解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

文字の大きさ
37 / 40
第1章 守護龍の謎

第37話 喪失

しおりを挟む
「アイシア!」
『いつまでも寝てられないでしょ? ウチが隙を作るから、ロイはちゃんとこいつにトドメをさしなさい?』
「任せていいのか?」
『もちろん。フラウと一体化したあなたはもう妹同然。家族は守らないとね』
「ありがとよ、頼んだぜ!」
『うん!』

 俺の言葉を聞いたアイシアはソフィアに向かって突進した。ソフィアは迎撃のためにいくつもの炎弾を放つが、アイシアはそれをものともせずにソフィアに体当たりをした。ソフィアは押し倒されるように体勢を崩しながらも、アイシアの首筋に噛み付く。
 だが、アイシアは怯むことなくソフィアに組みつくと、そのまま地面に叩きつけた。

「今だ!」

 俺は全力で地を蹴り、ソフィアに向かって跳躍する。フラウの力で全身に力がみなぎり、背中にドラゴンの翼が生えた。それだけではない。俺の全身は龍装甲よりも強固な鱗に覆われ、手には鋭い鉤爪。──まさにドラゴン自体を鎧として身にまとっているようだった。

『調子に乗るんじゃないわよ! 人間と死に損ないのドラゴン風情がぁっ!』

 ソフィアの身体から炎が立ち昇る。だが、その瞬間アイシアも負けじとブレスを吹き出した。二つの力がぶつかり合い、爆発を起こす。俺は爆風に乗るようにして大きく跳躍すると、勢いのままに剣を突き刺した。

『ぎゃあああっ!』

 ソフィアが悲鳴をあげる。俺の剣が、彼女の心臓を貫いていた。

『こんな……はずじゃあ……』

 彼女の心臓から勢いよく魔力が溢れ出す。それはさながら血のようだった。

『あ、あたしは負けない……! こんなところで……終われない!』
「お前の負けだ。諦めろよ女神ソフィア」
『そう、あたしは女神! 女神なのよぉぉぉっ!』

 ソフィアは必死に抵抗しようとするが、すでに勝敗は決していた。やがて、ソフィアの身体から力が抜けるとその場に崩れ落ちた。辺りは静寂に包まれた。

「終わった……か」
「ええ、女神ソフィアは再び休眠状態に入ったわ。女神ゆえ完全に滅ぼすことはできないけれど、これでしばらくは悪さもできないでしょう」

 いつの間にやら近くに来ていたフリーダが言う。

「そっか……なら良かったよ。アイシアは無事か?」

 俺が尋ねると、フリーダは黙って一点を示した。そこには人間の姿になったアイシアが瓦礫に寄りかかるようにして座っていた。

「……アイシア!」

 俺は慌てて駆け寄る。

「大丈夫か!?」
「平気よ。ちょっと疲れただけ」
「そうか、それならよかったけどよ……」

 ホッとしたのも束の間、俺はあることに気づいた。アイシアの身体が淡く光り輝いているのだ。

「これは……まさか!? おい、しっかりしろ! アイシア!」

 俺はアイシアを抱き起こすと、肩を揺すった。

「ごめん、少しだけ休ませて……なんだかすごく眠くて……」
「馬鹿野郎! 死ぬな! お前がいないとフラウはどうなるんだよ! 起きてくれよ! 頼むからさ! なあ! なあって! おいっ!!」
「フラウにはもうロイがいるから……大丈夫……」

 アイシアは静かに目を閉じたまま、動かなくなった。

「……うそ、だろ?」

 せっかく和解できたと思ったのに、俺の事を認めてくれたと思っていたのに、こんな別れ方になってしまうなんてあんまりだ。

「……クソッ」
「大丈夫、気絶してるだけよ? 力の使いすぎね」
「そう、なのか?」
「えぇ、ほら見て。少し動いてるでしょ?」
「本当だ……」

 確かにアイシアの胸は上下している。

「心配しないで? そのうち起きるわ。それより今はアレをなんとかしないとね……」

 フリーダが示した先には、豪華絢爛な衣装を身につけた国王ヨアヒム1世の姿があった。剣を抜いてこちらに向けているが、酷く怯えているようでもある。

「き、貴様ら! 恐れ多くも女神様を討伐するとは……天罰が下るぞ!」
「ああ、そうだな。でも安心してくれよ? アンタもちゃんと同じところに送ってやるからさ」

 俺が一歩近づくと、ヨアヒムは腰を抜かしたのか地面にへたり込んだ。

「こ、殺さないでくれ!」
「殺しはしねえよ。俺はお前や女神ソフィアみたいに、気に入らないやつを手当り次第殺したりはしねぇ」「では一体何をするつもりなのだ!」
「決まってんだろうが、追放だよ。どこへでも好きに行くがいいさ」

 俺は周囲を見渡す。あれだけ立派だった王都の街並みは、俺やフラウやフリーダやアリシア、そしてゴットフリートやソフィアが暴れたせいで一面瓦礫だらけになっていた。

「儂が……英雄ディートリッヒが作り上げた王国が……」
「奪い取ったの間違いだろ?」
「ぐぬ……」
「ディートリッヒとソフィアがマリオンとフラウに何をしたのか、忘れたとは言わせねえぞ? あいつらは彼らの大切なものを奪ったんだ!」

 俺はヨアヒムの首根っこを掴むと、そのまま宙に浮かせる。

「ま、待ってくれ! 金ならいくらでも払う! 地位だって望むものをなんでも与えてやる! だから見逃してくれ! 儂は、儂の王国を失うわけにはいかんのだ!」

 ヨアヒムは必死に懇願するが、俺が聞き入れるはずもない。

「ふざけんなよ! この期に及んでまだ地位にしがみつくつもりか! 命があるだけでもマシだと思えよ!」
「そんな……嫌じゃ! 死にたくないぃっ! 誰か助けてくれぇっ!!」

 俺が腕を振り上げると、ヨアヒムは子供のように泣き喚いた。だが、それでも手を止めることはない。俺は剣を握る手に力を込める。

「──本当は殺してやりたいけど、そしたらお前らと同じになっちまうからな。それに、お前だけが悪いとも思わないし」

 そう吐き捨てると、剣を投げ捨てて、ついでにヨアヒムを放り投げた。

「ぎゃあっ!」
「せいぜい長生きしろよ? そんで反省してこい」

 俺は踵を返すと、フリーダとともにその場を去った。背後からはヨアヒムの悲鳴が聞こえてきたが、振り返ることはなかった。



「……フラウ」

 全てが終わった後で、フラウを失ってしまった喪失感が襲いかかってきた。立っていられなくなった俺は瓦礫の上に座り込む。

「大丈夫?」

 隣に座ってきたフリーダが声をかけてきた。

「ああ、なんとかな……」

 フラウがいなくなってしまったことが、こんなにも悲しいなんて思ってもみなかった。きっとこれから先ずっと寂しい思いをするに違いない。
 彼女の笑顔が、無邪気な表情が、時折見せる何かを決意したような真剣な表情が、恥ずかしがる顔が、脳裏に浮かんでは消えていく。

 また、物陰からひょっこりフラウが顔を出すような気がしてならなかった。

「フラウのことが気になるのね?」

 フリーダの言葉に、俺は黙って首を縦に振った。

「それなら、試してみる?」
「何をだ?」
解呪ディスペル
「は? なんで?」
「魔法体系学上は、契約も呪いも原理は同じなの。あなたの解呪を使えば、フラウとの契約を解除して、彼女を元に戻すことができるかもしれない」
「マジか!? それならやるぞ!」

 フリーダは困ったように笑っていた。

「でも、これは未知数のことだから、何が起きるかは分からない。契約を解除してもフラウが戻るとは限らないし、あなたの身体に良くないことが起こるかもしれない」
「それは……」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

処理中です...