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16 殿下からのアドバイス
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あれから毎週末、多い時は週に2回程、クロードの手で精を出されている。場所は浴室だったり、湯船だったり、ベッドだったり、部屋のソファーだったり……。なんとなく良くないことなのでは……? と思いつつ拒絶することも諌めることもしない自分の優柔不断さが嫌になるが、クロードはずっと機嫌がよく、侯爵家の後継者としての勉強に励んでいる。
僕ばかりが気持ち良くなるのが申し訳なくて、僕もクロードに触ろうとすると、「今は大丈夫。」と毎回断られる。前にした時が下手だったのかな? と落ち込んでいると、「我慢が効かなくなる。それに、兄さんと違ってまだ成人してないから、たまに出せば問題ない。」と言われた。
我慢出来ないから射精するんじゃないのかな? 触ると逆に我慢することになるの? よく分からなかったけど、いつも少し余裕のあるクロードが必死だったから、本当に今はまだ大丈夫なんだろう。
あと、僕の前でだけ『オレ』『兄さん』と呼ぶようになった。逆に外では『私』『お兄様』と呼んでいる。理由を聞いたら、卒業後、次期侯爵として動くようになった時に、僕の前でだけは素の自分、砕けた自分を出しておきたいとのことだった。もちろんOKした。嬉しかった。次期侯爵としてのプレッシャーも多く、ニコラス殿下の側近として貴族や諸外国の役人とも関わることになる。僕の前でだけはリラックスして欲しい。
季節は巡り、クラウス殿下が学校を卒業する日を迎えた。僕は花束をお渡ししたくて、中庭のベンチで殿下を待っていた。
「クラウス殿下。ご卒業おめでとうございます。」
「やぁ、レイフォード。わざわざありがとう。綺麗なお花だね。」
「クラウス殿下の赤に、柔らかなベージュと清らかな白が一番似合うと思いまして……。」
「そんな風に思ってもらえてることが一番嬉しいよ。ありがとう。」
「クラウス殿下のおかげで、学校生活が楽しかったばかりか、悩みの御相談にも乗ってくださり、将来に付いて具体的に考えることが出来ました。私も卒業したら、クラウス殿下のお役に立てるよう邁進するつもりです。」
「ありがとう。レイフォードが傍にいてくれたらこれ以上なく心強いよ。同世代の側近たちよりも、プライベートなことも話せて気を許してるしね。」
「この上ないお言葉です。力不足ではございますが、今後とも精進して参ります。」
今後、殿下とは気軽にお会い出来なくなることを寂しく思った。
「あれから弟とは仲良くやっているのか? あの時は随分思い詰めていたようだったが。少し吹っ切れたものの、まだ何か引っかかっている顔をしている。」
驚いた。クラウス殿下は柔和でふんわりとした方だから分からなかったが、皇太子として、人の感情の機微に敏感なのかもしれない。自ら動いたり指示するのではなく、感情を察知し人を動かしている。
今後相談出来るタイミングがいつになるか分からない。思い切って吐露する。
「弟として以上に、クロードのことが好き……かもしれなくて……。」
気持ちは誤魔化せなかった。兄弟だからと線引きしたり、兄弟だから大丈夫だと言い聞かせていたが、どう考えても弟に抱く感情ではなかった。元々はこの子を、クロードを守りたい一心で愛してきた。だが、最近は少し触れられる度にドキドキするし、顔を見ると頬が赤くなる気がする。抱きしめたいし、抱きしめられたい。いつか誰かを娶り跡継ぎを作る必要がある弟に恋心を抱くなど……。不毛だ……。恋をしたことが無かったので、クロードへの想いが恋だと気づかなかった。恋をすると皆幸せそうなのに、僕は辛くて泣きそうだ。
そんな僕にクラウス殿下は優しく微笑んだ。
「弟だということ以上に、クロードくんのことが特別だということだよ。」
「特別……。」
「レイフォードは自分のことよりも、常にクロードくんのことを考えているね。クロードくんが幸せであれば自分も幸せ。彼を守りたいと願っている。これは私には、美しい愛情に見える。温かで優しい、皆がクロードくんを羨ましがる程の愛だ。クロードくんは年下ということもあってか、見た目ほど余裕が無く、独占欲や嫉妬といった自分本位なところも見えるけど、君をどうしても手に入れたいようだから。」
「え? えぇ!?」
「まぁ、私も受け売りだよ。君より年上で経験もあるし、立場上、人の感情を把握することには長けていると自負している。私は皇太子としての責任もあるし、皇室の一員としてどうするのが正しいのか悩んだこともあった。でも意外と何とかなるものだよ。」
「何とか……なりますか?」
「あぁ。一つ、一つだけ絶対に譲れないものがあるなら、その為に何をすべきか。どう動くか見えてくる。レイフォードはまだ時間があるだろう? 応援しているよ。」
「……、はい! 考えて、決断します。ありがとうございました!」
「うん。一報くれれば会う時間を作るからいつでも連絡を待っている。弟を恋人に持つ仲間だから気軽に話してくれ。」
「!? ……え…!!?」
「え?」
「えぇー!?」
「ん?」
「殿下たちって……そうなんですか!?」
「え、知ってて相談したんじゃないのかい?」
「違いますよ! 兄弟仲が良い兄同士として、先輩として意見が聞きたかっただけで……。」
「さっきの話の内容でも気付かなかったの?」
「……はい……。」
(なるほど……これは鈍感と言われても仕方ないな……)
自分のことは棚に上げ、レイフォードの鈍感さに呆れるクラウス殿下だった。
その後、恋愛の先輩としてご指導ご鞭撻してもらえるよう、レイフォードは度々王宮に出向くことになるが、どんな内容を話しているかはニコラスを通じて全てクロードの知るところとなる。更には、クラウスの知識や経験はニコラスからもたらされたもので、かなり偏りがあるのだが、それを知るのは弟たちだけであった。
僕ばかりが気持ち良くなるのが申し訳なくて、僕もクロードに触ろうとすると、「今は大丈夫。」と毎回断られる。前にした時が下手だったのかな? と落ち込んでいると、「我慢が効かなくなる。それに、兄さんと違ってまだ成人してないから、たまに出せば問題ない。」と言われた。
我慢出来ないから射精するんじゃないのかな? 触ると逆に我慢することになるの? よく分からなかったけど、いつも少し余裕のあるクロードが必死だったから、本当に今はまだ大丈夫なんだろう。
あと、僕の前でだけ『オレ』『兄さん』と呼ぶようになった。逆に外では『私』『お兄様』と呼んでいる。理由を聞いたら、卒業後、次期侯爵として動くようになった時に、僕の前でだけは素の自分、砕けた自分を出しておきたいとのことだった。もちろんOKした。嬉しかった。次期侯爵としてのプレッシャーも多く、ニコラス殿下の側近として貴族や諸外国の役人とも関わることになる。僕の前でだけはリラックスして欲しい。
季節は巡り、クラウス殿下が学校を卒業する日を迎えた。僕は花束をお渡ししたくて、中庭のベンチで殿下を待っていた。
「クラウス殿下。ご卒業おめでとうございます。」
「やぁ、レイフォード。わざわざありがとう。綺麗なお花だね。」
「クラウス殿下の赤に、柔らかなベージュと清らかな白が一番似合うと思いまして……。」
「そんな風に思ってもらえてることが一番嬉しいよ。ありがとう。」
「クラウス殿下のおかげで、学校生活が楽しかったばかりか、悩みの御相談にも乗ってくださり、将来に付いて具体的に考えることが出来ました。私も卒業したら、クラウス殿下のお役に立てるよう邁進するつもりです。」
「ありがとう。レイフォードが傍にいてくれたらこれ以上なく心強いよ。同世代の側近たちよりも、プライベートなことも話せて気を許してるしね。」
「この上ないお言葉です。力不足ではございますが、今後とも精進して参ります。」
今後、殿下とは気軽にお会い出来なくなることを寂しく思った。
「あれから弟とは仲良くやっているのか? あの時は随分思い詰めていたようだったが。少し吹っ切れたものの、まだ何か引っかかっている顔をしている。」
驚いた。クラウス殿下は柔和でふんわりとした方だから分からなかったが、皇太子として、人の感情の機微に敏感なのかもしれない。自ら動いたり指示するのではなく、感情を察知し人を動かしている。
今後相談出来るタイミングがいつになるか分からない。思い切って吐露する。
「弟として以上に、クロードのことが好き……かもしれなくて……。」
気持ちは誤魔化せなかった。兄弟だからと線引きしたり、兄弟だから大丈夫だと言い聞かせていたが、どう考えても弟に抱く感情ではなかった。元々はこの子を、クロードを守りたい一心で愛してきた。だが、最近は少し触れられる度にドキドキするし、顔を見ると頬が赤くなる気がする。抱きしめたいし、抱きしめられたい。いつか誰かを娶り跡継ぎを作る必要がある弟に恋心を抱くなど……。不毛だ……。恋をしたことが無かったので、クロードへの想いが恋だと気づかなかった。恋をすると皆幸せそうなのに、僕は辛くて泣きそうだ。
そんな僕にクラウス殿下は優しく微笑んだ。
「弟だということ以上に、クロードくんのことが特別だということだよ。」
「特別……。」
「レイフォードは自分のことよりも、常にクロードくんのことを考えているね。クロードくんが幸せであれば自分も幸せ。彼を守りたいと願っている。これは私には、美しい愛情に見える。温かで優しい、皆がクロードくんを羨ましがる程の愛だ。クロードくんは年下ということもあってか、見た目ほど余裕が無く、独占欲や嫉妬といった自分本位なところも見えるけど、君をどうしても手に入れたいようだから。」
「え? えぇ!?」
「まぁ、私も受け売りだよ。君より年上で経験もあるし、立場上、人の感情を把握することには長けていると自負している。私は皇太子としての責任もあるし、皇室の一員としてどうするのが正しいのか悩んだこともあった。でも意外と何とかなるものだよ。」
「何とか……なりますか?」
「あぁ。一つ、一つだけ絶対に譲れないものがあるなら、その為に何をすべきか。どう動くか見えてくる。レイフォードはまだ時間があるだろう? 応援しているよ。」
「……、はい! 考えて、決断します。ありがとうございました!」
「うん。一報くれれば会う時間を作るからいつでも連絡を待っている。弟を恋人に持つ仲間だから気軽に話してくれ。」
「!? ……え…!!?」
「え?」
「えぇー!?」
「ん?」
「殿下たちって……そうなんですか!?」
「え、知ってて相談したんじゃないのかい?」
「違いますよ! 兄弟仲が良い兄同士として、先輩として意見が聞きたかっただけで……。」
「さっきの話の内容でも気付かなかったの?」
「……はい……。」
(なるほど……これは鈍感と言われても仕方ないな……)
自分のことは棚に上げ、レイフォードの鈍感さに呆れるクラウス殿下だった。
その後、恋愛の先輩としてご指導ご鞭撻してもらえるよう、レイフォードは度々王宮に出向くことになるが、どんな内容を話しているかはニコラスを通じて全てクロードの知るところとなる。更には、クラウスの知識や経験はニコラスからもたらされたもので、かなり偏りがあるのだが、それを知るのは弟たちだけであった。
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