解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第10話 新たな村に旅立ちました

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「くそっ……!」

 俺は咄嵯に剣を投げようとしたが、間に合いそうにない。万事休すかと思われた時──
 ギンッ! という金属同士がぶつかり合う音がして、ゴットフリートの短剣が弾かれた。

「なんじゃと!?」

 驚くゴットフリートの腕の中で、フラウの身体が光り輝いた。そして、ゴットフリートを吹っ飛ばしながら、純白の守護龍の姿へと変化する。

「フラウ……!」

 修道院の壁を突き破りながら巨大化したフラウに声をかけると、彼女は首を下げてくれたので、その首に掴まるようにして、背中に這い上がる。

「逃げるぞ!」
「グァァァァァァッ!」

 俺の言葉に、フラウは応じるように咆哮ほうこうして、空に舞い上がった。

「うわぁぁぁっ!」

 激しい揺れに、必死になってフラウの首に掴まっていると、フラウは凄まじい勢いで大空を駆けていき、修道院はまたたく間に小さくなっていった。


「すごいな……」
「グオッッ」

 フラウが得意げに鳴く。俺はフラウの頭を撫でた。

「ありがとう、助かったよ」
「グルルゥ……」

 フラウの瞳からは、慈愛の心を感じる。本当に俺を助けられてよかったと思っているようだ。

「さて、これで王都には居られなくなったわけだが、これからどこへ行こうか」
「グアアアッ」
「わかった。お前に任せるよ。どうせ俺たちは敵だらけなんだ。行きたいところに行ってやりたいようにやろうぜ」

 こうして俺達は、新たな地を目指して飛び立ったのだった。


 それからしばらくして、俺はフラウを人目のつかない森の中に降ろすと、そこで人間の姿に変化させた。

「よし、それじゃあ行くか」
「はい、参りましょう」

 俺の隣には、美しい銀髪の少女が立っている。先ほどまで巨大ドラゴンだったフラウである。

「ところで、フラウ」
「なんでしょう?」
「改めて聞くけど、どうして俺なんかと契約してくれたんだ?」
「それはもちろん──直感です!」
「直感?」
「はい。なんとなく、ロイにはマリオンと似た雰囲気を感じましたし」
「なるほど……。そういや気になってたんだけど……」

 俺は少し聞づらいことをフラウに尋ねることにした。多分今聞かないと一生聞かずに終わるだろう。

「……?」
「フラウとマリオンはどんな関係だったんだ?」
「もちろん、守護龍とドラゴンライダーの関係でしたけど?」
「じゃなくてだな……」

 俺はこほんと咳払いをしてから改めて尋ねた。

「恋人……とかじゃなかったか?」
「……」

 フラウは無言のまま顔を真っ赤にして俯いている。

「やっぱりそうなのか……」
「はい、そうでした……」

 やはり、フラウとマリオンの間には恋愛感情があったらしい。

「じゃあさ……今はどうなんだ?」
「えっ? それはどういう……」
「だから、今も好きかどうかってことだよ。フラウはマリオンのことが好きじゃないのか?」
「……好きです。好きでした。でも、マリオンはもういません」
「そっか……」
「でも、今の私はロイのものなので……!」

 フラウは上目遣いで俺を見つめてくる。

「まあ、フラウがそれでいいならいいけどさ」

 クールにそう答えたものの、俺の心臓は破裂しそうだった。全く、可愛すぎだろこいつ。

「ロイは私の封印を解いて契約をしてくれた。危ないところを助けてくれた……パートナーであり、恩人であり……その、とても大切な人です」
「そ、そこまで言ってくれるとは思ってもみなかったが……ありがとうな。俺の方こそ感謝してる。これからよろしく頼むよ、フラウ」
「はい! こちらこそ、末永くお願いします!」

 話しながら歩いているうちに、前方に小さな村が見えてきた。日も傾いてきたので今日はここに泊まることにしよう。

「すみませーん」

 村の門をくぐった後、近くを通りかかった老人に話しかける。すると、驚いたような顔を浮かべた。

「おや、旅人さんかね。こんなところに若い旅人は珍しいのう」
「はい、実は旅をしている途中でして。今夜だけでも宿を貸していただけたらと思うのですが」
「ああ、構わんとも。ただ、最近この辺りは物騒での。昼は凶悪な魔物、夜になると盗賊団が出没するんじゃ。君達みたいな若い子は特に狙われやすいから、注意するんじゃよ」
「わかりました。ご忠告ありがとうございます」
「なに、礼には及ばんよ。わしらはみんな家族のようなもんでね、困っている人がいれば助け合うのが当たり前なのじゃ」
「な、なにかあったら遠慮なく相談させてください!」
「ほっほ、そんなに畏まることはないぞ。わしらの村はいつでも歓迎するからの」

 そう言い残して、老人は去っていった。

「親切そうな雰囲気の村でよかったな。ここならドラゴンスレイヤーとか女神の信徒に狙われることもなさそうだし」
「はい、早速宿屋を探しに行きましょう」

 それからしばらく探し回った結果、ようやく一軒の宿屋を見つけることができた。

「ふぅ、疲れた……」

 俺はベッドの上に寝転ぶと、そのまま眠ってしまったのだった。


 翌朝、俺達は朝食を食べながら、これからの方針について話し合っていた。

「私は、失われた守護龍の信用を取り戻すために、一生懸命人助けをするべきだと思います」

 フラウは真剣に考えているようだ。

「なるほど、悪くない考えだと思うが、具体的には何をするつもりなんだ?」
「まずは、ドラゴンライダーとして各地を回って、人々の役に立とうと思っています」
「それはいいんだけどさ、どうやって人々を助けるつもりなんだ?」
「それは……そうだ! 昨日会ったおじいさんが言ってましたよね? この辺りには魔物や夜盗が出るから危険だって。まずはこの村から始めませんか?」
「確かにそれもいい案だな。いきなり大きな町に行ったりしたら、ドラゴンスレイヤーや女神の使徒に目を付けられるかもしれないしな……」
「はい! では早速魔物についての情報を集めて、退治しに行きましょう!」
「よし! じゃあ決まりだな」
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