解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第9話 女神に喧嘩を売りに行きました

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 翌日、俺たちは女神ソフィアについてよく知るために、王都の修道院へ向かった。修道院は真っ白で無機質な大きな建物なので、遠くからでもよく目立つ。ここでは女神を信仰する信徒たちによって、日々祈りが行われているらしい。

 俺たちは門番の人に案内され、中へ入った。修道院の中には白い布で全身を覆ったような見た目の、たくさんの修道女がいたので、その一人に声をかけた。

「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「実は女神ソフィア様のことについて知りたくて」
「まぁ、あなた方は女神ソフィア様にお会いしたいのですか?」
「はい、是非とも一度会って話をしたくて」
「残念ですが、一般の方々においそれと神を顕現けんげんさせるわけにはいきません」
「そこをなんとかなりませんか?」
「申し訳ありませんが……」

 どうしたものかと考えていると、突然豪華な修道服に身を包んだ壮年の男が俺たちの前にやってきた。

「これはゴットフリート大司教殿、このような場所に一体なんの御用でしょう?」
「なに、我が娘同然の可愛い修道女たちの様子を見に来ただけじゃ。──して、そちらの二人は?」

 ゴットフリート大司教と呼ばれた男は値踏みするような視線を向けてきた。

「彼らは客人です。なんでも女神ソフィア様にお会いしたいとか」
「ほう……信徒でもないそなたたちがいやしくも女神様にお会いして何をなさるおつもりか」
「それは……」

 俺は言いよどんでしまった。まさか真実を話すわけにもいかない。

「ふむ……もしやそなたら、例の噂に聞く『ドラゴンライダー』とやらかのう」
「な!?」

 まずい、噂がこんなに早く広まっているなんて! 
 俺は思わず絶句してしまった。ゴットフリートの顔には更に深いシワが刻まれ、険しい表情をしていることが分かる。

「やはりそうか。女神にとって邪龍は討ち滅ぼすべき敵。それがこうして行動を共にしているなどあり得ぬ話」
「あの……俺たちは別に悪さをしにきたわけではなくてですね……」
「口答えをするでない!……しかし、そうであったとしても、女神の邪魔になる者は排除せねばならぬ」
「なんだって……?」
「この場で死んでもらうぞ!」

 ゴットフリートはそう宣言して右手を上げる。すると、どこからともなく鎧と槍で武装した兵士たちがわらわらと集まってきて、瞬く間に俺とフラウは囲まれてしまった。

「くそ……どうしてこんなことに……」
「ロイ……」
「フラウ、やれるか?」

 フラウは首を横に振った。

「街中でドラゴンの姿で暴れては、無関係な人間に被害が及びます。それは避けたいです……」
「……やっぱりお前は邪龍なんてキャラじゃねぇよ。俺一人でなんとかするから安心しろ!」

 俺は覚悟を決めて剣を抜いた。そして、ドラゴンライダーの力を解放する。

「──『龍鎧ドラゴンスケイル』!」

 Sランクギルドの金髪男と戦った時に左腕にまとった龍の鱗、今度はそれを全身にまとう。そして、腰から剣を抜いて身構えた。

「なんじゃと……! これが噂に聞くドラゴンライダーの……!」
「こっそり練習してたのさ! 悪いがあんたたちにはここで眠っていて貰う」
「ふん、ならばこちらにも考えがあるわ! 行け、我が忠実なる兵士達よ! あの者どもを皆殺しにせよ!」
「うぉおおおっ!!」

 兵士の一人が雄叫びを上げて突っ込んできた。俺はすかさず斬撃を放って迎え撃つ。

「はああっ!」

 俺が軽く剣を振り下ろすと、まるで豆腐のように簡単に兵士の鎧はひしゃげ、吹き飛ばされた兵士は動かなくなった。

「ばかな……なんという力だ……」
「次はどいつが相手だ? かかってこいよ」

 俺は挑発するように言った。

「怯むな! 一斉にかかれば倒せるはずだ!」
「「おうッ!!」」

 次々と兵士が向かってくる。俺は一人ずつ確実に仕留めていく。何度か俺の龍鎧に兵士の槍が突き刺さったが、ドラゴンの堅牢けんろうな鱗には傷一つつかなかった。

「諦めろ。お前たちと争う気はない!」
「そんなことを言っても騙されんぞ。貴様らは女神ソフィア様の敵なのだからな!」
「だったら仕方ない、無理やり押し通るまでだ」

 俺はフラウの手を取ると、兵士が手薄なところへ向けて走り、強行突破を試みた。

「くそ、これでも食らえぇえええっ!!」

 ゴットフリートは懐から杖を取り出し、それを掲げる。すると、地面が光り輝いて魔法陣のようなものが現れた。

「あれはまさか、召喚魔術か!?」
「いでよ、『ゴーレム・ナイト』!」

 魔法陣の中から現れたのは、高さ5メートルはある巨大な騎士型の人形兵器だった。その両手には大盾が装備されており、見るからに硬そうだ。

「まずいな……」

 俺がそう呟いた瞬間、ゴーレムの拳が俺めがけて振り下ろされる。

「──ぐぅっ……!」

 なんとか剣で受け止めたものの、あまりの威力に地面にヒビが入り、そのまま数メートルほど後退する。

「ロイ、大丈夫ですか!?」
「ああ、なんとかな……」

 俺は再び剣を構えなおす。

「へっ、なかなかやるじゃねーか。だが、そんなんじゃあドラゴンライダーは倒せないぜ」

 俺は渾身の一撃を見舞うべく、魔力を集中させた。

「『龍爪ドラゴンクロー』!」

 剣先からドラゴンの鉤爪を模した魔力の光が放たれ、ゴーレムの腕を切り落とす。しかし、ゴーレムはすぐに再生して元通りになった。

「ゴーレムってことは、魔法で作られてるんだよな? だったらこれでどうだ! ──『解呪ディスペル』ッ!」

 俺は魔力を込めた左手を突き出しながら突進した。ゴーレムは俺の手に触れた瞬間に崩れ、ただの土塊つちくれになった。
 しかし、ゴーレムはゴットフリートによって次から次へと生み出され、俺の行く手を遮る。

「なんてこった……」
「ふははは! さあどうする?」
「それなら何発でもお見舞いするまでだ!」
「何度やっても同じことよ!」

 俺は次々に技を繰り出し、ゴーレムを破壊していった。

「よし、あと少しで……」

 しかしその時、悲鳴が上がった。

「……っ! ロイ!」
「ふははは! 油断したな、ドラゴンライダー!」

 慌てて振り返ると、ゴットフリートがフラウの首筋に短剣を押し当てていた。

「フラウ……!」
「くっくっく、いい格好じゃのう。女神様に仇なした罰じゃ」
「くそ……卑怯だぞ……!」
「世界に混沌をもたらした邪龍なぞと契約を結んだ愚か者がよく言うわ。今すぐこの穢れた邪龍をこの場で斬り捨ててくれる!」
「やめて……!」

 フラウが涙目で訴えるが、ゴットフリートは耳を傾けようとしない。

「さらばじゃ!」

 そして、ゴットフリートは躊躇ちゅうちょなくフラウの首を切り裂こうとした。
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