萌衣が帰ってきているか確認をすると、そっと近づいてきて、萌衣のベッドに腰かけた。
「起きていますか?」
「……」
返事をしなかった。
というよりも、先程のジャンとTOMOKAの笑いあっている姿を思い出すだけで、返事をすることができなかった。
今、無理やりにでもジャンに起こされたら、本当に喧嘩をしてしまいそうだった。
「モエ……I don't know how you feel about me」
小さな声でジャンが言った。
萌衣に聞こえるか聞こえないか程度の小さな声。
布団から少しだけ出た頭を、ジャンの大きな手がゆっくりと撫でた。
ジャンはベッドから立ち上がると、萌衣の頭にキスを落として「おやすみ」と部屋を出て行った。
再び涙が溢れる。
怒りと、悔しさと、切なさと。
ジャンの方こそ、何を考えているのか分からない。
TOMOKAを愛していながら、なぜ萌衣にあんな慈しむような態度をすることができるのだろうか。
こんなに苦しい気持ちになるなんて思ってもいなかった。
このままジャンと結婚してしまったら、苦しくて窒息してしまいそうだ。
どうしてジャンは嘘をついたのか分からない。
いや、分かっている。
答えは一つだ。
しかし、その答えを口にすることも、考えることも、今の萌衣は怖かった。
何も考えたくない。
溢れる涙は、今夜は止めずに溢れさせておこう。
きっと気が済むまで泣き止んだら、明日はジャンと笑いあえる。
笑い合わないといけないんだ。
だってこれは、契約結婚だと最初から分かっていたことなのだから。
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