解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第36話 契約の最終形──その代償は……

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『ば、馬鹿なっ! 人間ごときにあたしの呪いが解呪されたですって!?』

 ソフィアの驚愕する声が聞こえる。
 人間の姿になったフラウは呆然とした様子で呟いた。

「あれ……私は一体何を?」
「大丈夫だ、何も心配いらない。俺がなんとかしたからな」
「も、もしかして私、また暴走してしまったんですか……?」

 フラウの顔は血の気が引いていて青白い。俺は彼女の肩を叩いて言った。

「俺がお前のパートナーである限り、もう暴走なんてさせねえよ」
「……ありがとうございます、ロイ。それと、ごめんなさい。また迷惑をかけてしまって」

 フラウは涙を浮かべながら頭を下げる。俺は笑顔で首を振った。

「気にすんな。俺とお前は二人で一人、そうだろ?」
「はい……そうですね」

 フラウもようやく笑みを見せる。俺は彼女を安心させるように言った。

「よし、それじゃあ俺たちはソフィアを倒さなくちゃいけない。協力して戦ってくれるか?」
「もちろんです! 私の契約者、ロイのために戦います!」

 フラウが力強く答える。その時だった。一瞬にして空が暗黒に染まった。見ると、宙に浮かんだソフィアが、両手に強大な魔力を溜め込んでいる。

『許さない……あんたたちは全員消してやる……!』
「クソッ、なにを始める気だ?」
『当たり前よ。対話でも戦闘ですらもないただの虐殺。もう、ドラゴンライダーを悪役に仕立て上げるストーリーとかどうでもいい。あんたたちに圧倒的な力の差を見せつけてやるのよ!』

 ソフィアはそう叫ぶと、魔力を地面に放った。俺たちは衝撃に備えたが、恐れていたようなことは起こらなかった。
 だがその先には、先程倒したゴットフリートがドラゴンの姿のまま横たわっており、どす黒い魔力はその身体の中に入っていく。

「ゴットフリートの身体を乗っ取ろうとしているのか!?」
『さっきまで、あたしの力をこの男に貸してたの。だからこれであたしは全力で戦えるってわけ!』


 ソフィアは高笑いをする。そして次の瞬間、ドラゴンが雄叫びを上げた。

『グルオオオォッ!!』
「くっ、なんてパワーだ!」

 俺は吹き飛ばされそうになるのをこらえながら、どうにか剣を構える。

「よりにもよって邪龍と一体化するなんて……つくづく馬鹿な女神ね」

 俺の隣でフリーダが呟くと、杖を構えて魔法を唱え始めた。

「大地よ、我が呼び声に応えよ!」

 地面が揺れ始める。そして、俺の前に巨大な岩でできた壁が現れた。

『無駄よ! そんなもの、あたしの力の前では無に等しいわ!』

 ソフィアは手を振りかざすと、そこから炎を吹き出した。すると岩の壁は溶けるようにして崩れてしまったが、フリーダの表情は変わらなかった。

「まだ気づいていないの?」
『なに!?』
「龍化の秘薬をゴットフリートに渡したのは私。──それは強化のアイテムに見えるかもしれないけれど、ただの牢獄よ?」
『なんですって!?』
「現にあなた、その邪龍に憑依したはいいけれど、解除はできないんじゃない?」
『……くっ!』

 ソフィアは怒りに満ちた目でこちらを睨む。その視線を受けても、フリーダは動じなかった。

「守護龍を邪龍に仕立てあげて封印し、自分への信仰を集めようとしたあなたが、まさか邪龍の姿になって戻れなくなってしまうなんて、皮肉なことね」
『おのれ貴様ぁぁぁっ!』
「あなたの負けよ、ソフィア。大人しく降参しなさい! ……って言っても無駄か」
『黙りなさあああいっ!!! 人間風情が調子に乗ってぇぇぇっ!』

 ソフィアは叫び声を上げる。そして、再び炎を吹き出した。

「ちっ、またこれか!」

 俺はフラウを抱え、後ろに跳んで避ける。すると今度は、フリーダに向かって炎が襲いかかった。フリーダは落ち着き払って水の壁で炎を防ぐ。
 だが、ソフィアの攻撃は止まらない。次々と炎が放たれ、辺りは火の海と化した。

「まずいぞ、このままじゃあ逃げ場がない!どこかに隠れる場所はないのか!」
「ロイ、舞台は整った。あとはあなたの役目よ」
「俺の役目? どういうことだ?」
「今こそドラゴンライダーの力で邪龍を打ち倒して間違った歴史を変えるの。守護龍とドラゴンライダーこそが人間の守護者であることを示すのよ」
「そうか、わかったぜ!」

 俺はフラウを地面に下ろすと、剣を構えた。

「ロイ」
「なんだよ今いいところなのに」
「ロイ!」

 フラウは真剣な表情で俺の顔を見つめていた。そこには一種の覚悟のようなものが見てとれた。

「ロイ、今の私の力を全てあなたに授けます。──だから、必ず勝ってください!」
「フラウ?」
「……さようなら、大好きです」
「おいフラウ! なにをするつもりだ!」

 俺は叫んだ。だが、フラウは俺に飛びついてくると、唇にキスをしてきた。

「むぐっ!?」

 戸惑った俺だったが次の瞬間、フラウの身体が溶けるように消えてなくなり、代わりに俺の全身から凄まじい力が溢れ出してくるのを感じた。

「これは……」
「守護龍との一体化……契約の最終段階に至ったのね」

 フリーダが言う。

「フラウ……お前ってやつは本当に」

 消えてしまった相棒に向けて呟く。だが、フラウは間違いなく俺の中で生きている。彼女の決意を無駄にするわけにはいかなかった。

「ありがとう、フラウ。この力、使わせてもらうぞ!」
『何をしようとあたしには敵わないのよ!』

 ソフィアが叫ぶ。俺は地面を強く蹴ると、一直線に駆け出した。

『馬鹿め、自ら死を選ぶとは!』

 ソフィアが炎を放つ。だが、俺はそれを最小限の動きでかわすと、そのままソフィアの身体に突っ込んだ。

『なんのつもり!?』
「こうするんだ」

 俺は剣を振り上げると、ソフィアの身体を切りつけた。すると、まるで豆腐でも切っているかのように簡単に腕が切れ落ちた。

『なっ……なんですってえぇぇっ!』

 ソフィアが絶叫を上げる。俺はさらに返す刀でソフィアの首を落とした。

『無駄なのよ! あんたにあたしは倒せない! 倒せないのよぉぉぉっ!』

 ソフィアが全身から魔力を放つ。すると、切り落としたはずの腕と頭が綺麗に再生していた。

『死ねぇぇぇぇっ!』

 大きく飛び退いて距離をとったソフィアは、無数の魔法陣を展開する。そしてそこから一斉に火球を放った。

『燃え尽きろおおおっ!!』
「チッ、めんどくせえ!」

 こちらも距離をとって火球をかわしたものの、これではソフィアに近づくことすらままならない。

「どうすれば……」

 その時、大きな影が俺の隣を走り抜けていった。見ると、巨大な純白のドラゴンが、俺の目の前に舞い降りた。──アイシアだった。
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