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第一章
それぞれの気持ち R/S→Le/S→B/S
しおりを挟む「ライトォーーーー!」
なんで、なんでなんだ!なんでライトは動けている?正門にも行ったって言って居たのに!
おかしい!
あんなに不器用に笑って・・・何が騎士団長だ!
どうしてライトなんだ・・・不器用で、皆に厳しくて、そして、誰よりも優しくて・・・。そんなアイツだから。
皆を傷つけまいと、不器用なりに頑張って、頑張り過ぎて。
自分を責めろと言わんばかりに行動する。
前からそうだったけど、団長になってからはさらに悪化した。自分がやらなきゃって、責任を感じてる。
アイツはもう、限界なのに。
「ロビン、すまない・・・私に力があれば・・・。」
「副団長・・・俺こそ、前から、ずっと前から・・・!ライトがあぁいう奴って、知って居たのに!少しでも気遣って居たら、少しでも!だけど、なんだかんだ言って、アイツは天才だし、なんでも一人でやれるって、勝手に心の中で決め付けて、大丈夫だって思ってた!けど、けど!」
そんなの嘘だ!劣等感から、そう思って居ただけで、なんでも一人で出来る人なんて居ないのに。
すぐ手を差し伸べるべきだったのに。結局、自分が一番大事なんだ。俺は、騎士失格だ・・・。このまま二度と会える事がなかったらなんて、考えるだけでも恐ろしい。
目の前が涙で霞む。泣くべきはライトなのに。
「・・・ロビン、目の前を見ろ。私達は今やるべき事がある。小さな事、大きな事、・・・たったひとつの事でもやって、団長の負担を、少しでも減らせるように・・・」
―――
──────トン
「な──・・・うっ・・・」
「ベン、大事は無いか?」
「ライト様!」
僕が瞬間移動して行った場所はベンの持ち場。
王城の扉は正門、裏門が基本的な扉であり、一応それしか無い事になって居る。が、森へ続く扉も在る。厳重に鍵を掛けているとは言え、侵入してくる可能性も捨てきれない。そのため、ベンなどの強い人達を配置して居た。
やっぱり侵入者は来てたから、こっちも寄って良かった。でも、僕が最後の人やっちゃったけど良かったのかな・・・?
「こっちは見ての通りこんな感じで・・・最後の一人に苦戦していたんですが、ライト様がやってくれたので助かりました。ライト様はどうでしたか・・・と、問いたいとこですが。大丈夫ではないですね?」
「いや、特に問題は無い。」
最後に城の中を確認して、報告に行くだけだ。だから、大丈夫。まだ平気だし、普通に動ける。
「ライト様!何を言ってるんですか!問題ありまくりでしょう?!その傷は何なんですか?!」
「・・・じゃあ、ベンの腕から出ている赤い液体はなんだ?」
「俺の事は・・・!俺の事は関係ないです!」
ベンの右腕から、ポタポタと地面に血が流れている。多分誰かを庇ったりしたんだろうな。結構深い傷みたいだし、魔力が足りなくて回復しきれてない。
ベンに隠し事は出来ない。何故かすぐバレちゃうんだ。きっと、怪我もバレてる。でも今は、今だけは知らないフリをして欲しい・・・。だって後、もうちょっとだけだから。
「・・・もう行く。」
これらが終わったら、胸を張って頑張りましたって、きっと言えるから。だからベン、ごめんね。
「ライト様!もう駄目です!」
「・・・ライトじゃない。・・・皆と同じ様に言ってみろ。」
「ハハッ・・・ど、どういう事、ですか・・・?」
ベン、君ならこの意味が分かるよね。僕が何を伝えたいか、分かってくれるよね。だから、そんな目で僕を見ないでよ。僕が悪いみたいじゃないか。
「嫌ですよ・・・、そんな事、言いたくないです。」
ほら、分かってるじゃないか。何を言えば良いか、分かってるじゃないか。泣かないでよ、ベン。僕も泣きたくなっちゃう。
でも、君に無理はさせたくないし、僕にも決心が欲しい。だから、早く言ってくれ。僕の気が変わらない間に。・・・少しだけ、今だけ、甘えさせて。
「・・・ラ、イト、団っ、長・・・。ダメ、ですよ?また、会えますよね?まさか、そのまま行ったりしないですよね?ちゃんと・・・約束、して下さい。」
ありがとう、ベン。
そして、ごめんなさい──────
「・・・生憎、お前に分けてやる魔力など無いんだ!勝手にしてろ馬鹿野郎!お前は精々床に這いつくばって居ればいい!俺はお前なんかと違う、時間の無駄だ・・・」
「っい、行かないで、下さい!」
「じゃあな・・・『 瞬間移動 』」
ライト様に伸ばした手は虚しく空を切った。
ライト様が瞬間移動して行った後、直ぐにカクンと膝を付いた。駄目だ・・・涙が止まらない。
「ベイン様!」
「イリナード・・・ライト様行っちゃったよ。俺、俺っ・・・!ライト様の事、止めれなかった!」
イリナードの前なのに止まらない。ライト様は最後まで俺の事を考えてくれた。休んでろって、ベンじゃ無いんだから安心しろって。
だけど、駄目だよライト様。
「ねぇ、イリナードもわかったよ、ね・・・?」
イリナードは同意の返事をしてくれる。いつもと変わらない、優しい声で。
ライト様・・・俺以外にもバレバレだったよ。
「ライト様、傷だらけだったし、魔力も、もう少ししか無かった。しかも、右手首の骨、折れてたよ。回復魔法で荒くくっ付けて、動かしてたけど・・・!」
「・・・そうですね。」
「どうしよう、どうしようイリナードっ!あのままじゃ、ライト様っ、死んじゃうよ・・・!俺、俺ぇ・・・どうすればっ、良いのかなぁ・・・?何も出来ないっ自分が情けないよぉ・・・」
不安が尽きない、涙が止まらない。死んじゃうなんて、悲しい事を信じたくない。
なのに咄嗟に頭に出て来る未来は、ライト様が死んで居る未来なのだ。冷たくなったライト様が動く事はない、ずっと悲しい未来。今まで過ごしていてこんなにも未来を恐れた事があったのだろうか。
また自分の知らないところで大切な人が死ぬのか。
結局、あの時と変わらない。・・・約束を結ぶ事すら叶う事がなかったのだ。
「ライト様、約束って言ったのに、何も、言ってくれなかったしっ、しかも、しかもっ!じゃあなって、じゃあなって言われた!」
「・・・そう、ですね・・・。」
「あの人はいつもいつも何時も無理ばっかりして、ろくに睡眠も取らないで、辛い事は全部隠して、全部一人で解決しようとする!っ・・・さっきだって、俺に団長って呼べって!お前なら分かるだろうって、言われているようにしか感じられなくて!言っちゃった・・・言っちゃったんだよ!時間は、何があっても、戻らないんだよ!ちゃんとっ、分かっていたのに!」
止まらない止まらない。一緒に居た記憶を沢山思い出す。昨日だって一昨日だって。何事もなく話合って居たのに、どうしてこんな事になるんだ。
すっごく楽しかった俺達の生活を何故壊すんだ。
「僕はレリスライト・ユルティムじゃない、今は騎士団長だって。騎士団長としてやる事をやらせろって。お前が止めているのはただの俺だって。・・・あの人はバカなのかなぁ・・・、バカなんだよなぁ、っだからこんな事になってるんだよな・・・。普通逆でしょ?俺は騎士団長の前に、レリスライト・ユルティムだって。そう言ってよ・・・。なんで、なんで・・・!」
俺に出来る事が何も無い。
たった数分でも休む時間を取らせる事も出来ず、引き留める事も出来なかった。
「どうしてライト様なんだ!俺に力があったら、もう少しだけでも・・・!何かが違ったら!」
「ベイン様!悪化します!」
ガンガンと床に叩き続けようとする腕はイリナードに抑えられ、泣き叫ぶ事しか出来なくなった。
ずっと、戦ってて辛かった。
「辛い!辛い!辛い!辛い!どうして俺は何も出来ないんだ!ライト様と一緒に行きたい!なのにもう!もう脚が動かない!反乱軍の人達の苦しむ顔が忘れられない!魔法を当てた時の感覚が忘れられない!間違いへの不安が尽きない!全部怖い!それはライト様も同じなのに・・・!」
「ベイン様・・・」
「ライト様にやらせて・・・俺は何も出来ていない!役立たずだ!だったら、だったら今までの練習は!一体なんのためだったんだ!俺は・・・俺は何も・・・!」
「ベイン様!っ落ち着いて下さい!」
──────その瞬間、
光が射したように暖かくて──────
イリナードにぎゅっと抱き締められて、荒れて居た心が落ち着いく。ふんわり香るラベンダーの香りが心地良い。
「大丈夫です・・・ベイン様、大丈夫ですよ。ここに来た反乱軍をやってくれたのはベイン様じゃないですか。いっぱい私達の役に立っています。大丈夫です。」
「・・・俺のせいで、ライト様が死んじゃうかとっ、思って、それで、止まらなくて・・・、俺、心配で、悲しくて、それ以上にめっちゃ、悔しくって・・・怖くって!」
「ベイン様もですよ。一人で抱え込まないで下さい。私達に甘えて下さい。大丈夫ですよ?分かりましたね?だからお願いです、泣かないで下さい。」
「・・・イリナードも泣いてるじゃん。」
人に甘えるって、こういう事だったんだ。俺も、周りの人の事ばっかり考えて、自分事を疎かにしていたみたい。
背中を規則正しく、優しく叩かれるだけで
大丈夫ですよって言ってくれるだけで
名前を呼ばれるだけでこんなにも安らぐだなんて
何一つ知らなかったのだ。従者として恥ずかしい。
「ライト様に、やってあげられれば・・・」
「そんな事言わないで下さい。団長は・・・死んでないです。生きてます。まだ出来ます。私達も頑張りますから、ベイン様も・・・。希望は在ります・・・団長を、ライト団長を信じましょう。」
「そっか・・・じゃあ、また一緒に、怒られないように、やろう。頑張ろう・・・ライト様に、褒めて貰お・・・ぅ・・・」
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