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第一章

これが日常です

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 時は早朝五時・・・カツカツカツカツとブーツを鳴らし歩いて段に登ったのは・・・そう、騎士団長である僕。


「これより鍛錬を開始する!皆の者!各自位置につけ!」

「「「「はい!」」」」

「やる気はあるのかぁぁぁあ!」

「「「「はい!!!!」」」」

「ランニング五十週!腹筋背筋腕立てスクワット百回!三セット!!!七時の朝食に間に合わなかった者には追加鍛練だ!鍛錬開始!!!」


 あぁぁ~喉が痛い。朝からあんなに声を出す物ではないと思うけど・・・。返事は大切だから、まぁいっか!


「・・・流石、鬼の騎士団長ですねー。」

「そんな事言わないでよ・・・ベン。」


 そんな悲しい事をニマニマしながら言って来たのは僕の専属従者兼護衛兼補佐官兼友人兼唯一の親友のベイン・スウェイトこと、ベンである。

 執務室行く、と声を掛けて歩き出す。

 ベンは酷いんだ。いっつも僕の事をからかって遊ぶ。なんだかんだ百七十年程の付き合いだから、こんな事まで言われるようになってしまった。

 悲しい様な、嬉しい様な・・・何とも言えないこの感情。あーぁ、こんな風に皆と話せたら良かったのに・・・。

 早朝で人が少ない棟の中を歩きながらまた思った。


 執務室にて、書類を捌く。

 ちょくちょく窓からグラウンドを見てサボり魔が居ないかを確認する。見つけ次第ここから叫んで注意する。喉が痛くなるから言いたくはないけど、舐められ過ぎると困るのと、性格上勝手に身体が動いてしまう。

 ベンが入れてくれたマーシュマロウルート・ティーを飲む。マーシュマロウと聞くと、お菓子のマシュマロの味を連想するかもしれない。マシュマロの味は微塵もなく、味はマイルドで緑茶に似たようなお茶なんだ。

 喉が痛いと言って居たら、ベンが買って来てくれた。

 マーシュマロウルート・ティー以外のも沢山買って来てくれたし・・・だからベンは憎めないんだよね。



 ―――



 時間になったので食堂へ向かう。鍛錬に慣れている者はもう席に座って居た。やっぱり凄い、流石皆。

 僕は扉の前に立ち時間に遅れて来た者達のチェックをする。その後に皆で頂きますをする。食堂はバイキング式で各々好きな物を沢山食べさせている。おかわりも自由だ。もぐもぐ口に沢山詰め込んでリスみたいに食べているのはとても微笑ましいと思う。皆とっても可愛い!

 僕も皆の手本になるように沢山食べている。

 スタミナ系は余り好きでは無いのでサラダを食べまくる。なんだか後ろで、あの量は小さな身体の何処に入っているんだろうねー、ね~、みたいな会話が聞こえた。

 こんな時に困る地獄耳と勝手に動く身体。


「・・・そんな事が言えるくらい体力が有り余っているのか。・・・ならば貴様らはプラス六セットだ。覚悟しろ。」

「「───ひゅっ・・・」」

「ん?・・・返事も出来ないくらい嬉しいのか?阿呆共め。そうかそうか、何なら九セットにしてやろう。貴様らは寛大な俺に感謝するが良い・・・!」

「「はい!(泣)」」


 そんなこんなで朝食の時間は終わり、自主練、終わっていない鍛錬をしたりする時間の始まりだ。僕には書類仕事が待っているんだけどね。

 執務室に向かいながらベンと話す。


「ライト様、あんな事言うから怖がられるんですよ?」

「うぐっ・・・だ、だってぇ~・・・」

「あははっ知ってますよ!最初のが僕にその声聞こえてたよ。僕じゃなかったら首が飛んでいたかもしれないよ。今日も元気で良いね、いっぱい鍛錬したら?って言う意味ですよね?そんでもって返事してくれなかったのが悲しくて九セットって言っちゃったんですよね?アッハッハ!」

「ぜ、全部当たり・・・流石ベンだね。」


 ベンは本当に僕の事を分かってくれる。少ししょんぼりしながら歩いて居ると先程とは違い色々な人が行き交っているので、気を引き締めて歩いて行く。

 すると、ルドウィン様が居た。

 あぁぁ!今日もかっこいいです!神様です!目の保養です!ご飯三杯食べれます~!好きぃ!眩しい・・・!


「おそようさん、宰相様。貴様は今日も今日とで阿呆っ面晒して歩いているのか?クックック・・・」

「あぁ、おはようございます。レリスライト様、新人の方がまた相談に来ました。どうにかして下さいますか?」

「ハッ!黙れ無能が。そんな阿呆共は好きにさせて置けば良い。新人など居ても居なくても変わらないからな。特に支障はないだろう?そっちで勝手に処理してろ。」


 おはようございます!ルドウィン様は今日も眠そうですね!ちゃんと寝れてますか?大丈夫ですか?

 あ~!それは本当にすみません・・・ですがこんな僕なので慰めるとか出来ないんです!ですのでそちらでケアをお願いしたいと思って居りまして・・・。新人さん達には騎士団に馴染める様にする事を最優先させたくて、僕じゃ無理だと言うか・・・。ご迷惑だと思いますがお願いします!

 が、どうやったらあんな言葉になるかは知らない。


「はぁ・・・これだから騎士団は・・・。私だって忙しいです。まぁ、そちらに行くと圧倒的に人員が減ると思うのでこちらでやりますけど。」

「フッ・・・貴様にしては良くやるではないか。貴様ら宰相とは違って忙しいのだ。・・・。あーぁ、貴様の顔を見ると吐き気がする・・・!ベイン、行くぞ!」


 ベインも返事をし執務室へと行った。



 ―――



「───ふわぁぁぁ~・・・またやっちゃった・・・」


 執務室にてズルズルと膝を付いてしまったのはこの僕。

 ルドウィン様にあんな・・・あんなに酷い事を言ってしまった。これが初めてではない。けど、けどぉ・・・!


「ふふっ、『貴様は今日も今日とで阿呆っ面晒して歩いている』と、『黙れ無能が』と、『貴様の顔を見ると吐き気がする』でしたっけ?アッハッハ!本っ当、面白いですね!アッハッハッ!あ~笑い止まんないです!アハ!」  

「うっ、うっさい!」


 僕はあんな事を言いたい訳じゃない。

 阿呆っ面だなんて、今日もかっこよかったし、ルドウィン様が眠そうだったから凄く心配だったんだ。

 黙れ無能が、なんてそんな訳ない。もっとあの声を聞きたいし凄く頭が良いのだって勿論知ってる。騎士団宛に届いた書類だって字が綺麗で丁寧だし、読みやすい。

 吐き気なんかしない。あれ以上見ていたら爆発しちゃうくらいだった。・・・だってかっこいいんだもん。

 今日もルドウィン様って、名前で呼べなかったし、強く当たってしまった。

 名前も呼べない、こんな僕なんかがルドウィン様の事を好きで良いのか・・・?自問自答が止まらない。

 父上から受け継いだ性格のせいにしてルドウィン様を貶し続けるのか?自分の命よりも大切・・・・・・・・・なルドウィン様を・・・?

 そんなの・・・


「──────レリスライト様!!!」

「───っ?!あ、あぁ、どうした?」

「っ・・・ボーッとしてないでお仕事しましょう?」


 危ない、僕は・・・、取り敢えず仕事をしよう。ボーッとしてしまった。僕が騎士団長なんだからしっかりしないと、手本にならないといけないのに。

 気合いを入れて仕事を進める。思いっきり集中して、文字を書く手を止めないで。


 そうすれば他の事を考えなくて済むから・・・

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